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繋がる過去と未来-1

 次にアンブランテの門が彼らを導いた場所は、たった今シルラが着ている着物と呼ばれる服を着た人達であふれかえっている所だった。


「ここは……」


 シルラは辺りを見回す。


「間違いない、ここはカルタ国だ」


「カルタ国?」


 チルが問う。


「うん。トラキノスより遥か東の島国だ。最近は他国の文化を受け入れ始めているけど、ここの文化は独特だ」


「そりゃあ、見ればわかるわよ」


 周りの建物はトラキノスにはない様式の建物が立ち並んでいる。この国の家は木でできた壁に黒い瓦を乗せたものばかりだ。それぞれの家の個性をあげるとすれば、生垣に花が咲いているかどうかと、門の形などである。


「こんな建物、トラキノスでもルヴァニールでも見たことがないわ」


「ルヴァニール!? チル、ルヴァニールに行ったことがあるの!?」


 キャロルがチルに食いついた。何事かと驚いた様子でチルは聞き返す。


「ち、小さい頃に住んでたの……どうしたの?」


「いや……なんでもない。あ、ああ、前から思ってたんだけど、チルってトラキノス人っぽくないなって……」


 アイレア兄弟と見比べながらキャロルは言う。


「うん。だって、私、元はルヴァニール人だもの」


 ルヴァニールはポルフェインの隣の国だ。そこから離れた地域にあるトラキノス人であるアイレア兄弟とルヴァニール人のチルとでは、髪の毛や目の色がまったく違う。トラキノスには、チルのような緑の目の人間はあまりいなかった。


「へー。なら、なんでチルはトラキノスに?」


 二人の会話にカロンも参戦してきた。


「さあ? 私は深い事情は知らないわ」


「ルヴァニールの治安があまりよくなかったからかもしれないぞ」


 ナイルが言う。


「おい、いつまでここで立ち話をする気だ? この国の独特な文化のせいで俺達、相当目立ってるぞ」


 ロクサーノが言った。気がつけば、彼らは通行人の注目の的だった。


「カルタ国なら……俺の知り合いが最近住み着いたと聞いた。奴の家が近くにあるのなら、今夜一泊させてもらおう。確か、この国の貨幣は俺達が持っている物とかまったく違うとどこかで聞いたからな」


 そう言って、ロクサーノはメイスンを連れて通行人に彼の知り合いが住んでいるという場所を尋ねに行った。その間、シルラがこの国に関する知識を語りだす。


「確かに、この国じゃあ俺達が持ってる貨幣は使えないね。俺が来たときは近くの二種類の貨幣を扱う国でカルタ国の経済事情を聞いて、いくらか両替してから来たよ」


 ほとんどの国で同じ貨幣が使える中、カルタのように独自の貨幣を持った国は珍しい、とさらにシルラは語る。


「そうだ。この国の卵かけご飯っていう食べ物は結構美味しい……」


「だから立ち話はやめろ!」


 引き続きしゃべり続けるシルラにロクサーノは怒鳴った。


「場所がわかった。ここはモリオカという町で、俺の知り合いは遠く離れたヤマダという村にいるらしい」


「そう……それは困ったわね……」


「そうだな、チル。だがな、奴は今仕事で別邸のあるこのモリオカに来ているらしい」


「何、その偶然」


「今、この町の路上で仕事をしているらしい。東の商店街の近くの橋の辺りでテントを張っていると聞いた」


 ロクサーノは西に沈む太陽を見上げる。


「時間もあまりない。急ぐぞ」


 太陽に背を向け、ロクサーノは歩きだした。一同は後に続く。


 途中、通行人に何度も道を聞きながら、日が完全に沈みきった頃、ようやく商店街を抜け、橋までやってきた。


 しかし、橋のどこを探してもテントは見当たらない。


「帰っちゃったのかな?」


 キャロルが辺りを見回しながら言う。と、その時――――キャロルは背後から肩を掴まれた。


「ひゃ!?」


 キャロルの悲鳴に、一同は振り返った。彼らの目線の先には、黒いフード付きのマントを被った人間が一人。


「なんやこいつ……」


 カロンが腰の剣に手をかけた。ロクサーノも彼(彼女?)に手の平を向ける。攻撃魔法をかけるつもりだ。


「別に危害は加えないわ。だから剣を抜かないで頂戴。色男さん」


 フードの主は、低い女の声をしている。


「それとロクサーノ」


 彼女の見えない目の目線が、ロクサーノに向けられた。


「なぜ俺の名を知っている」


 ロクサーノの目つきが厳しいものになる。


「忘れちゃった? アタシよ、アタシ」


 女はキャロルの肩から手を離し、フードを取った。緑色の長い髪と、同じ色の瞳が現れる。妖艶なその顔立ちに、ロクサーノは見覚えがあった。


「ミゼル!?」


 ロクサーノは手を下ろした。


「遅かったじゃない。おかげで営業時間が終わっても待たされっぱなしだったわ」


 ミゼルと呼ばれた女はにやりと笑う。背の高いチルよりもさらに背が高い彼女はロクサーノを見下ろして言う。


「貴方がここに来るのを占いで見ちゃったの。だから、わざわざここに営業に来てたわけ」


「俺に用でもあったのか?」


「まあ……そうね。ジルハードの王女が目覚めてから貴方がどうしているか気になってはいたけど……」


 ミゼルはキャロルの顔を覗き込む。


「この子が、キャロル・ジルハードかしら? まさか王女を連れて……しかもこんな大勢の仲間と旅に出てるなんて思わなかったわ」


「まあ、いろいろとあったからな……」

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