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ガラス玉

 その直後、ドアをノックする音がしてナイルの眠気は飛んだ。ドアの向こうからシルラの声がする。


「そこに居るんだろ? 入っていい?」


 ナイルは手に持っていた本を閉じて箱の上に置いた。


「入れば?」


 ドアが開いた。トマトを二つ持ってシルラが入ってきた。


「部屋に居ないからどこ行ったかと思った。あ、これ腐る前に食べて」


 シルラは持ってきたトマトをナイルに渡した。


「いやね、俺も昔は色々あったよ」


 ナイルの隣に腰掛け、シルラは突然何かをしゃべり始めた。


「ショックなのはわかるけど、いちいち気にしすぎると疲れるだけだ」


「はぁ? 兄貴、何の話?」


「何って……そっちから聞くか?」


「聞くも何も兄貴の言ってる事がわからない」


 ちょっと待て、とシルラは黙り込んだ。そしてすぐに、驚いて聞き返した。


「お前フラれたんじゃないのか!?」


「はぁ? 兄貴、どっからそんな発想が出てくるわけ?」


 ナイルは眉根を寄せた。


「違うのか……。ならどうして機嫌悪かったんだ?」


 今度は違う意味でナイルの眉根が寄った。


「…………今は話したくない」


「そうか。……なら、気が向いたら話してよ」


「まあ……いつかは話さないといけないかもな。あ、そうだ」


 ナイルはポケットからガラス玉を取り出しシルラに押し付けた。


「これ……剣の壊れてる所にはまると思うから……」


「何だ、これ? 昼間も剣について聞いてたよね?」


「遺言の品」


 ナイルは立ち上がり、青い箱を持ってさっさと部屋を出ていった。その背中を見て、シルラはため息をついて床に寝転がった。


「どこで拾ったかも教えてくれないのか……。――――なんか、遠い存在になったなぁ……」


 部屋に残されたカンテラの光をガラス玉に当てた。橙の光に囲まれてガラス玉は黒く染まった。


 ――――しかし次の瞬間、玉は赤く染まった。さらに赤い光を自ら発している。


「……は? え、まさか……」


 光の色とは反対にシルラの顔は青ざめている。


 光はさらに強さを増して、ついには一筋の白い光を吐き出して、一瞬で何もなかったかのように元に戻った。


 一方白い光は物置部屋の入口に落ち、徐々に姿を変えてゆく。シルラは起き上がって二、三歩ほど後ずさる。


 光はゆっくりと人のような形を作った。そして、光が小さくなっていき、徐々に光に包まれていたものが姿を現す。


 それはフリルの沢山ついたワンピースをまとった少女だった。青目に金髪、ツインテールを縦ロールで巻いた――――まさに人形のような少女だ。


「久しぶり」


 少女は怪しい笑みを浮かべる。シルラは彼女から目を反らしたがっているようだ。


「あ、ああ……」


「貴方、この魔法石をどこで手に入れたの?」


「俺の弟だけど……。なんでナイルが持ってたんだ!?」


「知らないわよ。……まあ、あの馬鹿魔法使いが余計な事したから、ここに渡り着いたのは間違いなさそうだけど。――――とにかく、今その魔法石は主を持たない状態にあるわ」


「はあ……。で、俺にどうしろと?」


「魔法石は主を持って初めて効果を発揮する。だから、貴方の剣にはめ込みなさい。魔法石の前の主も貴方が次の主になる事を望んでいる」


「お前、絶対何か知ってるだろ?」


 少女は大袈裟に言い返した。


「さぁ? 私は何も知らないわ。詳しく知りたいのならあの馬鹿……じゃなくて、ロクサーノに直接聞いてみることね」


 彼女はまた光に包まれていく。形が無くなり丸く小さくなりながら、最後に一つ言った。


「それと早めに魔法石の主にならないと、誰かに悪用されちゃうかも。じゃあねー」


 光はガラス玉――魔法石の中に戻って行った。


「お前が悪用してるだろ!!」


 シルラの声は届いたのか否か。魔法石は、誰が見てもただのガラス玉に戻っていた。


「はぁ……あいつと関わるとろくなことないんだよな……」


 シルラはガラス玉をポケットにしまい、ゆっくりとため息をついた。


「しかもロクサーノって…………あいつの事か? だとしたらあの娘も巻き添いか。可哀相に……」

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