恋愛ゲームの主人公は人生について考える。
なんだかんだであっという間に3日経った。
ギルドの門が開く度に、シヴォンさんかな?って思ったけれど、姿は見えず‥。
こうなってくると、逆に私の紋様が効かなかったのかなって心配になってくる。でも、攻略対象の家にいって「紋様いかがですか〜?」っていうのもどうかと思うし‥。
「‥シヴォンさん、大丈夫かな‥」
今日も仕事を終えて、ルルクさんと一緒に高台のベンチでお弁当を食べるけれど‥、お弁当は美味しいんだけど、シヴォンさんも気になって、思わずぼろっと思考が口から出てきてしまった‥。
と、隣に座っていたルルクさんが、バゲットをもぐもぐと噛み締めつつ私を呆れたように見つめた。
「‥言うと思った」
「え?そうなんですか?」
「そりゃ毎回ギルドの扉が開く度に顔を上げてるのを横で見てればな」
「‥う、そんなに見てました?」
私、本当にわかりやすいよな。
でもやっぱり気になるんだよね。紋様師として、あの魔術禁止という文字をどうにかできるのかって。本を借りては読み漁ってみたけれど、答えは結局見つからず。呪術の本を読んでみればいいかな?って思ったけど、難解だしグロい。
あの文字をどうやったら解呪できるんだろうか‥。
できれば攻略対象には近付きたくないけれど、あれだけ憔悴していると放っておくのも気が引けるし。うだうだと考えていると、ルルクさんが小さくため息を吐く。
「‥‥様子、見に行くか?」
「え?」
「気になるんだろ。飯食ったら、馬を借りて一緒に行こう」
「い、いいんですかね?あと、お節介じゃないかな‥」
ルルクさんは私の言葉に目を丸くすると、ふっと笑う。
「それこそ今更だろ。恩を売っておけよ。嫌なら返品されるだけだ」
「返品‥」
「まあ、お前はそれでも心配するんだろ?」
優しい目つきで微笑むルルクさんの言葉に、なんだか胸が一杯になる。
そんな風に言ってくれるなんて‥、信用と信頼が確かなものになってきたのかな?嬉しくて頬が緩むと、ルルクさんが残りのバゲットを口に放り込んでもぐもぐと噛みしめる。
「食べたら行くぞ」
「は、はい!」
「ああ、でもよく噛め。うっかり詰まらせるな」
「‥ルルクさん、私は大人ですからね?」
「はいはい」
‥この人にとって私は一体何歳に見えているんだろう。
寂しいような切ないような‥、でも首を切られるのも回避したいし、怪我も負わせたくないし、まったく恋愛ゲームなんてやるもんじゃないな‥。
ルルクさんに言われた通り、よく噛んで飲み込むとルルクさんはおかしそうに笑って立ち上がると、私の頭をわしゃっと撫でる。
‥だから、そういう行為はうっかりときめくからやめてくれ。
赤い顔を誤魔化すように私も立ち上がって、ルルクさんのちょっと前を歩く。階段を降りながらギルドの屋根が見えて、ふと思い出した。
「そういえば見回りしてて洞窟とか、魔物は見つけたんですか?」
「ああ‥。以前タリクの所で見つけた洞窟にやたらと虫が多いのはわかった」
「虫?」
「お前の背中にくっついていた魔物虫だ」
「え、ええ‥」
この間、湖から私の背中にくっついていたかもしれないあのバッタみたいなの?思わず肩をすくめると、ルルクさんが面白そうに笑って、それから真面目な顔になった。
「白い大きな魔石を取ってから洞窟から魔物は生まれなくなったが、まだ小さいのは残っているんだ‥。もしかしたら白い魔石は魔物生むだけじゃなくて、魔物を呼ぶ作用もあるんじゃないかって思っている‥」
「それをタリクさんはなんて?」
「今、丁度王都へ戻ってるそうだ。帰ってきたらすぐに確認するとレトが」
「ああ、そうか忙しそうですねもんねぇ」
アレスさんの一件が落ち着いたら、タリクさんは安心した顔で「ちょっと王都へ行ってきますんで、魔石の紋様をお願いします!」って先日来たっけ。あれからすぐ王都へ行ってたんだ‥。
「それまでに何もないといいですね」
「そうだな。ここに何かを起こす奴もいるし」
「あの、ルルクさん?流石に私は魔物を呼んだりはしませんよ?」
「是非ともそうであってくれ」
いつの間にか私の横に立って、ジロッと見下ろすルルクさんに負けじと睨み返す。
本当に私をトラブルメーカーだって思ってない??これでも私は恋愛ゲームの主人公なんだぞ?本当だったら学園でモテモテのはず、だったんだけどなぁ〜‥。何故私の横には人の気も知らない、私の首を切りまくっていたいた暗殺者が横にいるのか‥。人生っておかしくない?




