第16代帝王 シトリウス7世
人名 = シトリウス7世
異名 = 誤解帝
各国語表記 = Citorius VII
代数 = 第16代
在位 = 3413年5月6日 - 3419年3月10日
シトリウス7世(ノ:Citorius VII,)は、世界秩序ノヴァの16代ノヴァ帝王(在位:3413年5月6日 - 3419年3月10日)。その生涯は五回の誤解に彩られ、誤解帝と称された。出生名はミスアン・ダースタンディング。
== 生涯 ==
=== 一回目の誤解 ===
==== 生い立ち ====
後に第16代世界帝王として即位することになるミスアン・ダースタンディングは、内務省に務める高級官僚フラン・ダースタンディングと、ノヴァ子爵家の次女であったジェネヴァ・ヴァヴァンガの間に生を受けた。互いに交わったとき、彼らは互いを一夜の相手とばかり思っていたが避妊に失敗し、子供ができてしまったために結婚を余儀なくされたのである。これが第一の誤解であり、ミスアンの生涯は誤解と共に幕を開けた。
=== 二回目の誤解 ===
==== 帝王即位 ====
ミスアンは先帝レガリス2世の死に伴って実施された第一七回帝王科挙を受験し、合格を果たした。ミスアンはこれが彼の才覚によるものだと信じて疑わなかったが、実際のところ、彼の帝王科挙における成績は中の上といった程度のところであり、彼が合格した理由は、専横を働いていた貴族らに「凡庸で御しやすい」と判断されたためであった。これが第二の誤解である。これによって、ミスアンはシトリウス7世の帝号を与えられ、第16代世界帝王として即位した。
このシトリウス7世の即位は、2代帝王シトリウス1世の代から14代188年にわたって正しく運用されていた帝王科挙が、初めてその当初の目的を喪失し、世界支配の権力を高めたい貴族や官僚らによる自在な解釈によって運用されるものに成り下がったという点で、歴史的に大きな意味を持つ。アグリカ1世の即位に至るまで215年にわたって続く権威なき帝王の時代(混乱期)はシトリウス7世の即位と共に幕を開けるのであるが、当の本人にはあずかり知らぬことであった。帝王科挙の成功は、シトリウス7世の自尊心を否応なく高め、彼は自身がノヴァ大帝やそれに続く建国の七君と同程度の才能を持つものと考えたのである。
=== 三回目の誤解 ===
==== 特権をむさぼる ====
即位当初、シトリウス7世は世界帝王に与えられる特権をむさぼることに夢中で、積極的に政治政策に加担しようとはしなかった。ホノリウス2世による改革以降、世界規模で技術水準の低下政策が図られていた当時、世界帝王は科学文明の黄金時代の余光とも呼ぶべき多種多様な科学技術の恩恵を受けられる数少ない役職だったのである。冷暖房や白熱電球といった生活必需品、それにアイスクリームやコーラなどの嗜好品は、科学文明の黄金時代であれば一般大衆が当たり前のように享受していたものであるが、シトリウス7世の即位した当時にあっては世界人口の0.001%未満しか享受することのできない特権であった。シトリウス7世は、こうした「この世の驚異」(こうした特権を享受したシトリウス7世自身がこう評した)を消費することに夢中であり、自身の世界帝王としての職責など眼中になかったのである。もっとも、これには彼を傀儡として用いようとした貴族や官僚が、様々な餌を吊るしてシトリウス7世を政治運営の場から意図的に遠ざけたというのもある。彼らにとって世界帝王は、与えられた特権を享受して遊んでいればそれでよい存在だった。むしろ帝王としての責務を自覚し、にわかに政治運営に口を挟まれる方がかえって迷惑だったのである。
==== 政治への介入 ====
しかし、即位して1年が経過すると、シトリウス7世は貴族や官僚らに与えられた"おもちゃ"を無為に消費する行為にも飽き、世界帝王として世界統治に介入しようと試みた。一説によると、既存のおもちゃに遊び疲れたシトリウス7世は、今度は世界帝王としての権力をおもちゃにしようとしたのだとも伝えられるが、真相は定かではない。
シトリウス7世を彼自身の"遊園地"に遠ざけ、専横をほしいままにしていた貴族や官僚らにとって、この事態は忌避すべきものだった。彼らはあの手この手でシトリウス7世の政治介入を阻んだがついに果たせず、ついに彼は3414年6月1日の会議に参画した。なお、即位してから最初の会議に臨席するまでの記録1年1カ月という数値は、歴代の帝王から見ても並外れて遅いものであり、この点からも世界帝王位の権威の消滅は明らかであったと言える。
会議に参画したシトリウス7世は、彼の思う主種雑多な政策案を相次いで述べたが、それらは悉く否定されるか無視された。これにシトリウス7世は大いに機嫌を損ね、帝権を用いてことあるごとに官僚や貴族らによる世界統治を妨害するようになった。これは、専横を強めていた既得権層にとって少なくない打撃となり、彼らはシトリウス7世に対する対応を余儀なくされた。
==== シトリウス7世をめぐる秘密会議 ====
同年8月3日、政府の幹部らが集まって秘密裏に会議を催した。その内容は、わがままを強めるシトリウス7世への対処であり、その性質上、シトリウス7世本人はこの会議の存在を知らなかった。会議参加者の意見はもはや邪魔となったシトリウス7世を排除するか、彼が満足できるおもちゃを与えて気を静めるかという2者に分かれた。
「参加者A「もはや彼(シトリウス7世(当時高位の貴族や官僚は、帝王を陛下ではなく彼と呼んでいた。これも世界帝王の権威の低下を否応なく示している。))が我々に害をなしていることは明らかです。遊ぶしか能の無い輩など他にもたくさんおります。早急に入れ替えることが我らのためかと」
参加者B「しかしそうなれば、わずか1年足らずで帝王が入れ替わることになる。ノヴァの成立以来前代未聞のことだぞ。人心に動揺をもたらす結果となろう」」
ー3=秘密会議の議事録の一部
結果、シトリウス7世が提案した政策の中で、最も貴族や官僚に対して害の少ないものを実行に移し、これによってシトリウス7世の機嫌を回復するという方針が固まった。
==== シトリウス7世の政策承認 ====
翌8月4日の会議において、シトリウス7世の提案した政策の一つであった、反社会勢力の徹底的な掃討政策が可決承認された。シトリウス7世は、彼が2か月にわたって繰り返してきた説得が功を奏したと信じ、大いに喜んだが、その提案が承認された実際の背景は前述の通りであった。これが第三の誤解である。
=== 四回目の誤解 ===
==== 掃討作戦 ====
シトリウス7世による反社会勢力の掃討政策とは、世界各地に存在した海賊、山賊、盗賊、マフィアなどに代表される反社会的組織を徹底的に排除するというものだった。この政策は貴族や官僚らの実施しようとしていた政策となんのつながりも持っておらず、彼らに対して害があるとは思われなかったうえ、そもそも犯罪組織を掃滅することは理にかなっていると思われた。シトリウス7世は、ようやく採用された彼の政策を実行に移すべく計画の細目を整え、討伐軍団を組織した。当時、彼が書いた日記には次のような記述がみられる。
「我が政策をもって、この地上から秩序に背く輩は消滅するだろう。シトリウス7世の名は、世界から犯罪を根絶した者として、長く歴史に残るに違いない。」
ーシトリウス7世、日記
もともと世界各地の犯罪組織が、世界統一国家の強大な軍事力にかなうはずもなく、各地の反社会勢力は次々に壊滅していった。シトリウス7世による掃滅作戦は、作戦開始からわずか1年足らずで完成したのである。これには本人も大満足であった。
==== 掃討作戦の影響 ====
ところが、作戦の完遂は思わぬ影響を生んだ。そもそも、こうした犯罪組織が当時まで存続していたのは、ノヴァによる弾圧を免れたためではなかった。建国の七君をはじめとする歴代の名君が、意図的にそうした組織を残した結果だったのである。世界各地の犯罪組織とのつながりも強かったシトリウス3世は、かつてそうした組織を掃滅しない理由を聞かれ以下のように答えている。
「この世から犯罪をなくすことなど不可能だ。であるからには、より管理しやすい状態にとどめておくのが理想である。犯罪者が体系だって組織を組んでいる方が、統治者としてはよほど良い。逆にそうした組織が失われ、ありとあらゆる犯罪者がバラバラに動き出す様を想像してみたまえ。恐ろしいとは思わんかね?」
ーシトリウス3世
シトリウス7世の作戦の成功によって、そうした"恐ろしい"状況が現出したのである。各地の犯罪組織によって組織だてられていた各地の犯罪者は、指揮統率する者を失い分裂し、各々がその勝手な意思によって行動を開始した。これにより世界各地で犯罪率が上昇し、世界全域で治安の悪化が見られたのである。このような事実からシトリウス7世の名は世界に犯罪をばらまいた者として長く歴史に残されることとなる。これが第四の誤解である。
=== 五回目の誤解 ===
==== さらなる政治介入の意欲 ====
なお、上記のような治安の悪化が顕在化するのは、シトリウス7世の掃討政策より数年を経たのちであり、計画完遂直後は、世界の治安は向上したかに見えた。ために、シトリウス7世は悪びれもなく、次なる政治政策の実施を求めたのである。
貴族や官僚にとってみれば、わずか1年足らずで政策が完遂する方が意外であった。彼らは帝王科挙受験者の中でも、最も才能に薄く、御しやすい者をえらんだはずであり、そんな人物であれば世界全域から犯罪組織を一掃するのに数十年は要するものと見積もっていたのである。帝王が世界各地の犯罪組織と悪戦苦闘を余儀なくされている間に、統治権力の占有を強めるというのが、彼らの策略であったのだ。
貴族や官僚らの中に、シトリウス7世に対する警戒感が芽生えたのはこの頃である。従来、彼は無能者とみなされていた。だからこそ、貴族や官僚もなんら彼を恐れることなく、権威や特権を与えられたのである。ところがここで、シトリウス7世に非凡なる才覚の存在が明らかになった。これだけの才覚をもってすれば、貴族や官僚らが苦労して獲得した様々な権力をはく奪してしまうことも可能なのではないか、こうした感情が彼らの中に醸成されたのである。世界各地の犯罪組織をわずか1年で壊滅させることができたように、シトリウス7世であれば、貴族や官僚からも長からぬ時日をもって権威を奪い返してしまうのではないかと考えたのだ。
このような事情は、シトリウス7世にとってはつゆ知らぬことであった。彼は、日増しに貴族や官僚らの自らに対する対応が粗雑なものとなっていくことに不満を抱き、かつてのような関係性を取り戻すことを理想とした。こうした貴族や官僚の反応の変化も彼らの抱いていた危機感の裏返しなのだが、そのような事実はシトリウス7世の感知するところではなかったのだ。
==== サプライズパーティー ====
失われゆく貴族との関係性を取り戻すために、シトリウス7世が企画したのが、当時の筆頭貴族であったディアコノフ帝センテル3世に対する、サプライズ誕生日パーティーであった。シトリウス7世は、幼少期にサプライズで誕生日を祝ってもらった記憶があり、これと同様の行事を催すことで、再び貴族との間に親密な関係性を回復し得ると信じたのである。彼は、センテル3世の誕生日を見据えて秘密裏に準備を進め、このパーティーの実現によってセンテル3世との親密な関係性を取り戻し得ることを信じた。
ところが、当の本人はそのことを知り得なかった。「何やらシトリウス7世が不穏な動きを見せている」との報告は、当のセンテル3世をはじめとする貴族の精神を逆なでしたのである。わずか1年で世界全域の犯罪組織を壊滅させた帝王が、よからぬことを企んでいるという事実は、貴族や官僚らの危機感を限界まで高めた。センテル3世は一度シトリウス7世の元に赴き、彼が何を欲しているのかを問うたが、シトリウス7世はにやにやと笑うばかりでろくに答えず、これがセンテル3世の危機感を一層強めた。
このような中で、ついにシトリウス7世から貴族や政府の高官らに対し、3月10日に世界宮殿の大広間に集うよう布告があった。これは、先述のサプライズ誕生日パーティーを実施するためのものであったのだが、そのような予想に至った者は皆無であり、ほとんどの者が、その場に参集した人々をことごとく捕縛し、帝権を回復するつもりなのだと信じて疑わなかった。貴族や官僚らは結託し、3月10日に大広間にて、シトリウス7世を暗殺することに同意したのである。
==== 暗殺 ====
3月10日、シトリウス7世は集まった貴族や官僚らの前にさっそうと姿を見せ、「サプラーーーーイズ!!!」と叫んだ瞬間に刺殺された。これが第五の誤解である。
== 脚注 ==
=== 注釈 ===
==関連項目==
レガリス2世 ← 3413 - 3419 →シトリウス8世
代数 人名 即位年 退位年 在位年間
1 ノヴァ大帝 3203 3225 22
2 シトリウス1世 3225 3239 14
3 メルクリウス1世 3239 3243 4
4 シトリウス2世 3243 3256 13
5 シトリウス3世 3256 3270 14
6 ホノリウス1世 3270 3281 11
7 レガリス1世 3281 3283 2
8 シトリウス4世 3283 3298 15
9 メルクリウス2世 3298 3300 2
10 シトリウス5世 3300 3319 19
11 ホノリウス2世 3319 3340 21
12 シトリウス6世 3340 3363 23
13 ホノリウス3世 3363 3382 19
14 メルクリウス3世 3382 3395 13
15 レガリス2世 3395 3413 18
16 シトリウス7世 3413 3419 6
17 シトリウス8世 3419 3424 5
18 シトリウス9世 3424 3437 13
19 シトリウス10世 3437 3440 3
20 マルス1世 3440 3446 6
21 ホノリウス4世 3446 3453 7
22 シトリウス11世 3453 3462 9
23 メルクリウス4世 3462 3470 8
24 メロス 3470 3477 7
25 アポロ1世 3477 3478 1
26 メディクス 3478 3484 6
27 シトリウス12世 3484 3484 0
28 ホノリウス5世 3484 3486 2
29 シトリウス13世 3486 3507 21
30 メルクリウス5世 3507 3508 1
31 シリウス 3508 3513 5
32 エデュカトル 3513 3514 1
33 バルカン1世 3514 3539 25
34 シトリウス14世 3539 3542 3
35 ホノリウス6世 3542 3563 21
36 シトリウス15世 3563 3565 2
37 バッカス 3565 3565 0
38 オリンピア 3565 3577 12
39 バルカン2世 3577 3580 3
40 シトリウス16世 3580 3585 5
41 マルス2世 3585 3594 9
42 ホノリウス7世 3594 3627 33
43 アグリカ1世 3627 3657 30
44 アグリカ2世 3657 3669 12
45 シトリウス17世 3669 3674 5
46 ホノリウス8世 3674 3688 14
47 ハルバ1世 3688 3700 12
48 レガリス3世 3700 3720 20
49 メルクリウス6世 3720 3731 11
50 メルクリウス7世 3731 3736 5
51 レガリス4世 3736 3750 14
52 マルクス 3750 3763 13
53 マルス3世 3763 3781 18
54 ホノリウス9世 3781 3784 3
55 ペルセウス 3784 3804 20
56 バルカン3世 3804 3812 8
57 ヘラクレス 3812 3843 31
58 オリハルコン 3843 3870 27
59 シトリウス18世 3870 3887 17
60 ホノリウス10世 3887 3919 32
61 ハルバ2世 3919 3926 7
62 クロノス 3926 3947 21
63 シトリウス19世 3947 3977 30
64 ヘルメス 3977 4004 27
65 ホノリウス11世 4004 4015 11
66 アポロ2世 4015 4046 31
67 シトリウス20世 4046 4069 23
68 ホノリウス12世 4069 4105 36
69 メルクリウス8世 4105 4113 8
70 ハルバ3世 4113 4134 21
71 ハルバ4世 4134 4170 36
72 ホノリウス13世 4170 4202 32