表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/58

ジルハード王国記第∞巻-3

 そういってロクサーノはキャロルを抱き抱えた。そして窓際に足をかけ、ポケットから赤い布を取り出し空に投げた。布は大きく絨毯へと姿を変え、それにロクサーノは飛び乗った。着地と共にキャロルの小さな悲鳴が聞こえる。


 着地したロクサーノはキャロルを離し、空に浮く絨毯に座らせる。


「さて、城下のどこに行きたい?」


「自由気ままに歩きたいな」


「そうか。なら適当な所で下りよう」


 絨毯はとりあえず人気のない所に向かう事にした。その結果、たどり着いたのはロクサーノの――リト・クァンの屋敷の庭だった。ここなら空飛ぶ絨毯が下りてきても不思議ではない。


 ロクサーノがキャロルの手を取り、二人は絨毯から下りた。絨毯は小さくなり、ただの布に姿を戻す。


「さて、行こうか」


「うん! ねぇ、街に出ようよ!!」


 キャロルは小さな子供のようにはしゃぎ、先を走りながらロクサーノに笑いかける。


「そんなに動き回ったら帽子がとれるぞ」


 ロクサーノは笑いながら言った。


「あっ!!」


 キャロルは慌てて帽子に手をあてた。


「そうね。お城じゃないけどおとなしくしてなきゃ……」


「行こうか」


 門を開け、魔術師は王女を外の世界へと導いた。


 ――二人は街の中をふらふらと歩く。魔術師リト・クァンの姿を目で追う者はいても、キャロルの姿を気にとめる者はいない。


 二人は適当に店をまわったり、屋台でアイスを食べたりしながら限られた時間を楽しんだ。


「おや、まぁ」


 ふと、背後から声をかけられた。声の主は杖をついた老婆だった。


「リト・クァンさんじゃないかい。かわいい女の子なんぞ連れて。彼女かい?」


 何のためらいもなく老婆は聞いてくる。ロクサーノは苦笑いをしながら答えた。


「あー、いや、なんというか……」


「隠さんでもええ。お前さんも隅に置けんのぅ」


「は、はぁ……」


 老婆はにやにやしながらその場から立ち去って行った。その後ろ姿を見ながらロクサーノはため息をつく。


「知り合い?」


 キャロルは問う。


「まあ……ちょっとしたな」


「へぇ……」


「あれの事は置いといて、早く行こうか」


 ロクサーノはキャロルの背中を押した。


「え、あ、うん」


 老婆に背を向け、二人は再び歩きだした。


 向かう場所は、決まっていない。


 ――――それから歩いて、二人は大きな公園にたどり着いた。そこは街の騒がしさを忘れられる落ち着いた空間だ。


 彼らは白いベンチに腰掛けた。


「平和ねぇ……」


 さわやかな風が二人の髪をなびかせる。


「お城の中とは大違い」


 キャロルは大きく伸びをした。


「かと言って、特に行きたい所もないしなぁ……。これからどうしよっか?」


「そうだな……日が暮れるまでには城に戻った方がいいかもしれない。あまり時間もないから、ここでのんびりしてるか?」


「もうそんな時間!? 早いわねぇ……」


 王女であるキャロルは、これから湯浴みと晩の食事をひかえていた。湯浴みの時間は日が暮れる頃。日がかなり傾いている今、彼女に残されている時間はあまりなかった。


「さっき出たばっかりなのに」


「また来ればいい。王女を守るのが護衛の仕事だ。どこまでも付き合う」


「……ていうかさぁ」


 キャロルは不満そうに声をあげた。


「ロクサーノは何のための護衛なの!? 護衛がいるなら別に外に出てもいいじゃない!!」


 ロクサーノは腕組みをして、考えるそぶりを見せて言った。


「……確かに。まぁ、あの過保護な王様の事だからな。なんとなくわからなくもないが」


「何が?」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ