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調律片譚 神様のような人  作者: 一枝 唯


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01 おおきくなったら


 「理術士様は神様のようなお方だ」。もし王都カーセステスでそんなことを言えば、鼻で笑われるだろう。

 確かに理術は特別な力で、それを振るう理術士はカーセスタ王国の特別な存在だが、人間だ。まるで神のような所業を行なってみせようと、人の子なのだ。

 しかしここ東部地域では、理術士が人ならぬものだと思われている――という訳ではない。ただ、この付近の人々は、理術士を神のように崇めていた。


 と言っても、八大神殿を通した神々への信仰とは違う。本当に祈りや供物を捧げたりはしない。その根底にあるのは強い恩義だ。


「この村は理術士様に救われた」

「理術士はすごいお方だ」

「いま、我々が無事に暮らしているのは全て理術士様のおかげ」


 この付近の子供たちはそう聞かされて育つ。多くはぼんやりとした憧れを抱き、どこの子供もするように「理術士ごっこ」などをして遊ぶ。


「おおきくなったら、りじゅちゅちになる!」


 たまには、こんなことを言い出す子もいる。しかし理術士になるにはまず「魔力」というものが必要で、どうやら自分にはそれがない、と知っていくとその夢を諦め、やがて憧れを尊敬や感謝という概念に落とし込む。

 その結果が「神のようなお方」という表現になっていく、という訳だ。


 そう、魔力がなければ「りじゅちゅち」にはなれない。

 だが、そこで憧れを終わらせない子も、稀にいる。


「かーたんかーたん! あのね、すごいこと、きいた!」


 ある日、東部地域のミルフ村に暮らすひとりの女の子が、興奮した様子で母親に話した。


「りじゅちゅちちゃまのおそばには、りほーかんってひとがいて、りほーかんには魔力がなくてもなれるんだって!」


 それを知った子は、時にこんなことを言うのだ。


「リーネ、りほーかんになる!」


―*―


 ――成人前の娘がひとりで田舎を出て王都で暮らす、などと言い出したら、たいていの親は反対したり、少なくともひどく心配したりするものだ。

 だがリーネ・フロウドの両親はやはり東部で生まれ育ったこともあり、「娘が理術士様の傍付きになるため努力して試験にも通り、ついにはその理報補官となる」となれば全力で応援した。

 いや、両親だけではない。調律院から理報補官の合格通知が届いた日は村中で祝われ、少女はまるでミルフ村の英雄のように扱われた。


「神輿の上に乗せられたのは恥ずかしかったけど、みんなが喜んでくれたのは嬉しかったな」


 お祭り騒ぎを思い出してリーネは少し顔を赤くした。


「理術士様にご恩が返せる機会ができたんだからな、みんな喜ぶさ」


 リーネの父もにこにこして言った。


「とは言え、理術局に入るまでの間は、よくよく気をつけるんだぞ」

「王都には魅力的なことがたくさんあるでしょうけれど、まっすぐ理術局へ行くのよ」


 母親もそこは厳重に言ってきた。


「判ってるって! だいたいわたしに、理術士様より魅力的なものなんてないよ!」


 笑顔全開で言い切る娘に、両親も笑顔でうなずいた。


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