表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46/58

繋がる過去と未来-2

「そう。まあ……その話は後ほど聞かせてもらいましょう。それより、私の別邸に案内するわ。どうせ宿をとるためのお金なんて持ってないだろうし」


 ミゼルはすべてを見透かしていた。ロクサーノが少し不機嫌な表情を見せる。


「図星ね。ま、しょうがないわ。この国は他とは違うものねぇ」


 言いながらミゼルは足元の荷物を担いだ。


「さ、行きましょう。侍女に晩餐の準備をさせてるの」


 ミゼルに導かれるまま、一同は動き出した。


 道中、キャロルはロクサーノに問う。


「ねぇ、この人とどういう関係なの?」


「知り合いの占い師だ。一時期デイ・ルイズに参加していてそこで知り合った」


「ふぅん……」


「どうしたの? 私とロクサーノがどういう関係だったのか、気になった?」


 わざとらしく笑みを浮かべながらミゼルは言う。


「別に、気になってません!」


 キャロルは声を張って言った。しかし、目はミゼルを見ていない。


「ふふ、可愛い子ねぇ」


「ミゼル、いい加減にしろ」


 ロクサーノは再びミゼルに手の平を向けた。


「あら、恐いこと」


 そう言いつつもミゼルの顔は笑っている。


「キャロル様、気にしなくて大丈夫でございますよ。ミゼルさんは悪い方ではありませんから」


 今の状況をわかっているのかいないのか、メイスンがキャロルに並んで言って聞かせる。


「そうだわ」


 突如ミゼルが声をあげた。


「もしかしたら面白いものが見れるかもしれないわ。後でそこのお嬢さんの前世占いをやりましょう」


 ミゼルの目線の先にはチルがいる。


「え、私?」


「そう。貴女。感じるの。貴女から二百年前のにおいを」


「二百年前……?」


 チルは眉根を寄せた。


「貴女とキャロルさんを見てるとね、何かを感じるのよ。占い師の勘かしら」


 ミゼルは静かに、少し不気味に笑った。


「なんや気味悪いな……」


 一番後ろを歩くカロンは、ミゼルに聞こえないよう小声でナイルに言った。


「まあそうだけど……メイスンの言う通り悪い人ではなさそうだ」


 ナイルも小声で返す。


「どうしてそう思うん?」


「うーん…………勘、かな」


「なんやねん、それ」


 カロンはナイルを小突いた。


「いてっ……何するんだよ……」


「あら、どうかした?」


 静かにしていたつもりが騒がしくなった二人に気付き、ミゼルが振り返って声をかけた。


「いや、こっちの話です」


 ナイルは腕をさすりながら言った。


「そう」


 特に気にした様子もなく、ミゼルは前を向いた。その瞬間、ナイルは再び小声で話す。


「にしても……チルの前世占いって……どういうことだ? 聞いた感じだとキャロルと関係ありそうだけど……」


「さあな。俺に聞かれてもわからん」


 カロンはお手上げ、といった感じに両手をひらひらと動かした。


「もうすぐよ」


 その時、ミゼルは森の前にそびえ立つ、この国には似合わない様式の建物を指差した。カルタ国の人々はこのような建物を『洋館』と呼んでいるそうだ。


「うっわ! 立派な建物!」


 チルが声をあげた。


「ありがとう。けど、ここは元々はアタシの持ち物じゃないのよ。知り合いに譲ってもらったの」


 ミゼルは鉄の門を開けた。


「さ、お入りなさいな」


 言われるがままに一同は屋敷の門をくぐった。門をくぐると、そこには花で埋め尽くされた庭が広がっていた。庭はほのかに光る外灯の光で照らされている。


「綺麗……」


 チルがつぶやく。


 一同が庭に見とれている間、ミゼルはさっさと玄関のドアを開けた。


「さあ、いらっしゃい。ここから先は召使たちに案内させるわ」


 ミゼルは大きな声で召使を呼び付けた。


「今帰ったわ! 誰か、アタシの大切な客人を客室に案内しておくれ!」


 すると一人のメイドが現れ、ロクサーノを筆頭に彼らを客室に案内した。


 割り当てられた客室は一人一部屋。しかも、屋敷にある客室がぴったりと埋まった。


 メイドは用意ができたら一階の大広間まで来るようにと伝え、その場を後にした。


「にしても……あいつにこんな大豪邸を譲った奴って一体……」


 客室に入り、荷物をベッドに置いてロクサーノは呟いた。


「確かにあいつの占いはよく当たる。だが、こんな豪邸をくれてやる程にあいつを気に入った奴がいるのか? ましてや、この屋敷の様式はカルタでは最近入ってきた文化……。誰もが喉から手が出るほどに欲しがりそうなものを何故……」


 部屋をうろうろしながらロクサーノは独り言を呟き続ける。その時、部屋のドアをノックする音がした。


「ちょっと、早くしないと置いてくわよ」


 声の主はチルだ。ロクサーノが外に出ると、廊下に全員が集まっていた。


「ああ、悪い。……行こうか」


 一同はメイドに言われた大広間へ向かった。途中、すれ違った召使に詳しい案内を任せ、彼らは大広間の料理が並ぶ大きなテーブルを前に座るミゼルと対面した。


「今日はカルタの伝統的な食事をおもてなしするわ。みなさん、どうぞ座って」


 黒いドレスを身にまとったミゼルは不気味に微笑む。


 一同が席に着くと、ミゼルは言う。


「さぁ、いただきましょうか」


 その一言に全員背筋を凍らせている中、ロクサーノとメイスンだけは平然と食べ始めていた。


「薄味でうまいな。この国の食事は」


「カルタの食事は体にいいのよ。みなさん、お食べなさいな」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ