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21話 春男の頭の中

 春男の頭の中


 学生の時からオレはこいつの頭の中はどうなっているのだろうと時々思ったものだ。勉強が出来るとか、そういう意味ではない。どこを突っついたらこんな考えが出てくるのだろうかと思うだけだ。

 学生時代、ふざけていたときに先生が怒った。

「帰れ!」

 怒られて、みんながしゅんとしている中、春男は本当に帰った。次の日には何食わぬ顔でまた学校に出てきた。反省の色も見えない。春男の言い分は。

「だって、帰れって言ったから。」

 ほかにも、将来の夢を書かされたときに、春男の夢は本屋だった。そんなに特殊でもない職業だったのに、なぜオレに記憶に残っているのかというと、絶版や廃刊の専門店にしたいというものだったからだった。

それが専門書などの店ならまだわかる。だが、春男の考えていたのはマンガ専門店だった。そのために、必要な経費まで計算してあった。マメだ。

 春男の言い分はこうだ。

「趣味になら、ちょっとくらい高くてもお金を掛けると思うんだよね。新品ならそれにこしたことはないだろう?」

 そして、今。

「人の頭の中って見てみたい?」

「は?」

 春男の話はいつも突然だ。どうしてこんなに脈略がないのかと思うほど、ない。

ついでに、オレにはあまり想像力というものがない。物理的に脳を思いついた。

「いや、見なくていい。飯が食えなくなりそうだから。」

 意外と繊細なのだ。

「え、そうかな。この人、何を考えているんだろうとか思わない?」

 春男の説明を聞いて、やっとそういうことかとわかった。

「オレは、脳を見るのかと思ったんだ。頭をかち割ってさ。」

「いや、考えがわかるって事。便利そうだよね。」

 オレはぼんやり考えた。はたして、そうか?嘘も方便というではないか。

「そうでもないと思うぞ。隠し事とかできなくなるじゃないか。お前だって、作品を書く前に話がバレたら困るじゃないか?」

「なるほどね。それもそうだなぁ。じゃ、現代科学が発達しても出来ないかもねぇ。わかったら、もめ事が多くなるだけかもしれないし。」

「ま、見えてもオレの中には仕事くらいしか入ってないけどな。それでも印刷前に見られたらお前の作品、全部バレるぞ。」 

「それは一応、困るか。いざとなったら、作家やめて本屋だな。あ、もうすぐ出来上がるからね。」

「わかった。」

 そんなものができるなら、オレは真っ先に春男の頭の中を見てみるだろう。どうして、そんなことを思いついただろうかと。

 他にも、一体情報がどのように入っているのか。どこに整頓されているのか。春男のことだから、頭の中もすっきりしているに違いない。ついでに、脈略のない質問がどこから出てくるのか。付け加えるなら映像で見えれば一番面白い気がする。

 ちょこちょこ聞いてくる質問は、少しは作品に影響しているが全部そうだというわけではない。質問の意味は、特にはないと言っていた。

 なにやら、楽しそうにパソコンを打ち続ける春男の後ろ姿を見ながらオレは、春男の頭の中には絶対に花が咲いている気がする。

 そしてオレの中には、なんでこいつの担当なんだろうという疑問が見えるに違いないと思った。


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