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8.

寺元太一は幸福の追求者だった。彼は前回の人生から学びを得た。幸福とは決して自分一人で完結するものではなく、時に他人の人生を左右する力を持つのだ。彼はそれを理解し、そして実行した。


 私は文田桜に尋ねた。

「あなたは幸せですか?」

 それは何も答えなかった。 


 私は寺元太一に尋ねた。

「あなたは幸せですか?」

 それは何も答えなかった。


 *


「許せませんよ」

 萎びた痩身を震わせながら、文田京治はかすれた声でつぶやいた。拳を真っ白になるまで握りしめ、その震えが怒りなのか、絶望なのか、自分でもわからないまま耐えているようだった。

「どうして……どうして桜が殺されなきゃいけないんですか。ただ、幸せに暮らしていただけなのに。あんな頭のおかしい人間に……」

 京治が顔を伏せると、その横で黙って耐えていた文田澄子が、突然、堰を切ったように泣き出した。喉の奥で押し殺していた嗚咽が、破れた袋から溢れる水みたいに止めどなくあふれ出した。

「もしできることなら、私があの男を殺してやりたかった……!それなのに、あいつは桜を殺して……そのまま勝手に……」

 澄子は肩を震わせ、涙に濡れた顔を京治に押しつけた。

「やりきれませんよ……こんなこと、やりきれません」

 京治の拳にも、澄子の涙がぽとぽとと落ちていった。その雫は彼の血管を通って心臓まで沁み込むようで、握った拳をほどくことさえできなかった。

 二人を包む部屋は重く沈黙し、ただ泣き声と嗚咽だけが響いていた。寺元太一は死に、償うことも詫びることもせずに消えた。残されたのは、あまりにも大きすぎる喪失と、行き場のない憎悪だけだった。

 きっと彼らは寺元太一の名を憎み、思い出すたびに胸を裂かれながら、一生苦しんでいくだろう。


 私は文田桜の両親に尋ねた。

「あなた方は幸せですか?」

「いいえ、私たちは不幸せです。」


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