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25話 春男の質問

春男の質問


いいかげんに、長年共にいると、この質問攻めにも慣れてくる。すっかり慣らされたといった方が正しいかも知れない。その結果に思ったことだが、春男の質問には共通点が少ない。というよりも、突拍子がないと言うべきか。

「桜の色が色々あったらいいと思わない?」

 いろんな色があったら、いろんな色の花びらが舞うのか?

「海底に都市を作って住んだら、魚と同じように視力が落ちるのかなぁ、どう思う?」

 知らん。海底都市を造ってから考えろ。

「飛べるのと、深く潜れるのとどっちがいい?」

 両方とも、なにかいいことがあるんだろうか。

「生まれ変わるなら?」

 こいつの編集者にだけはならない。

「天使と悪魔と会うなら?」

 存在するのか証明されてから考える。

 どうして、話を書きながらこれらの質問を考えるのか。オレの方が聞きたい。しかし、中途半端に返事をするとひどい目に遭う。これまでに、何回かあった。

 原稿を目の目で消される。勝手に旅に出る。勝手に作家をやめようとする。

 外からはゴーストライターはでっち上げられる、堕落作家だと言われる、春男の他の担当者は何故か誰も続かない、などなど。

前もって考えているようには思えない。どこから、質問が降ってくるのやら。

 いつも、なにかしら聞かれるので、ついつい答えを考えてしまう習慣が付いた。ところが、よく考えてみると、プライベートなことは聞かれたことがない。せいぜい、でかける場所くらいなものだ。それも、作品の参考までにきく程度だ。

考えてみるとオレのほうから何か聞くことは少ない。あえて聞くなら、作品の進み具合程度だ。いつも、聞かれてばかりだから、たまにはオレが聞こう。そして、なにかないかと考えた結果がこれだ。

「そんなに質問ばっかり、どうしてするんだ?」

「僕の趣味。」

 あっさりと返事が返ってきて、オレは少なからず落ち込んだ。ちょっとは春男も頭を悩ませるかと期待していたのに。ちっ。

 とりあえず、オレの最近の目標は春男が答えに詰まるような質問を考えることだ。しかし、それでいて、作品の進み具合に影響が出ないもの。なにかないだろうか。そんなことを考えているうちに、二週間がたってしまうのだ。

「なにか、ないか?」

 会社の連中にも聞いてみたが、とくにこれといって思いつかなかったようだ。聞いても意味のないことは聞かないのが一般的と言える。

そこで、春男に聞いてみた。

「そんなに聞いて、どうするんだ?」

「どうもしないよ。あのね。聞くのは僕の自由なんだ。答えるのも君の自由なんだよ。」

「自由?じゃ、答えなくてもいいのか?」

「いいけど、そうすると、電話代がかかるんだよねぇ……ついでに時間も。」

 春男によると、普段、オレのいないときは友人に携帯で聞いているらしい。

 おれは正直、かなり内心驚きだ。

 友人がいたのか!それに答えてくれるような友人が!良い友人だな!オレは改めて、よくわからない奴だとしみじみ思った。


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