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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

悪役令嬢のサバイバーズギルト〜一人だけ生き残った私は婚約破棄され続けなければならないのに第八王子は何故か婚約破棄をしてくれない〜

作者: 太郎太刀
掲載日:2026/04/19


「お前との婚約は破棄だ」


私の婚約者、ルーカス様はなんの脈絡もなく一方的な宣告を告げた。


彼の言葉は頭を鈍器で殴った様な衝撃を私に与えた、一瞬頭が真っ白になった、否、理解することを拒んだ、しかし感情なんてものは時間が経てばたやすく冷やされ、冷静にさせられる、冷静になってしまえば必然、相手の言うことを論理的かつ合理的に受け止めれてしまう、それが人間というものだ。


 事実、私、ファスティー・エーデルシュタインはルーカス様の言葉の意味を把握した、動悸が激しくなり、心臓の鼓動も早くなる、辛く、胸が痛く、息苦しいその感覚に私は………自然と笑みを零す。


「そう、それじゃあ私は失礼いたしますねルーカス様」


「ーーー!、婚約破棄の理由を聞かないのか?」


「愚問でしょう?、悪役令嬢と噂されている私が婚約破棄される理由なんてそれこそ星の数ほどあります、むしろよく私と婚約して、今の今まで我慢できたものですよ、賞賛に値します」


「フン、悪役令嬢にしては潔い良いじゃないか」


「知らなかったの?、私は潔悪くない悪役令嬢なのよ、それではごきげんよう」


私は泣き笑いしている自分の顔を見られない様その場を立ち去る。




…………これで何度目だろう、何度婚約破棄されても慣れるものではない、結んだ婚約を破棄される瞬間、毎回頭を鈍器で殴られたかの様な精神的ショックが私を襲う、婚約破棄される為に悪役を演じているのに……だ、彼の婚約破棄は正当なものだ、悪役令嬢と振る舞っている私が婚約者なんて耐えられるものではない。


私と婚約破棄した元婚約者達は他の誰かと婚約し幸せになれるだろう、何故なら人間は常に前例と比べるからだ、前回の婚約者が私の様な最悪の人間ならば次会う婚約者はさぞ魅力的に映り、そう簡単に破局することはないだろう。



私が多くの人間に婚約破棄されればそれだけ婚約破棄という泥を被る人間が一人でも少なくなる……………そうだ、これは私への罰、故郷の街の住民や家族が全員死んでいるのに一人だけ生き残った汚れた存在である私は幸せになってはいけない。



魔物の大群が押し寄せる現象〝魔物襲撃(スタンピード)〟、いとも簡単に街を蹂躙する災害の一つ、それは別に珍しい現象ではない、時折起こる季節外れの風物詩みたいなものだ………だが私はその恐ろしさを真に理解していなかった。


なぜなら私は〝魔物襲撃(スタンピード)〟を創作の中でしか知らなかったからだ、大体の創作で〝魔物大群(スタンピード)〟が起こっても主人公が活躍し、その魔物達を倒して解決するハッピーエンドへ繋がっているからだ、いってしまえば物語の谷の部分でしかない、山となるハッピーエンドの爽快感、感動、満足感を大きくする為の前振りでしかない。


それに殆どの場合、登場人物は死なない、いや、正確に言うならば主人公の知人や知り合い、仲間や家族は絶対に死なない、万が一死んだり、物が壊れたとしても魔法や魔道具などで生き返ったり直ったりするのが殆どだ、なぜか、そっちの方が読者が読んでいて不快にならないからだ、バッドエンドを好んで読む読者はマイノリティだからだ、私だってバッドエンドよりハッピーエンドの方が好きなマジョリティ側だ。


…………だからだろうか、子供の頃の私は家族や知人や知り合いは絶対に死ぬ事はないと勝手に思い込んでいた、人は死ぬ、簡単に死ぬ、私の母だろうが父だろうが友達だろうが婚約者だろうが故郷だろうが家だろうが街だろうが、たかが〝魔物襲撃(スタンピード)〟が起これば簡単に壊れる、簡単に崩れる、簡単に失われる。


誰が殺されようと、何が壊されようと英雄が出てきて魔物を倒すなんて都合のいい物語は始まらない、ただただ蹂躙される現実が広がっていくだけだ………事実、〝魔物襲撃(スタンピード)〟が起こった私の故郷の街はボロボロに荒らされた、私以外の家族や住民は全員魔物に殺された、街は破壊され尽くした。


助けが来るとしたら全てが終わった後、騎士達が魔物を鎮圧し、私は保護された、親が殺された事により私はエーデルシュタイン家の当主となる、突如戦場となった故郷から生き残った私は一言呟いた。


「みんな死んだのにどうして私一人だけ生き残ってるの?」


一人だけ生き残ったどうしようもない罪悪感に苦しむ私はある存在に出会う、それが悪役令嬢だ、創作に登場する彼女達は悪役の名に恥じない行動で登場人物のヘイトを買い、ヒロインに絡んでは婚約破棄され破滅していく、私はこれになるべきだと思った、故郷の住民や家族達が死んでいるのに一人だけ生き残ってしまった私は幸せになってはいけない、不幸にならなければならない、そうしなければ彼らに顔向けできない。


その日から私は悪役令嬢として振る舞い、皆に嫌われていった、婚約者に婚約破棄され続ける日々、幸いな事に外見には恵まれているうえ、若くしてエーデルシュタイン家の当主となり、莫大な財産を抱えている私と婚約するものは後を絶えなかった、そして一人残らず婚約破棄していく、婚約破棄に精神的ショックを受けながら同時に安心感や充足感を感じる歪んだ日々、悪役令嬢の私にはお似合いの日常だ。



「初めましてファスティー・エーデルシュタイン、俺の名前はロイフォード・ガルシア、今日から君の婚約者だよろしくな」


「よろしくお願いします、ロイフォード様………にしても、よほど婚約相手に困っている様ですねわざわざ悪役令嬢の私と婚約するなんて、それもそうですか、〝正義の味方〟なんて言われている偽善者のロイフォード様と婚約したい令嬢なんてそうそういるはずがありませんものね」


「ハハ、ファスティーさんの言う通りかもな、よくお人好しって知り合いに言われるし」


婚約破棄され、また新しい婚約を結ぶ、幾度と繰り返されたその過程はもはや通過儀礼と化していた、今回の婚約者は第八王子ロイフォード・ガルシア様、この国では珍しい黒髪黒目を持つ青年、黒いながらも艶めきを放つ夜空な様な髪に黒真珠の瞳、爽やかな顔つき、数多の女を惹きつけ恋に落とすには十分な容姿に人助けを率先して行うという聖人君子ぶり、さらにはこのガルシア国の王族である、流石に王子と婚約するのは珍しい、だが婚約者が王子だろうがやる事は変わらない、まず出会い頭に相手の立場と性分をなじる様な挨拶をする、しかし不思議な事にロイフォード様は柔和な態度を崩さず、朗らかに肯定する。



「全く、王族の恥晒しですよ、ああ、第八王子なんて殆ど王子じゃありませんか」


「だな、八番目の王子なんて王位継承権なんてものからは殆ど関係ない存在だ、もしかしたら貴族の名門エーデルシュタイン家の現当主であるファスティーさん………いや、エーデルシュタイン殿の方が偉いのかもな」


「かもじゃありません、貴方より私の方が偉いんです」


「そうだな、俺なんかより君の方が偉い」


そのまま毒舌を吐き続ける私、王子相手に王子じゃないとまで宣っているのにそれでも尚態度が変わらないロイフォード様、終いには王子より自分の方が偉いとまで断言するが、何の抵抗も無く同意する彼。



「全く、最初から気安く名前で呼ぶべきではないくらいわかるでしょう?、あまりの愚鈍さに眩暈がしそうです」


「悪い悪い、俺結構頭が悪くてさ、エーデルシュタイン殿に迷惑かけてしまうだろうけど君の婚約者として恥ずかしくない様に頑張るからさ」



「フン、無駄だと思いますけど精々努力なさい」


王子様相手に最早毒舌というより自殺志願者にしか思えない言動をとるがそれでも彼は謝罪しながら自分に非があるかのように言葉を紡ぐ、そんな彼に何だかよく分からないが敗北感を覚えて無意識に会話を切り上げる私。


「………また人助けしてる」


あれから二、三ヶ月、いつも通り困った人を助ける慈善活動を続けているロイフォード様噂通りの〝正義の味方〟っぷりな様子に呆れ半分感心半分で眺める私、なんせ今日は王都から離れた村にわざわざ出かけてるほどなのだから。



(あれからずっと皮肉を言い続けているのに何で婚約破棄しないの、わけがわからないわ)



顔を合わせるたびに皮肉や毒舌を吐き続けるが、ロイフォード様は柳に風、暖簾に腕押しといった具合に全く気にしてる様子が無い、たまにそういう態度の婚約者はいたが、それだって婚約破棄をするまで最低限の礼儀というだけだ、だがロイフォード様は一向に婚約を破棄する気配が感じられない。


「ロイフォード様、単刀直入に伺います」


「何?」


「私との婚約を破棄するつもりありますか?」


「ないな」


「何故ですか!!、顔を合わせるたびに皮肉をぶつけてくる悪役令嬢との婚約なんて嫌じゃないんですか??!!」


「まぁ確かにあまり気分の良いモノじゃないな」


「ーーーだったら!!」


痺れを切らした私は村人との会話が一段落ついたロイフォード様に直接問いただす、なぜこんな性格の悪い悪役令嬢との婚約を破棄しないのかと、彼は私の態度はあまり気に入ってないと告げる、尚の事理解できず声を張り上げる私。


「でも、何だか君が苦しそうだったから」


「は?、苦しそうですって?、皮肉や毒舌を吐いてる私が?!!」


「ああ、普通悪口って相手を苦しめる為に、貶める為に言うものだろ、だけど君は相手じゃなくて自分を苦しめる為に、追い詰める為に………破滅する為に言葉を紡いでる……そんな気がしたんだ………だから俺はそんな苦しみから君を救いたい、せめてそれまでは婚約を破棄したくない……かな」


「ーーー!、か、勝手に私を理解したような事を言わないでくださる!!、貴方に私の何が分かるって言うんですか!」


「……………」



何故か毒を吐いている私の方が苦しそうなどと宣うロイフォード様、ただの戯言と切って捨てようとするも、心を見透かす様な彼の言葉に硬直してしまう、朧げに、しかし確実に私の歪な生き方に気付きかけているロイフォード様、必死に悪役令嬢という演技で覆い隠していた本心を簡単に暴かれてしまった事に動揺した私はロイフォード様に怒鳴り散らす。



「黙ってないでなんとか言ったらーーー」


「ーーー〝血液魔法(ペルヴィス)〟盾!」


「ーー!!?………何これ、矢?」



私の言葉に返答せず沈黙して立ち尽くす彼、再度口を開こうとした私の声を遮るかの様に魔法を発動する為の詠唱を口早に唱え、親指の皮を噛みちぎるロイフォード様、彼は指から出血した血で盾を作り、そのまま私を覆い隠した、瞬間、耳障りな金属音が鳴り響く、盾に弾かれた物はそのまま重力に従い、地面へと突き刺さる、それが何か確認できた私は無意識に呟いていた。



「………あっちか………君はここから逃げてくれ」


「え、ちょ、ちょっとどこいくつもりですの!」


私のつぶやきが聞こえていないかの様に矢が飛んできた方向を睨み、そのまま駆け出し始めるロイフォード様、訳が分からずそのまま彼に追走する私。




「………魔物襲撃(スタンピード)


「うわぁぁ!!」


「逃げろ!!」


「ヒィィィ!」


それは私の人生を狂わせた現象にして元凶、〝魔物襲撃(スタンピード)〟魔物達は我が物顔で闊歩する、好き勝手に村人という獲物に襲いかかっている、悲鳴をあげ逃げ回る村人達、そんな阿鼻叫喚の地獄絵図の中、私は立ち尽くす事しかできなかった。


「ーーーーさせるか!!!」


「ロイフォード様!!、は、早く一緒に逃げないと!!」


「ああ、俺が少しでも魔物を食い止めるからエーデルシュタイン殿はその間に逃げてくれ」


「なっ~!?、あ、貴方こんな時まで正義の味方ごっこをするつもり!!?、偽善者も大概にしなさい!!」


「ハハ、ほんと馬鹿だよな俺………だけどゴメン、これだけは譲るわけにはいかないんだ…………〝血液魔法(ペルヴィス)〟剣」


「ちょ、ちょっと」


「ーーーフッッッ」


立ち尽くす事しか出来ない私、そんな自分の目に映ったのは子供を魔物から守るロイフォード様の姿、彼の姿を見た瞬間、何故か硬直が解けて彼の元へと駆けつける、そのまま一緒に逃げる提案をするも、彼の言葉はどこかズレていた、自分が足止めするからその間に私に逃げろと言い出す、自分の命を当然の様に捨て駒の様に使おうとする彼の言葉に動揺して怒鳴りつける私、だがそんな私の言葉を受け入れず、血液魔法で血で出来た剣を握り締め、短い呼吸音で気合を入れ直し、再度村人を襲おうとしている魔物に接近、斬りつけて注意を引き、村人達を助けるロイフォード様。




高い身体能力と変幻自在に血で出来た武器で孤軍奮闘するロイフォード様、しかし一人で戦うにはあまりに敵の数が多すぎた、徐々に、少しずつ、だが確実に魔物の攻撃がロイフォード様に傷を付けていく、その度に彼の動きから精細さが薄まっていく、そしてそれが原因でさらに傷を負う悪循環。


「痛ッッーー」


今まではかする程度だったが、遂に魔物の攻撃が完全にロイフォード様を捉えた、血で作った剣でなんとか致命傷は避けるも、大きく吹っ飛ばされる彼。


「しまっーーー」


地面を転がされ、地に伏せるロイフォード様、素早く立ち上がろうとするも、彼の前には既に棍棒を振りかぶる魔物の姿、崩された体勢故に回避も防御も間に合わない。


「ーーー初心と未熟、先導と開拓、弱者と強者、真理の連鎖、雌雄を決す先導者となれ!!、黄玉土防壁トパーズマッドウォール!!」



「ーー!?、ファ、ファスティー………なんで………」


「フン、貴方の様な愚鈍な王子が残るなら曲がりなりにも婚約者である私が見捨てるわけにはいかないでしょう」


「そうか、そうだな………背中は任せたぜファスティー」


「二人にばっかいい格好はさせねぇぜ!!」


私は土魔法の詠唱をしながら彼の手前へと黄玉石投げ込む、自分が詠唱を完了するとロイフォード様へ振り下ろされる魔物の棍棒は盛り上がる土の壁に阻まれる、宝石を触媒にして発動する私の宝石魔法によるものだ、未だ逃げていない私に驚愕するロイフォード様、この状況でも尚皮肉を浴びせる私に苦笑しながら自分の背中を預けるロイフォード様、私達に感化されたのか、村人達も農具を武器に魔物達に立ち向かっていく。



「………ありがとう、助かったよエーデルシュタイン殿」


「……………」


「?」


村人の助けやそもそもこの魔物襲撃(スタンピード)自体、比較で弱い魔物で構成されていた為、なんとかして撃退する事に成功する私達、その場にへたり込む私とロイフォード様、不意に彼が私に助太刀の感謝を述べてくる、無言の私に疑問感じるロイフォード様。



「ーーっで良い」


「なんて言ったんだ?」


「………さっきどさくさに紛れて呼び捨てで私の名前を呼んだでしょう、一回読んでしまったのならもう何回呼ばれようが同じです、ファ、ファスティーって呼ぶことを許可してあげます」


「………そっか、なら今度からファスティーって呼ぶよ」


「嫌々、半ば仕方なく、無理矢理に許可してあげるんですからね!!」


自分でもよく分からないが、何故かロイフォード様に自分の名前を呼ぶ事を強要してしまう、意外そうな顔をした後、笑顔で了承する彼、原因不明の羞恥心に堪らず喚く私。


「わかってるってファスティー …………お礼と言っちゃなんだけど」


「?」


「俺の事もロイフォードって呼び捨てで呼んでくれ」


「なっーー!?!」


「ダメ……かな?」


「ふ、フン!!仕方ないわね、確かにいちいち貴方如きに様付けするなんて面倒極まりないもの!!」


「………そっか、なぁファスティー 」




お返しと言わんばかりに呼び捨てで良いと宣うロイフォード様、思わず言葉を失う私に不安そうな表情をする彼、私は嫌味を言いながら彼の提案を受け入れる、そんな私の名前を呼ぶロイフォード様………じゃない、ロイフォード。


「?」


「………….」


「な、何よ、ロ………ロイフォード」


「別に、呼んでみただけ」


「な、何の用もないなら呼ばないでくれます!!」


「ゴメンゴメン、謝るよ」


「わ、わかれば良いのよ」



首を傾げる私に何か期待する様な眼差しで見つめるロイフォード、何となく彼の期待する事を理解した私は試しに彼の名前を敬称なしで呼ぶ、案の定、満足した様に破顔する彼、何の用もなく呼んだ彼に怒る私に謝罪するロイフォード。



「………へへにしてもなんか良いなこういうの」


「何が?」


「………気安く名前を呼び合える婚約者ってのは得難いもんだなぁってしみじみ思ったんだよ」


「~~!!?」



そのまま畳み掛ける様に恥ずかしい台詞を並び立てる彼に言葉を失い紅潮する私。



「ほら、いつまでもこんな汚いところ座ってたら服が汚れちまう、一緒に帰ろうぜ」


「………フン、あれだけ派手に魔物と戦った時点で服なんてもうボロボロじゃない」


「かもな、でもいつまでもボロボロの服着てるわけにはいかないだろ?、着替える為にも早く帰ろうぜ、俺疲れちまったから今日はとっとと風呂入って寝ちまいたいぜ」


恥ずかしがっている私を尻目に立ち上がり、服を軽く叩いて汚れを落とし、私に手を差し伸べてくるロイフォード、彼の手を無視して立ち上がり皮肉を述べる私に朗らかな笑顔で話し続ける彼。


「ーーーママ!、あのお兄ちゃん達が助けてくれたんだよ!!」


「あ、さっきの……」


「娘を助けて頂きありがとうございます!!」


「え………い、いや私じゃなくて彼が………」


「お姉ちゃんとお兄ちゃんが助けてくれたんだよ」


「本当にありがとうございます!!」


「…………」


「ハハ」


「………何がそんなに面白いんですか」



さっき助けた女の子が母親を連れてくる、母親は子供を助けてくれた感謝を伝えてくるが、助けたのは私じゃなくてロイフォードと喋ろうとするも女の子の言葉にかき消されてしまう、再度深い感謝をする母親に無言になる私、そんな私に笑みを溢すロイフォード、何となく気に入らない私は彼を睨みつけながら詰問する。



「やっぱりファスティーは悪役令嬢なんかより正義の味方の方が性に合ってんじゃないか?」


「はぁ?、そんなわけないでしょ」


「そうか?、なら自分の顔を見てみろよ」


「?………ーー!」


「その笑みが何よりの証拠だろ」


「……………ねぇ、貴方は何で命懸けで人を助けようとするの?」


「そりゃあれだ、お人好しだからじゃないか?」


「………意外と根に持つタイプなんですね」


「何の事か全然分かりません」



あまりに的外れな彼の言動を即座に否定する、しかしは彼は余裕ありげに手鏡を手渡してくる、訝しげに私は鏡を覗き込むと………笑っていたのだ………そう、何故か婚約破棄された時と同じ、いや下手したら婚約破棄された時以上の達成感、充実感、満足感が自分を満たしていた………私の笑みに優しい笑みを浮かべながら語りかけるロイフォード、そんな彼に何故そこまでして人助けをするか質問するも、初対面時の私を詰る様な返答をする彼、彼の初めての皮肉に皮肉を返すも簡単に惚ける様に返答される私。


(…………悪役令嬢の私が命を賭して人助け……か)



悪役令嬢でありながら命懸けで人を助けようとするロイフォードの生き様に無意識に惹かれている事をこの時の私はまだ気づいていなかった。



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