人影
私はいつものように起きた。髪をとかし化性をした。
ベランダを見るともやのような人影は無かった。私はほっとして会社に行く支度を済ませると部屋を出た。
隣りの旦那さんが
「おはようございます。」とあいさつした。
「おはようございます。」と私もあいさつし奥さんも出て来た。隣の御夫婦は共働きだ。
「大変ですね。」と私は言った。旦那さんは照れ笑いをして奥さんか゚旦那さんの腕を軽く叩いた。
仲の良い御夫婦だなと思った。私とたかおは仲の良い夫婦になれるかな。
3人はエレベーターにのり一階で降りて隣の御夫婦はマンションの駐車場へ行ってしまった。私は車が無いので歩いて駅まで行った。
満員電車に揺られて会社に着いた。警備員かか゚出社してくる社員にあいさつしている。
「おはようございます。」と私は警備員より先にあいさつした。「おはようございます。」中年の警備員か゚にこやかに言った。ゲートをぬけエントランスへ入る。
「あっ加奈。」とたかおが私を呼び止めた。
「昨日はへんな所へ連れて行ってごめんな。」
「平気よ。」私は微笑んた。「楽しかったよ。」
私たちはエレベーターに乗った。
「怖いと言うより嬉しかった。気にかけてくれて。」
嬉しかっだのは本当だ。
「昨日は良く眠れたか。」たかおは心配そうに言った。
「ぐっすり寝たよ。」
「良かった。心配したよ。」たかおは安心したようだ。
エレベーターから人が吐き出され私たちは企画室へ向った。
「おはようございます。」と二人同時に良いたかおが企画室の
ドアを開けた。企画室は出社して来る社員たちで賑わった。私とたかおはデスクに付きパソコンを起ち上げた。
昼休み
私は会社の喫茶室に一人でいた。無料のアイスコーヒーを飲んだ。私の会社ではドリンクが飲み放題だった。お昼を食べてただでアイスコーヒーを飲む。ドリンクは会社の福利厚生だ。
昨日のことをふと思う。あの黒い霧のような人影も私の目に焼きつけられていた。仕事をしているときは頭に浮かばなかったかときおり目に焼きついてしまう。私は二度と見たくないし思い出したくも無かった。
私が一人でいるとよしえが私の前に座った。よしえは私と同期だ。後輩と食事をしてたらしく後輩が私を見ている。
「どうしたの。たかおくんとけんかでもしたの。」
私とたかおのことはみんな感づいていた。あのパワハラ上司でさえも。そんなことは始めからどうでもいい。
「けんかなんてしてないよ。」私はコーヒーを飲んだ。
「加奈、今日は一人じゃない。何時もはみんなと一緒なのに。」よしえは私の暗さを感じ取った。私は迷った。廃村の廃神社の呪いの藁人形、地獄の死者のような呪いの声、部屋で見た霧のような人影をよしえに話して良いものか。
「疲れているの。」私はよしえを見た。よしえは笑った。
「まさかもうしたの。」それは意味しんだが私は首を横に振った。後輩たちが私のテーブルに集る。
「婚前ですか。」と後輩たちが騒ぎ立てた。
「違う、違う。」
「教えてくださいよ。」後輩たちはキヤアキヤア笑った。
「そんなこと人に言うものじゃないわ。」よしえがたしなめる。結婚もしないのにそんなこと出来ない。
「タダの疲れよ。」私は顔を赤らめたた。事態が思わぬ方向に行ってしまった。
その時、たかおが昼食のトレイを持って来た。よしえはさっと席を転る。
「何の話。」たかおは理由がわからずトレイを私の前に置いた。みんなクスクス笑っている。たかおは座った。
私は照れ笑いをした。
「あのね。たかお、私たちが。」と私が言いかけるとたかおは手を振って言った。
「まだやってない。」たかおは食事を始めた。
みんなはア然とした。
「恥ずかしい。」私が言うとたかおは黙って食べる。
私は席を立った。たかおはデリカシーが無い。私はたかおを残して屋上へ出た。
上を見上げると青空が広がっている。小さなセスナ機が音を響かせていた。
仕事が終わるとたかおは慌ててパソコンを閉じた。
黙って歩く私をたかおが追いかける。
「悪かったよ。加奈。」そんなにやりたいのか馬鹿
「もういいよ。」と私はたかおに向き直った。
「許してあげる。」私はたかおの肩を弾いた。
「本当に下心無いんだ。」
私とたかおは並んで歩きエントランスを出た。
警備員がお疲れ様でしたとあいさつしたので私とたかおもあいさつした。
まったくたかおはふざけすぎる。真面目だがデリカシーがないのだ。でもたかおは私に求めたことはない。
「可奈のこと大切だから。」たかおは真剣な顔をした。
私たちは駅に向かって歩き出した。たかおはレンタカーを借りて遊びに行く。車は持っていなかった。免許証は持っているが車は持たなかった。
たくさんの人や車の行き交う大通りを歩く。私はふと誰かに見られているような気がした。たかおも気づいたらしく私たちは足を止めた。通りの反対側に霧のような人影が見えた。
反対側を行く人たちは黒い人影を突き抜けて行く。私たちにしかわからない人影があった。
「加奈。見たのはあれか。」たかおは静かに言った。
「うん。あれだよ。」私たちは霧のような黒い人影を見ていた。黒い人影はこちらを見ている。私にはそう思えた。
「行こう。」たかおは人影から目を反らし私の腕を掴んで歩く。つられるように私も歩き出した。たかおは私の腕をしっかり掴んでいた。
「大丈夫だよ。たかお。」私は小さな声で言った。
たかおははっとした様子で掴んた手を緩める。
「なんなんだあれは。」たかおは呟き、私を抱き寄せた。
「怖がらなくていい。」私の体は恐怖で小刻みに震えでいた。
私たちは落ち着く為にレストランに入った。レストランは賑わいあの人影が出てきそうに無かった。
「晩ごはん食べて帰ろう。」たかおは適当に注文した。
「あの人影は何なの。たかおとドライブに行って藁人形を見たときから人影か゚現れた。」
ウェイトレスか゚氷水の入ったコップを私とたかおの前に置く。私は氷水を飲んだ。
「僕らを呪っている訳じゃない。」とたかおは私を見つめた。
「何もされなかった。ただ現れるだけ。」
「なんでだろうな。加奈と憂さ晴らしにあの場所へ行って藁人形を見た。そして呪いの声を聞いた。」
「たかおは残留思念と言ったけど。」
「そう残留思念かと思ったけどね。」とたかおは意味有りげだ「なら何よ。」私は怖かった。
「藁人形新しかっただろ。誰かの魂を閉じ込めているんじゃないかな。呪いによって封じられている魂がある。」
たかおはとんでもないことを言った。
「たかお。ファンタジーの見過ぎよ。」私は言った。
しばらく黙っていると海鮮ピラフが運ばれてきた。ウエイトレスは海鮮ピラフを私とたかおの前に置き伝票を伏せた。
「とにかく食べよう。」私とたかおはピラフを口にした。
「ん。美味しい。」私は言った。
「だから怯えるな。あの人影はきっと新しい藁人形によって閉じ込められた魂だよ。」私はたかおの言うことを信じる。
「だったらどうやって魂を閉じ込めたのかしら。魂だけなの。体は。」まだ謎は残る。
「全てが謎だよ。」たかおはピラフを口に運んだ。
「私、人影が見えたら話し掛けてみるわ。」
私は怖かったけど思い切って言った。たかおは頷く。
「加奈。勇気あるな。」たかおは心配そうだ。
「大丈夫だよ。たかおの言う通りなら可哀想じゃん。」
「でもなあ。僕らは呪いを解く力が無い。」たかおは力を落とした。私はピラフを食べた。
「きっと見つかる。」




