第21代帝王 ホノリウス4世
人名 = ホノリウス4世
異名 = 睡眠帝
各国語表記 = Honorius IV
代数 = 第21代
在位 = 3446年4月22日 - 3453年6月16日
死亡日 = 3453年6月16日
没地 = ノヴァ、トラデシオン
ホノリウス4世(ノ:Honorius IV)は、世界秩序ノヴァの21代ノヴァ帝王(在位:3446年4月22日 - 3453年6月16日)。旧名はムニヤ・オフトニア。
== 生涯 ==
=== 帝王即位まで ===
オフトニアは行政府の御用学者の一人で、主に世界秩序維持軍に属する兵士の健康管理を専門に行っていた。3441年に体制に不満を抱いた一部のノヴァ貴族が離反し、建国以来最大規模となる内戦が勃発すると、オフトニアは体制側である行政府軍の健康管理を担った。反乱勢力が率いていた軍も、もとは世界秩序維持軍に属していたため、体制側も反乱勢力も戦力的には大して変わらないと予想されていたが、結果は体制側の圧勝となった。当初この勝利は体制側を率いたマルス1世の指導力によるものとされ、マルス1世の神格化が図られたが、マルス1世が度重なる不倫などのスキャンダルに見舞われると、行政府はマルス1世を見捨て、オフトニアを勝利の第一貢献者として英雄視するようになった。特に、内乱の最中に執筆された『生活周期論』は、人間の本能に見合った優れた論文であると高く評価された。
=== 帝王即位 ===
3446年に、マルス1世をコントロールしきれなくなった行政府が彼を暗殺すると、行政府内の秘密会議でオフトニアの即位が可決され、21代帝王ホノリウス4世として即位することとなった。この即位の背景には、先述の内戦時の貢献による神格化のほかにも、ホノリウス4世の専門領域が人体の健康に関することであり、政治には口出ししないことが期待された点もあげられる(当時、ノヴァ政府は行政府によって管理されており、世界帝王は傀儡に過ぎなかった。)。事実、最初の数年間はホノリウス4世は世界市民の健康管理にしか興味を持っておらず、市民の生活リズムに関する布告をいくつか発したのみであり、行政府にとっては理想的な傀儡であった。
しかし、3448年頃から、ホノリウス4世の行動に変化が見られるようになる。同年10月2日に発表した『新人類生活論』において、ホノリウス4世は昼夜逆転生活こそ理想の生き方であると、従来の主張を180度入れ替える発表を行った。従来ホノリウス4世の生活リズムは朝に置起き、夜に寝るという健康なものが一環として続いていたが、この発表の前後から夜更かしをすることが増え始め、発表が行われた際には完全な昼夜逆転生活へと移行していた。この発表と同時に、ホノリウス4世は帝王への上奏や閣議決定などの政治行為も、自身の活動時間である夜行うように命じ、帝王補佐官に代表される行政府は、その対応に苦労することとなった。この頃から、ノヴァ政治の中枢で、睡眠障害などの健康被害を訴える声が現れ出した。行政府内でも、これに関する問題意識は強く、粛清を含めた抜本的対応策も検討されることとなったが、ホノリウス4世に政治への介入などの行為は見られなかったため、暗殺などによって下手に混乱を生むよりは、現状維持の方が得策との判断がなされた。
始めは昼夜逆転生活を送っているのはホノリウス4世の側近や、仕事上彼と会う機会の多い者だけだったが、ホノリウス4世による圧力や、行政管理上の効率問題などから、徐々に多くの組織が活動時間を深夜に移し、3450年には、首都機能全般が昼夜逆転した。この頃、トラデシオンは夜行性都市や深夜都市と称され、毎日明かりを灯すために膨大な燃料が消費された。また、昼は明るすぎて寝にくいというホノリウス4世の要請により、世界宮殿を覆う巨大な可動式の天蓋が建設された。
こうして首都近郊が完全に昼夜逆転すると、ホノリウス4世の生活リズムに再び変化が現れた。従来は一般人とはきれいに12時間ずれた生活リズムで生活を送っていた彼だったが、ある時を境に14時間ずれたリズムで生活を送るようになったのである。それと前後してホノリウス4世は、14時間ずれた生活リズムこそが理想の生活であるとの論文をまとめ、側近にも14時間ずれた生活を送るよう厳命した。この頃になってようやく12時間ずれた生活リズムに適応しつつあった側近たちは、再び健康的負担を強いられることを余儀なくされたのである。この、14時間ずれた生活リズムに周囲がようやく慣れだすと、ホノリウス4世は16時間ずれた生活リズムを送り出し、周囲は再び苦労するようになった。このように、この頃の彼の生活リズムは一般人とはずれた生活リズムを周囲に命じ、世間がそれに慣れると再び生活リズムを変えるということを繰り返した。
=== 暗殺 ===
こうした異常な生活リズムの強制から、行政府内で健康被害が相次ぎ、ついには精神障害による自殺者が出ると、行政府内の権力者たちは、ホノリウス4世に生活リズムを元に戻すよう上奏を行った。上奏が行われたのは3453年6月16日の午後3時だったが、当時のホノリウス4世にとってはちょうど就寝時刻であった。上奏を求める権力者らに対しホノリウス4世が「私は私の好きな時間に寝る!今すぐ眠らせろ!」と激高すると、権力者の一人が「そんなに寝たいならいつまでも寝ていろ!」と叫び、それを合図に隠し持っていた短剣をホノリウス4世に突き立てた。他の権力者も次々に短剣を突き刺し、ホノリウス4世は暗殺された。この暗殺の背景には、連日の睡眠不足により、権力者らが殺気立っていたこともあったと考えられている。暗殺直後に昼夜逆転生活は是正され、巨大な天蓋も解体された。
== 評価・論評 ==
ノヴァ帝王の研究者であり、自身も68代帝王であったホノリウス12世は、著書『帝王列伝』でホノリウス4世を以下のように評した。
「彼ほど人間の生活リズムの大切さに気付いていたものはいない。その彼が、なぜこのような不可解な行動に走ったのか。思うにこれは、彼なりの行政府への抵抗ではなかったのだろうか。当時、世界統治の権力は行政府に掌握されており、大帝の建国理念は完全に失われていた。ホノリウス4世は、歪んだ生活リズムの強制によって行政府の力を弱め、世界統治権を世界帝王のものとして取り戻そうとしたのではないだろうか?」
ーホノリウス12世、『帝王列伝』
なお、こうしたホノリウス4世に対する肯定意見は今日では非常にまれであり、ただ単に世界帝王になったことで怠惰になったに過ぎないとの見方が大勢を占めている。こうした論考を補強する大きな根拠の一つが、トラデシオンの昼夜逆転化が行われているさなかに執筆された以下の文章である。
「帝王には帝王の規律が必要だ。今や私は怠惰のなすがままに堕落を続けているが、それを掣肘しうる者は、ただの一人として存在しないのだ。」
ーホノリウス4世
この発言は、トラデシオンの昼夜逆転化政策の動機が、帝王自身の怠慢であったこと、帝王自身もその事実を理解していたが、自らを律するだけの精神力を持ちえず、他者に律してもらうことを期待していたことを示唆している。しかし、ノヴァ時代を通じて、世界帝王よりも大きな権力を有する役職は存在せず、世界帝王の怠惰を律することのできる人間は存在しなかった。この「世界帝王すら律する存在が必要である」との考えが、のちのクロノスによる時計化政策の根拠の一つになったとも指摘されている(ホノリウス4世に限らず、他者の干渉なく自らを律することのできる帝王はまれであり、クロノスはその点に問題意識を抱いていた節がある。)。
== ホノリウス4世の著作 ==
・ 『徹夜の書』(3448年)
・ 『回復の書』(3448年)
== オフトニアの名を冠した施設など ==
・ オフトニア帝立医科大学 - ホノリウス4世の治世下でホノリウス4世帝記念医科大学として開設されたが、同帝の暗殺と権威剥奪(生前に問題を起こし、世界帝王にふさわしくないと判断された帝王に対しては権威剥奪が行われ、在位中に行った諸政策が白紙化されたり、功績が否定されたりする。)によりホノリウス4世の帝号の使用が禁止されると、彼の出生名であるオフトニアに改称した。現在でも睡眠研究の権威とされており、人間夜行性現象を提唱したベルリ・スリーピアが研究を行っていたのもこの大学である。
== 脚注 ==
=== 注釈 ===
== 関連項目 ==
マルス1世 ← 3446 - 3453 → シトリウス11世
代数 人名 即位年 退位年 在位年間
1 ノヴァ大帝 3203 3225 22
2 シトリウス1世 3225 3239 14
3 メルクリウス1世 3239 3243 4
4 シトリウス2世 3243 3256 13
5 シトリウス3世 3256 3270 14
6 ホノリウス1世 3270 3281 11
7 レガリス1世 3281 3283 2
8 シトリウス4世 3283 3298 15
9 メルクリウス2世 3298 3300 2
10 シトリウス5世 3300 3319 19
11 ホノリウス2世 3319 3340 21
12 シトリウス6世 3340 3363 23
13 ホノリウス3世 3363 3382 19
14 メルクリウス3世 3382 3395 13
15 レガリス2世 3395 3413 18
16 シトリウス7世 3413 3419 6
17 シトリウス8世 3419 3424 5
18 シトリウス9世 3424 3437 13
19 シトリウス10世 3437 3440 3
20 マルス1世 3440 3446 6
21 ホノリウス4世 3446 3453 7
22 シトリウス11世 3453 3462 9
23 メルクリウス4世 3462 3470 8
24 メロス 3470 3477 7
25 アポロ1世 3477 3478 1
26 メディクス 3478 3484 6
27 シトリウス12世 3484 3484 0
28 ホノリウス5世 3484 3486 2
29 シトリウス13世 3486 3507 21
30 メルクリウス5世 3507 3508 1
31 シリウス 3508 3513 5
32 エデュカトル 3513 3514 1
33 バルカン1世 3514 3539 25
34 シトリウス14世 3539 3542 3
35 ホノリウス6世 3542 3563 21
36 シトリウス15世 3563 3565 2
37 バッカス 3565 3565 0
38 オリンピア 3565 3577 12
39 バルカン2世 3577 3580 3
40 シトリウス16世 3580 3585 5
41 マルス2世 3585 3594 9
42 ホノリウス7世 3594 3627 33
43 アグリカ1世 3627 3657 30
44 アグリカ2世 3657 3669 12
45 シトリウス17世 3669 3674 5
46 ホノリウス8世 3674 3688 14
47 ハルバ1世 3688 3700 12
48 レガリス3世 3700 3720 20
49 メルクリウス6世 3720 3731 11
50 メルクリウス7世 3731 3736 5
51 レガリス4世 3736 3750 14
52 マルクス 3750 3763 13
53 マルス3世 3763 3781 18
54 ホノリウス9世 3781 3784 3
55 ペルセウス 3784 3804 20
56 バルカン3世 3804 3812 8
57 ヘラクレス 3812 3843 31
58 オリハルコン 3843 3870 27
59 シトリウス18世 3870 3887 17
60 ホノリウス10世 3887 3919 32
61 ハルバ2世 3919 3926 7
62 クロノス 3926 3947 21
63 シトリウス19世 3947 3977 30
64 ヘルメス 3977 4004 27
65 ホノリウス11世 4004 4015 11
66 アポロ2世 4015 4046 31
67 シトリウス20世 4046 4069 23
68 ホノリウス12世 4069 4105 36
69 メルクリウス8世 4105 4113 8
70 ハルバ3世 4113 4134 21
71 ハルバ4世 4134 4170 36
72 ホノリウス13世 4170 4202 32