別れ
――――翌日、夕方。リトの家には全員が集まった。聞くと、おもしろそうだからとカロンもついてくるのだという。
「全員集まったのか。……チルは大丈夫なのか?」
ロクサーノが尋ねる。
「大丈夫。長期休業したから」
「そうか。……にしても、チルが来るとは意外だな」
「来ちゃいけなかった?」
「いや、そうは言ってないだろう!」
そこにキャロルが割り込んできた。
「来てくれて嬉しい! ありがとう、チル!」
彼女はチルの手をとって子供のように喜んだ。
その時、ロクサーノが声をあげた。
「説明を始めたいんだがいいか?」
「あ、うん。おねがい」
何食わぬ顔でキャロルはチルの手を離した。ロクサーノは咳ばらいを一つして、話を始める。
「まぁ……全員集まってくれたのはとても喜ばしい事だ。これからの旅の方法について説明するからよく聞け。――――これから俺達は、アンブランテの門を使って旅をする。国を転々とし、アンブランテの門でここに帰ってくる事を繰り返す。そういう旅にしようと思うんだが、異義はないか?」
誰も異義を唱える者はいない。ロクサーノは話を続けた。
「出発は明後日の朝だ。明日は挨拶でもしてこい。――――俺からは以上。何か言いたい事あるか?」
誰も何も言わない。彼の意見に同意ということだ。
――――それから一同は解散した。
翌日、ナイルはクラウスの元に向かった。
彼はクラウスに今までの礼を言い、その場に居合わせたサクラにも挨拶した。
サクラは何か言いたそうだったが、クラウスとの話に夢中でナイルは気付いていない。
――――ナイルは、世界にはアンブランテの門というものがあるということ、自分はある所にあるアンブランテの門を使って仲間と旅に出るという事を話した。クラウスは楽しそうに聞いている。
「そんな門があるのか! 一度行ってみたいなぁ……」
「行けますよ、いつか。いつか一緒に行きましょう」
クラウスは微笑んだ。
「……じゃあ、待ってる。いつかきっとな」
「はい」
ナイルとクラウスは握手を交わした。
そして、ナイルは店から出ていく。ドアの鈴が鳴った。
「それでは、今までありがとうございました」
一礼してナイルはドアの向こうへと消えて行った。
ドアが閉まり鈴の音が止むと、クラウスは立ち上がってサクラの元に向かった。
「大丈夫、彼は必ずまた会いに来てくれる」
優しい声でそう言って、彼はサクラの頭を撫でた。