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繋がる過去と未来-4

 小さな声でキャロルは言う。


「ど、どういうこと?」


 チルは困ったように問う。


「どうして見抜いたのかはわからないけど……私は、確かにルミナス王子……いえ、ルミナス王をよく知っているわ」


 キャロルは顔を上げた。


「これは誰にも言わないで……。ルミナス王子は――――私の初恋の相手よ」


「え……?」


 チルは声が出なかった。いきなり初恋の相手の話を聞かされたからなのか、自分の前世はキャロルの想い人だったからなのか――――。


「初めて会ったのは、私の十二歳の誕生日パーティーの時。一目惚れだったわ。礼儀とかそういうのが大嫌いな私だけど、彼の前では王女らしく振る舞っていた。何度かルヴァニールのお城に遊びに行ったりもしたわ。誕生日パーティーの出席のお礼という名目で訪れて、その時に次に会う約束を取り付けて……何度か会うことを繰り返していたわ」


 今まで静かに喋っていたキャロルの口調が、段々と涙声に変わっていく。


「だけど……私より五つも年上だったルミナス王子には、婚約者がいたの。それに気付いたのは、彼の結婚が発表された、私の誕生日の三ヶ月後。大貴族の娘との突然の結婚。私の初恋はね……三ヶ月で終わっちゃったの……」


 彼女のチルの手を握る強さが強くなった。


「キャロル……」


 チルは何も言葉を返せなかった。ただ、今にも泣き叫びそうなキャロルを見つめることしかできなかった。


「さっきナイルがルミナス王って言ってたよね……。ルミナス王子はジルハードが滅んだ後、王位を継いで国を大きくしたのかしら?」


「歴史的には……そうなるわね……」


「あのね、チル……」


 キャロルはチルの手を離し、自身の手を彼女の肩に乗せた。


「私……たった三ヶ月で崩れてしまった初恋を、多分、一生忘れられないと思うの。だから……」


 キャロルは息を吸った。


「言えなかったこの想い、生まれ変わりのあなたに言わせて……。――――ルミナス王子、貴方は、私の、初恋の相手でした……」


「……うん」


 チルは微笑んだ。


「きっと、ルミナス王子に伝わったわ。私の生まれ変わりなのなら、今も私の魂の中にルミナス王子は居るはずだわ」


 その言葉に、ついにキャロルは泣き出してしまった。彼女はその場に座り込む。そんな彼女を、チルはそっと抱きしめた。


 ――――部屋の外では、ロクサーノ達が閉じこもってしまった二人が出てくるのを待っていた。


「キャロル……どうしたんだ? ルミナス王子が関係してるんだよな? どういうことだ?」


 ロクサーノは廊下を行ったり来たりを繰り返している。


「まあ、キャロル様とルミナス王子様は仲がよろしかったですし……けど、ルミナス王子様がご結婚なされてからは距離を置いていらっしゃったから、寂しかったのではないでしょうか?」


 メイスンは自分なりの意見を言う。が、それがロクサーノの不安を余計に大きくしてしまったようだ。


「キャロルがルミナス王子に好意を抱いているのではと薄々感じていた。――――もしかして、生まれ変わりのチルを……!?」


 ロクサーノは顔を青くして固まってしまった。


「いや、それはないと思うよ……」


 思考がとんでもない方向に走ってしまったロクサーノをシルラはなだめる。と、ここで、ナイルがあることに気付いた。


「あれ……そういえばカロンは? いつもならここで「アホちゃうか」とか言うところなんだけどな……」


「そういえば、姿が見えないね……。さっきまでは居たのに」


 シルラが辺りを見回す。しかしどこを探してもカロンはいない。


 ――――それもそのはずだ。当の本人は占いの間に戻っていたのだ。


「あら、どうかした? キャロルさん、大丈夫なの?」


「キャロルは……まだわからん」


「そう。なら、何しに来たのかしら?」


 ミゼルは微笑む。


「用件は二つ。一つは、あんた、実は全部わかっとるんちゃうか? キャロルとチルの前世がどういう関係だったか……。「詳しいことはわからない」んとちゃう。言えんのやろ? 何かしらの事情があって」


「何故、そう思ったのかしら?」


 少し間を置いてカロンは答えた。


「俺には双子の妹がいる。あいつは霊や神と会話をする力を持っとる。そんなあいつは、人が危機に会う事は伝えても、人が傷つくようなことは聞いても言わんかった。霊や神から聞いた言葉をすべて伝えるだけが大事やないと、あいつは言うとった。時には人を傷つけないよう、言わずにしておくのも大事な事やと」


「ふぅん……」


 ミゼルは頬杖をついた。


「中々賢い妹さんね。確かに、人が傷つく結果が見えたとしてもそれを言わないことはアタシもあるわ。気をつけなさい、とだけ言っておく。占いで出た悪い結果なんて、自分次第でどうにでもできちゃうしね。――――言いたいことは、それだけ? ……じゃ、なかったわね」


 意地悪っぽく彼女は笑う。


「あんた占い師なんやろ? 一つ、占ってほしいことがある」


「何かしら?」


「その妹が行方不明になった。占いで探し出してほしい」


 瞬間、ミゼルの目付きがきつくなる。


「ふぅん……。もし、妹さんの居場所がわかったら、貴方は仲間と別れて一人で探しに行くのかしら?」

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