銀色の運命-2
シルラは何故ここで待ち続けているのか聞いてきた。なんかようわからんかったけど、そいつに興味が沸いたから少し話をしてみる気になった。
「とある人を、待っとるんや」
「その人って……?」
「とても大切な人」
カロンの顔が目に浮かぶ。
「今日、ここで待ち合わせて、一緒に向かいの大陸に行くって約束したんや」
「向かいの大陸? 国は決まってないの?」
「誰も私らのことを知らん国へ行きたいんや」
そう。私達を異端と見ない国へ。
「私らは銀髪の種族ってことでこの辺では有名。せやから、誰も知らない所に……」
ここまでしゃべった時。急に、頭が締め付けられた。私は頭を抱えてうずくまった。
『兄に会いたければ、ヨーデンへ……』
神……? 聞いてもないのに、なんでいきなり話しかけるんや……? それに、この痛みはなんや?
『船を使えば捕まってしまうでしょう。陸地を通って、ヨーデンへ』
その言葉を最後に、頭を締め付ける感覚が無くなった。私は顔を上げる。シルラが心配そうにこっちを見とる。
「ちょ、ちょっと頭痛が……。大丈夫や、もう収まった」
「ほんとに、大丈夫?」
「大丈夫や……」
時間が経つに連れ、痛みはすっと消えて無くなる。
――――その時、背後から声がした。
「見つけたぞ」
振り返ると、銀髪の男がそこにいた。
「異端者め……逃げれるとでも思ったか!」
男は私の腕を乱暴に掴む。その瞬間、シルラが男を突き飛ばして私を抱き寄せた。
「ちょっと、勘違いしないでくれる? この子、俺の彼女」
「何言ってんだお前。こいつは異端の巫女、アンジェティやぞ!」
男が手を伸ばしてきた。シルラは私を包むように強く抱きしめる。
「だから、勘違いしないで。この国以外にも銀髪の種族が住む国はあるんだ。この子は大陸中央のスタニーって国で見つけた。スタニーにも銀髪の種族はいる。お前、知らないのか?」
「嘘つくんやない! そいつはどうみてもアンジェティや!」
「アンジェティじゃない、ウェルゼ。俺の恋人。な、ウェルゼ?」
シルラは抱きしめる力を緩めた。私は頭を上げる。そして黙って頷いた。今はウェルゼに成り済ますべきや。そう思って、シルラにしがみつく。
「俺にはアンジェティにしか見えねぇ。本当にスタニーの女なら、証拠を見せてくれや」
「ふぅん。スタニーの女、じゃなくて俺の恋人なんだけどね」
その瞬間、シルラにキスをされた。一瞬のことで、何がなんだかわからんくなって、私は放心状態になった。
「ウェルゼ、こいつと関わっていたら危険だ……。もう行こう!!」
シルラが私の腕をとって走り出した。その時、私は我に帰る。
シルラは細い路地を通って、追いかけてくる男を巻こうとする。せやけど男はしつこく追いかけてくる。私の息も上がってきた。
「ア……ウェルゼ、あとちょっと頑張って……」
「う、うん!」
私達はひたすら路地を駆け回った。そしてたどり着いたのは、人気の無い河川敷。メケシェトの港の方とは違う小さな川や。
私達はじゃりの上に腰を下ろす。
「あ、ありがとうな……助けてくれて……」
礼を言ってるつもりなんに、目線はシルラに向けられない。
「いや、こっちこそ……なんていうか、ごめん……」
シルラはすごく言いにくそうに謝る。
「そんな! わ、私はすごく感謝しとるから! せやから、謝らんで!!」
叫ぶように言うて、やっとシルラの方に顔を向けられた。シルラもこっちを見る。