銀色の運命-3
なんとなく、反射的に目を反らしてしまった。せやけど、シルラの次の一言で私は彼の顔を凝視することになる。
「あのさぁ……異端って、どういうこと?」
「え……あ……」
「いや、俺はさ、色んな国を旅してきて、ありえない理由で異端とされた人を見てきたんだ。だから、アンジェティはどんな理由なのかと……」
答えられへん。答えが見つからん。……なんて言葉を返せばええ? カロンのことは口にしたない。カロンが悪いわけとちゃうから。
「私には巫女の力があるんや。神や霊と会話したり、神の力で風をおこしたり。それを、異端と言われて……」
これ以上は言葉が出ない。
すると、シルラは私の頭をそっと撫でた。
「そっか。……アンジェティ、君は異端じゃないよ。全然、何もおかしくない」
目の前がかすむ。悔しい。悔しくて、涙が出る。
「アンジェティ……これから、どうするんだ?」
これから……そう、これからは……。
「私……旅に出る。港に戻るのは危ない。せやから、行かなきゃいけない所へ行く。大切な人と、いつかまた巡り会うために……」
ヨーデンとやらを目指せば、カロンに会える。なら、私はヨーデンを目指す。
「そっか……。事情はよくわからないけど、そこで大切な人と会えるのなら、行くべきだよ。……よかったら、同行しようか? 女の子一人じゃ危ないし……」
私は首を振る。
「いえ、いいんです。これは私の問題だから……」
「そっか。なら、せめて君の今後の旅の成功をお祈りして」
シルラはかばんから銀の塊をいくつか取り出した。それを私の手に押し付ける。
「これを売れば、しばらくの生活の足しになるだろう」
「え……!? で、でも……」
何を……言うとる!? こんな見ず知らずの私になんで……!?
「それはカルタという国の銀山で手に入れたんだ。まだ沢山あるから、気にしなくていいよ」
「そ、そういう問題やない!!」
私は銀を返そうと手を伸ばした。けど、シルラは受け取ろうとしない。
「君が会いたい人に会えるよう、祈ってるよ」
シルラは立ち上がった。
「君が同行を望まないのなら、俺は早急に立ち去るよ。じゃあ、元気で」
彼は川の流れに逆らった方向へ歩き出す。港に戻るんやろうか。私は、もらった銀をぎゅっと握りしめる。
「ありがとう……。私、必ずカロンと再開するから……」
シルラの姿が見えにくくなって、私は小さく呟いた。そして、シルラとは反対の方向に歩き出す。
目指すは、どこの国にあるのかわからないヨーデンという場所。その前に国境越え。偶然出会った良心的な旅人の協力で、私の旅ははじまった――――。
旅を始めてから、私は巫女としての力を失ったことに気付いた。けど、別にええんや。最後に大切な事を教えてもらったから。
――必ず、また巡り逢える――