深まる謎
しばらく休憩して私とたかおはコーヒーショップをでた。コーヒーショップで私たちは余り弾んだ会話は出来なかった。
私はあの新しい藁人形と地獄の妖しげな呪いの声のギャップに戸惑っていた。
「疲れたねたかお。私は」運転しているたかおに言った。
「楽しいはずのドライブが台無しだな。」
「あんなに綺麗な場所なのに。」
廃村は静かで美しく廃神社も情緒があったたが。
あの新しい藁人形と呪いの声。呪った者はどうしたのか。
私はわからなまま忘れる事にした。
「明日から仕事だね。」私が言うとたかおは渋い顔をする。
「やだなあ。あのパワハラ。」たかおは自分の企画案をパワハラ上司に取られくさっていた。
「メンタル病まないでね。私はたかおが心配だよ。」
たかおは笑って
「誰がメンタルやむか。」と言った。そうだあんなパワハラ上司のために自殺なんて馬鹿だ。
「加奈、心配してくれてありがとう。」たかおは優しく笑った。
たかおは私をマンションまで送っでくれた。余り家賃の高くない古いマンションだ。駐車スペースもある。
私たちは暗黙の了解でお互いの住所は知っているけれど部屋には行ったことがない。私は車を降りると後部座席のリュックを取った。
「ありがとう。たかお。」私は運転席を覗き込んだ。
「またな。ラインするよ。」たかおはそう言うと片手を振り車を走らせ去って行った。
私は自宅のマンションに入りエレベーター三階のボタンを押した。このマンションは三階が最上階だ。屋上は無い。
三階のドアが開くと入れ替わりに人が待っていた。
隣の伊藤さんの奥さんでゴミの袋を持っていた。わたしが頭を下げると伊藤さんの奥さんはにっこり笑って頭を下げた。わたしがエレベーターを降りると伊藤さんは乗りこんてボタンを押した。旦那さんも奥さんも30代で子供はいない。
私は部屋のリュックから部屋の鍵を取り出し部屋に入った。
リビングでリュックを置き弁当のタッパーを取り出しキッチンで洗い始めた。水の音が流れた。
私は洗い終わると食器かこにふせ布巾をかけてリビングに戻る。私はソファに寝転んだ。茶色のリビングのわわたテーブルに未開封のポテトチップスがあるのでそれを開け横になったままつまみ始めた。ポストチップスを私は何も考えずに食べた。
考えるのが怖い。あの新しい藁人形が脳裏に映る。それは残像のように心に張り付く。
私は藁人形のことを思い出さないように努力した。ポテトチップスを少し食べ私は起き上がり食べかすをマジックテープで掃除する。
ふと見るとベランダのカーテンが揺れた。
ベランダはあけていない。私はベランダを確かめた。
確かにベランダはしまっている。何故カーテンが揺れたのだろう。訳が解らない。
私は汚れたマジックテープを剥がしてリビングのゴミ箱に捨てた。私は座り気を取り直しポテトチップスを食べる。
カーテンが揺れたのは見間違いだ。エアコンもつけていない。きっと藁人形と聞いた声が怖かったので動いたように見えただけ。私はポテトチップスを平らげると袋をゴミ箱に捨てた。
晩御飯は多めに作って置いた昼の弁当の残りが皿に盛られラップが掛けられ冷蔵庫に収まっていた。私はわざと夜御飯を作らずに済むようにしておいた。
冷蔵庫を開け作った麦茶を硝子のコップに注いた。何故かベランダが気になる。
昼見たこと、聞いた妖しげな声はあの場所の残留思念で離れたら関係がない。しばらく私はそう思っていた。
麦茶の入ったコップをテーブルに置きしばらくぼんやりしていた。黄昏がせまり部屋は少しづづ暗くなり私は立ち上がってリビングの灯をつけた。
ソファに座りふとベランダを見ると黒いもやあった。それはぼんやりとした人影のようだ。薄い白いカーテンは締めてある。
薄く白いカーテンの内側に黒いもやのような人影がいた。それはぼんやりとした人影。
私はソファ座ったままぼんやりとした人影を見つめた。それは存在すら不可解だ。性別はわからない。あいまいな影がいた。
私は恐ろしくなった。体を固くし目をそむけようとした。
脳裏に生々しく廃神社に打ち込まれた藁人形が鮮やかによみがえる。私は身を縮めた。あの人影は何なんだろう。
私は声さえ出せず人影が消えるのを願った。
私はベランダを見た。あのぼんやりとした人影はかき消すようにゆっくりと消えていった。
「何なのあれ」私は大声で言った。ベランダに駆け寄りカーテンを乱暴に開けベランダのサッシを開けた。
そこには誰も居ない。ベランダに低い取り付け型の物干しが有り外の喧騒が有った。誰かのバイクのエンジンの音が流れた。
私はサッシとカーテンを締めてソファに体を投げ出す。
体が恐怖で固まっていた。あの人影は何なのか。脳裏にはっきり浮かんだ新しく打たれた藁人形。私は頭がおかしいのではないか。もちろん私のマンションは事故物件ではない。
いままで人影を見たことも無い。全ては廃神社の新しく打たれた藁人形だった。
私は立ち上がりキッチンの゙冷蔵庫を開けおかずを出す。
あれは幻だ。呪いの声は関係無い、あれは残留思念なのだから。そうだよね、たかお。
私は盛り付けた皿を取り出しリビングのテーブルに置いて箸を取った。ポテトチップスを食べたのですぐおなかが一杯になる。箸を置いて私は顔が引きつるのがわかった。
食事を片付けソファに座る。ベランダを見ると人影はもうなかった。シャワーを浴びビンクのパジャマを着る。髪を乾かして着ていたものを選択機のドラムにほりこんだ。リビングに行くとテーブルの上のスマホの着信音がした。
「加奈、大丈夫か。」たかおの声がした。私は落ち着いていた。内心ホッとする。
「なんだか胸騒ぎがしたてさあ。何もなかったか」
スマホの向こう側のたかおは頼もしい。
「黒い霧のような人影が見えた。」つぶやくように私は言った。「黒い人影。」たかおは繰り返す。私はスマホを握りしめた。「わからない。霧見たいな。はっきりしない人影。しばらくして消えた。」
「それ以外何も無かったんだなだとな。」念を押してたかおは言った。
「うん。」
「何故か気になったんだ。何故か気持ちがざわざわして。」
「ありがとう。たかお。」
「またはやいけど今日は寝ろ。」
「ありがとう。そうする。」
「加奈。なにかあったら夜中でもいいから連絡しろよ。」
「心配しないで。スマホ切るね。」私はスマホを切った。
私は隣りのベッドルームへ行った。
ベッドのコンセントにスマホの充電器を差し込みスマホを接続した。布団を被って寝た。




