表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/20

幕間 世界史の授業風景2

「新年度の風物詩、ですねぇ」


教室にやってくるなり、教科担任はそう口にした。


「今日は授業にならないので」


黒板の前に立ち、教室を見回す。

出席しているのは、生徒数は三分の一である。


「雑学の続き、聞きたい人ー」


教科担任はそういって、やはり教室をみまわした。

全員が手を上げる。


「それでは、今日は何を話そうか。

渡航者のことは話したし……」


俺はふと、今朝のオーレリアとのやりとりを思い出した。

気づいたら手を挙げていた。


「先生、別のクラスの子からきいたんですけど」


教科担任がこちらを見る。


「【永遠の旅路を歩む者】ってひとの話が知りたいです」


教科担任が思案する。

話すべきかどうか迷っているようにも見えた。


「……まぁ、いいでしょう」


教科担任は語り出した。


「【永遠の旅路を歩む者】の話をするには、もう一人、重要な存在について話さなければなりません」


存在?

人ではなくて??


「いえ、まずは彼らを取り巻いていた環境からでしょうか」


さて、どこから話したものか、と教科担任はまた思案顔になる。

思案顔はそのままで、教室を見渡す。

釣られるように、俺もほかの生徒を見た。

うつらうつらと船を漕ぎ出す者が何人もいた。

起きているのは、俺を含めて五人ほど。


「世界がこうも多くなった原因。

それは【永遠の旅路を歩む者】が何度も世界をやり直したことに始まりました」


そこで、三人ほどコクンコクンと船を漕ぎだす。

あるいは欠伸をし始める。

教科担任の顔が、何処か楽しそうに嬉しそうに満足そうに、そして祝うかのように、破顔する。


「そして、彼が何故そんなことをするに至ったのか。

ひとえにそれは、何に変えても()守りたかった存在()を取り戻すためだったと言われています」


取り戻す?

オーレリアから聞いた話とは違う。


「誰でもあるでしょう?


過去をかえたい。

あの時ああしていれば、こうしていれば。


そんな後悔から全ては始まりました。

全ては、喪った家族を取り戻して、その家族が幸せにニンゲンとして人生を終える、そんな世界を探し始めたこと、手に入れようとしたこと、そして作ろうとしたこと。

その後悔と挑戦と創世の数だけ世界が生まれ、広がりました」


ここで起きているのは、俺だけとなった。

みんな寝てるし、質問してもいいかな。


「あの、先生」


教科担任が、待ってましたとばかりに俺へ笑顔を向けてくる。

まるで、おとぎ話に出てくるような女神のような美貌。

そして、この国では珍しい濃い桃色(どピンク)の髪と目をした、教科担任の女性は、俺へ聞き返す。


「はい、何でしょう?」


「質問、いいですか??」


「どうぞ」


「その、家族の名前はわかってないんですか??

【永遠の旅路を歩む者】みたいな総称でもいいんですけど、気になって」


「わかってますよ」


わかってるんだ。

教科担任のステラ・ルークス先生は俺の質問に答えてくれた。


「【愛を求め叫び続ける者】」


これが、現代に伝わる、世界を広げた原因である存在、その総称らしい。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ