第12代帝王 シトリウス6世
人名 = シトリウス6世
異名 = 黙秘帝
各国語表記 = Citorius VI
代数 = 第12代
在位 = 3340年11月8日 - 3363年8月2日
出生日 =3287年9月8日
死亡日 =3363年8月2日 (75歳没)
先代 =ホノリウス2世
継承者 =ホノリウス3世
前職 =ジェニュラ属州総督
シトリウス6世(ノ:Citorius VI,)は、世界秩序ノヴァの12代ノヴァ帝王(在位:3340年11月8日 - 3363年8月2日)。
==生涯==
===帝王即位===
先帝ホノリウス2世の思想的継承者であり、帝王即位後は脱ポムソン主義を掲げ、持続可能統治政策の施行を引き継いだ。一方で、為政者が政策を施行する際には、臣民一人一人が、その政策の意義を完全に理解している必要があるとする、完全説明主義を個人的な信条としており、治世の前半は、多くの時間を自身の政策の正当性のアピールに費やした。
民意で為政者が入れ替わる民主政治とは異なり、才能で全てを決するノヴァの政治体制において、民衆に自身の政策をアピールする必要性は存在しなかったため、シトリウス6世による政策のアピールは、政府上層部からの批判にさらされた。そもそも、民衆に忖度することなく、才能を有する者が必要であると信じた政策を施行できるのが、ノヴァにおける政治体制のメリットであるはずであるのに(「世襲は、無能な愚帝を生み、選挙は口先だけの僭主を育む。世界帝王の座は、ただその能力によってのみ、継承されるべきである。」とノヴァ帝王は述べている。)、本来不必要な「民衆による理解」に帝王自身が才能と労力を費消することは不適切であるとみなされたからである。また、建国以来130年にわたって継続されたメリトクラシーに偏向した政治の履行により、徐々に政府の上層部に非知識階級に対する差別意識が芽生えつつあり、高尚な政治について民衆に論じても豚に真珠であるとの認識が醸成されていたという理由も存在する。しかし、シトリウス6世は民衆による理解を正義と信じ、一貫してこの姿勢を貫いた。
即位して5年目となる3345年には、シトリウス6世による政治政策の意義を民衆に周知することを目的とする専門機関「政策啓発機構」を創設し、民衆による理解促進により一層の力を注いだ。
しかし、こうした長期間にわたる努力にもかかわらず、持続可能統治政策が民衆に理解されることはなかった。そもそもこの政策は、「文明の長期的な繁栄のために、現在を生きる人々は豊かな生活を捨てる必要がある」とする思想に立脚していたが、政治的な義務を有さない民衆の大半は、自分自身が豊かな生活を送れるかどうかにしか興味が無かったからである。短絡的な民衆は文明の持続のためなどという高尚な政治を理解せず、むしろ、それらしい言い訳をして民衆のための技術を占有しようとしているとシトリウス6世を非難するようになった。シトリウス6世は、こうした誤解の解消にますます心血を注ぐようになり、たびたび自らが民衆の前におもむき、自身の政策の意義を説明することをも行ったが、こうした行動は政府上層部の侮蔑の対象となった(民主政治の全盛期である21世紀に、民主主義者が王政を見下していたように、ノヴァ時代の為政者は民主主義的な活動を見下していた。)。
===金玉投石事件===
3355年3月に民衆の前に立ち、自身の政策の正当性を喧伝しているさなかに、彼の政策をよく思わなかった民衆の一人がシトリウス6世にタマウシの睾丸を投げつける事件が発生した(金玉投石事件)。シトリウス6世は、捕らえられた犯人に対し、「私の政策を理解できていないだけだ。理解すれば共感するようになる」とし、説得を試みたが、犯人は頑としてシトリウス6世批判の姿勢を貫き、口汚くシトリウスを罵った。数時間にわたって説得を試みたシトリウス6世は、とうとう堪忍袋の緒が切れ、犯人の即刻処刑を命じた。この日を境に、シトリウス6世の心理に重大な変化が生じたとされている。
シトリウス6世は、徐々に民衆に対して口を閉ざすようになった。金玉投石事件以降のシトリウス6世の口癖は「分かる者に分かればよい」であり、ついに彼は完全説明主義を放棄したのである。政府高官らは、ついに帝王があるべき姿勢を取り戻したと、この転向を高く評価した。3360年には、シトリウス6世の命により、政策啓発機構が閉鎖された。
完全説明主義からの反動である故か、シトリウス6世の説明を放棄する姿勢は際限なく先鋭化した。3360年頃から、彼はノヴァ貴族や行政府の長官らといった政府高官にさえ、自身の政策の目的や意義を説明しなくなったのである。世界統治の意思決定の場から締め出されることを恐れた政府高官らは、シトリウス6世に、情報共有を求めたが、シトリウスの答えは一貫して「分かる者に分かればよい」であった(こうした態度が、脱ポムソン主義以降繋生じつつあった世界帝王とノヴァ貴族との亀裂を、さらに深刻化させた。)。
===暗殺===
かたくなに説明を拒むシトリウス6世に対し、政府の上層部では彼が帝位の世襲化や占有を目論んでいるとの憶測がささやかれるようになった。自身の政治に対して一切説明を行わなくなっていたシトリウス6世は、この憶測を肯定しなかったが否定もしなかったため、帝位の占有を恐れた高官らの策謀により3363年8月2日に暗殺された。シトリウス6世は、暗殺が確実な初の世界帝王である。
==評価==
===ホノリウス12世の評価===
世界帝王の研究で知られ、自身も68代世界帝王であったホノリウス12世は、自著『帝王列伝』においてシトリウス6世を極端すぎると述べた上で以下のように語っている。
「そもそも才主制最大の利点というのは、才能ある君主が独断で政策を立案・遂行できることにある。であるのにもかかわらずシトリウス6世はその利点を放棄し無意味な説明で治世の半分を無駄にし、その上それが無意味であると気がつく逆に何も喋らなくなってしまった。駄々をこねる子供とも形容できよう。彼の失敗点は彼の彼自身の分析能力が欠如していたことにあると言えよう。」
ーホノリウス12世、『帝王列伝』より一部抜粋
==脚注==
===注釈===
==関連項目==
・脱ポムソン主義
・持続可能統治政策
・完全説明主義
・知識差別
・政府啓発機関
・ノヴァ帝王一覧
ホノリウス2世 ← 3340 - 3363 → ホノリウス3世
代数 人名 即位年 退位年 在位年間
1 ノヴァ大帝 3203 3225 22
2 シトリウス1世 3225 3239 14
3 メルクリウス1世 3239 3243 4
4 シトリウス2世 3243 3256 13
5 シトリウス3世 3256 3270 14
6 ホノリウス1世 3270 3281 11
7 レガリス1世 3281 3283 2
8 シトリウス4世 3283 3298 15
9 メルクリウス2世 3298 3300 2
10 シトリウス5世 3300 3319 19
11 ホノリウス2世 3319 3340 21
12 シトリウス6世 3340 3363 23
13 ホノリウス3世 3363 3382 19
14 メルクリウス3世 3382 3395 13
15 レガリス2世 3395 3413 18
16 シトリウス7世 3413 3419 6
17 シトリウス8世 3419 3424 5
18 シトリウス9世 3424 3437 13
19 シトリウス10世 3437 3440 3
20 マルス1世 3440 3446 6
21 ホノリウス4世 3446 3453 7
22 シトリウス11世 3453 3462 9
23 メルクリウス4世 3462 3470 8
24 メロス 3470 3477 7
25 アポロ1世 3477 3478 1
26 メディクス 3478 3484 6
27 シトリウス12世 3484 3484 0
28 ホノリウス5世 3484 3486 2
29 シトリウス13世 3486 3507 21
30 メルクリウス5世 3507 3508 1
31 シリウス 3508 3513 5
32 エデュカトル 3513 3514 1
33 バルカン1世 3514 3539 25
34 シトリウス14世 3539 3542 3
35 ホノリウス6世 3542 3563 21
36 シトリウス15世 3563 3565 2
37 バッカス 3565 3565 0
38 オリンピア 3565 3577 12
39 バルカン2世 3577 3580 3
40 シトリウス16世 3580 3585 5
41 マルス2世 3585 3594 9
42 ホノリウス7世 3594 3627 33
43 アグリカ1世 3627 3657 30
44 アグリカ2世 3657 3669 12
45 シトリウス17世 3669 3674 5
46 ホノリウス8世 3674 3688 14
47 ハルバ1世 3688 3700 12
48 レガリス3世 3700 3720 20
49 メルクリウス6世 3720 3731 11
50 メルクリウス7世 3731 3736 5
51 レガリス4世 3736 3750 14
52 マルクス 3750 3763 13
53 マルス3世 3763 3781 18
54 ホノリウス9世 3781 3784 3
55 ペルセウス 3784 3804 20
56 バルカン3世 3804 3812 8
57 ヘラクレス 3812 3843 31
58 オリハルコン 3843 3870 27
59 シトリウス18世 3870 3887 17
60 ホノリウス10世 3887 3919 32
61 ハルバ2世 3919 3926 7
62 クロノス 3926 3947 21
63 シトリウス19世 3947 3977 30
64 ヘルメス 3977 4004 27
65 ホノリウス11世 4004 4015 11
66 アポロ2世 4015 4046 31
67 シトリウス20世 4046 4069 23
68 ホノリウス12世 4069 4105 36
69 メルクリウス8世 4105 4113 8
70 ハルバ3世 4113 4134 21
71 ハルバ4世 4134 4170 36
72 ホノリウス13世 4170 4202 32