銀色の運命-4
――――アンジェティは店の休憩室のソファーで眠っていた。目を覚ますと、いきなり半身を起き上がらせた。
「あら、起きた?」
それに気付いてサーニャが声をかける。
「ごめんなさい、迷惑かけてしまって……」
体にかけられた毛布をよかし、アンジェティは休憩室の掃除をするサーニャの元に行った。
「いいのよ。人にはいろいろあるもの。……今日はもうあがって。きっと慣れない土地での生活で疲れが溜まったのよ」
サーニャはにっこりと笑う。
「すみません……では、お先に……」
申し訳なさそうにアンジェティは休憩室を出ていく。ドアが完全に閉まったことを音で確認すると、サーニャはその場にくずおれた。
「ごめんなさい……」
銀色の混じった金髪が彼女の顔を隠す。
「ごめんなさい……お世話になった貴女に何もできなくて……」
涙声でサーニャは懺悔する。
「あの村に異端者はいない。貴女は最高の巫女よ……」
サーニャは顔を上げる。
「ねぇ、アンジェティ……私、会ったの。貴女のお兄さんに。酒場に来てたわ。貴女があと少し早く来ていたら……もしくは貴女が来るとわかっていたら、私はカロンを全力で止めたのに……」
その目からは涙が溢れている。
「ごめんなさい……力になれなくて、ごめんなさい……!!」
彼女は、最後は叫ぶように謝った。
――――そんな事など知らずに、アンジェティは夜風に凍えていた。春まであと少しだが、まだまだ寒い。
「そういえば、シルラの目も金色やった。……あいつ、トラキノス人なんやろうか」
アンジェティは銀のかけらがぶら下がったペンダントを握りしめた。
「ありがとう……」
冷たい風が吹く夜道を、彼女は歩く。