1.私、ミステリ好きなんですけど皆さんはどうですか?
初めまして。初春餅と申します。
なろうで短編を書いたり長編を書いたりしています。
元々持っている性癖のせいか、ラブコメを書いたつもりで黒いものがにじみ出てしまったり、アハハハハハ的に吹っ切れた血の宴が始まったり。
そういうのが奇跡的に出なかった短編だけメチャ読まれたのですが(※私基準)、これだけびっくりするくらいポイントもらいました。大人気テンプレを使ったせいだろうと思いますが、こんな奇跡はもう二度と起こらないと思います。
自己紹介はこんな感じです。
じゃあ行きますね。掲題の件。
私、めっちゃミステリ好きなんですよ。
傾向としては国内ものより海外もの、日常の謎より連続殺人が好きです。
こんなことになった原因はアガサ・クリスティーだと思います。学生の時に名探偵ポワロシリーズにドハマりし、「カーテン」以外全部読みました(ポワロが死んじゃうらしいカーテンだけは読めない)。
退役軍人がいて、ガチのメイドさんがいて、未婚のおばなる謎の生き物がいる、日常から遠い世界。そこで起こる殺人は決して現実のことではなく、創作物という絶対的な安心感があり、怖いのとか生々しいのが苦手な私もすんなり入り込むことが出来ました。
ミステリと言っても、何ら小難しいことはなく、基本のストーリーはいたってシンプル。
①殺人事件が起こる
②関係者を一人ずつ呼んで順に話を聞く
③灰色の脳細胞フル回転
④全員を集めて「犯人はお前だ」する
なろうに当てはめるとこう。
①「お前との婚約を破棄する!」
②「取り巻きを使って私を苛めたり、階段から突き落としたり!」
③「何故わたくしがそんなことを?」(やっていないという非の打ちどころのない証拠付き)
④「お前は廃嫡だ!」「そんな!父上!」隣国王子登場「どうか私の妃に」
美しい流れですね。シンプルかつ不足がない。ここに余分な肉付けなど不要で、素材そのものの味を何回でも味わいたい。婚約破棄ものばっか読んでる人もこんな気持ちなのでしょうか。クリスティーさすがにこればっかじゃないのですが、このパターン出てきたら何かもう俺の港に帰ってきた感。
余談ですが、ハヤカワ・ミステリ文庫のシリーズは表紙もすごく雰囲気があって素敵です。一粒一粒がまるで邪悪な宝石のよう。ポワロシリーズではないのですが「そして誰もいなくなった」の表紙とか、禍々しい美しさにゾクゾクします。クリスティーは文章もきれいです。原書にも手を出しましたが、文章やっぱりきれいでした。しかも全然難しい言葉とか使ってなくて読みやすい。
この、優しさ。
まさに永遠のクイーンノブミステリィ。
こうして順調にハマった私は、その後も坂道を転げ落ちるようにミステリを読み漁りました。
転げ落ちた先の沼でズブズブはまったのは、短編の名手、ジャック・リッチーでした。
クリスティーが私の血肉なら、ジャックは我が最愛。
ストーリー、登場人物、最後のオチ、全部好きです。
ジャックの登場人物たちは「妻を殺したい」「カネが欲しい」「命が助かりたい」等、皆自分の欲求に迷いがなく、そしてジャックがそれをどうともジャッジせず、ただただ運命とか間の悪さとかにブッコんでるのがとてもいいと思います。
男性作家って、「どうだ、ココ面白いだろう! さあ笑え!」みたいな、鼻息フンフンが透けて見える時あるじゃないですか。
ジャックはそういうのが全然なくて、さらっと読んでたらうっかり読み飛ばしちゃうくらいのさりげなさでおもろいこと言ってて、そういうところが本当に好きです。
おもろいと言えば、お腹抱えて笑っちゃうのはカール・ハイアセンでしょうか。ギャグ漫画とかじゃなく、ミステリ読んで爆笑ってなかなかない気がします。
でも笑い過ぎて疲れるので、ハイアセンは1コ読んだら十分かなって。
これからお読みになるなら、その1コは「復讐はお好き?」をおススメします。
計画殺人を企む夫により、クルーズ船から突き落とされた妻が、奇跡的に生き延びて復讐しようとする話。この素材をノーシリアスで書けるハイアセンって普段何食べて生きてんだろう。夫が安易な今時のバカで、ぜんぜん期待を裏切りません。
歴史ものとか特殊シチュについても語ります。
ウンベルト・エーコ「薔薇の名前」は衝撃でした。十四世紀、北イタリアの修道院で起こる連続殺人。この設定だけでパスタ3杯いけてしまう。
各話のタイトルも、何かもうすごいんですよ。この章で何が起こるかを書いてくれてるんですけど、ちょっとした短い手記みたいな。こんなん……ありなの……っていうことを教えてくれた一冊でもあります。
マーガレット・ミラー「まるで天使のような」も、世間から隔離された宗教施設で起こる連続殺人。こういうシチュ好きですが、シチュ萌え差し引いても面白かったです。なんだ、あのラスト。いろいろ語りたいがネタバレになるから語れない。
さて、ここまでお付き合いくださったミステリ好き諸兄姉はそろそろお気づきでしょう。
この人、古いタイトルばっか読んでるね? と。
それな……。
私は割と新旧見境なく読むのですが、おもろかった! ってなるのは大体ちょっと昔のやつ。
この辺りは一番最初のアガサ・クリスティーのお仕込みが良かったんでしょう。
あと、言いにくいんだけど、昨今のやつって読んでてスッと冷めちゃうことがあるっていうか。
「オチが読めちゃったな……」とか「作者は自作のこの魅力的なシリアルキラーが超大好きで推しなんだろうな……」とか「主人公のダブスタひでぇ」とか。なので、結局クラシカルに回帰しちゃう部分はあります。
ただ、そうなると困るのは入手方法です。絶版になってることもあるので、その場合は図書館か古本屋さんで。
トラン・ニュット「王子の亡霊」はウェブの古本屋さんで入手しました。
これは十七世紀ベトナム王朝で起きた連続殺人を高級官僚マンダリン・タンが解く話。最初と最後のモノローグがやたら美文で、とても雰囲気があります。
図書館で借りて読んで、すごく気に入って、ウェブの古本屋さんで今もリクエストしてるのがバルドゥイン・グロラー「探偵ダゴベルトの功績と冒険」。素人探偵ダゴベルトさんが、友人たちとの内々の席で華麗に謎を解き明かします。謎解きは必ず、ディナーのあとで。往年のウィーンの優雅さ漂ってます。
でもコレどうせなら新品でほしい。復刊とかしないのでしょうか。一度絶版になった本を復刊するのって多分大変だろうと思うのですが、たまに復刻フェアとかしてくれたりするのでワンチャン。出版者様、お待ちしています。
あ、もう一個、待ってるやつあるので併せて連携しておきます。
出版者様。
F. Anstey「The Statement of Stella Maberly」の邦訳ずっと待ってます……!
アンステイって何でもっと本格的に紹介されないんだろう。経歴とか後世への影響とか、申し分ない気がしますが。ステラメイベリーは装いも新たに新版出た、っていうのを何かで見かけて「オッ? これは日本にも来るぞ!」って勝手に思って待ってたんですけど、全然音沙汰がないまま、かれこれ六、七年は経っている。
もし万が一、この文章が関係者様のお目に留まりましたら、一回アジェンダにしていただけたら嬉しいです。二千円超えの文庫でも買います。ご検討よろしくお願いします。
おねだりしちゃった。
じゃあ言いたいことも言いましたので、そろそろまとめたいと思います。
私の主張は以下です。
・ミステリが好き
・死体は連続して転がってほしい
・言ってなかったけど死体の代わりに魅力的な謎でもいい
・雰囲気も大事
もっとごちゃごちゃ色々あるかと思ったけど、突き詰めれば意外とこんなものだった。これが満たされていれば満足です。あとはゆっくり本に浸る時間があれば。
ハァー。好きなものの話をするのは楽しいですね。
私、こんな感じにミステリ好きなんですけど皆さんはどうですか??