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恋愛ゲームのシナリオはログアウトしました。  作者: 月嶋のん
恋愛ゲームのシナリオはログアウトしました。
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恋愛ゲームですが色恋厳禁。


ルルクさんを家に置いて、私は町のギルドへ歩いていく。

私の足だと20分くらい歩かないと町の入り口が見えない我が家は、ちょっと‥、いや大分離れた場所にあるのだ。


買い物をあれこれすると帰り道がちょっと大変だけど、確かに人目に付く場所じゃないから、その辺は安心なんだよね。執事長、きっとそこまで計算して別荘地の家を用意してくれていたんだろう。なにせまだ私を後妻にしようとしてたハイデン伯爵が探しているっていうし‥。頼むから、サッサと諦めて欲しい。切実に。



ほどなくして、町中の中心に建っているギルドが見えてきた。

3階建ての茶色の煉瓦で出来たドッシリした建物だ。

5段ある階段を登って、木の大きな扉を開くと、中にはもうギルドに登録している剣士さんや、魔術師さんなんかが何やら話ながら今日の洞窟の話をしている。おお、なんか皆張り切っているなぁ〜。


朝から熱気たっぷりのギルドの人達の合間を縫うようにカウンターの方へ歩いていくと、今日も渋いおじ様‥もといギルドマスターのレトさんが私を見つけるなり、手を上げる。


「お、ユキ!早速頼むぜ!」

「はい!よろしくお願いします」

「今日も元気だなぁ。よし、じゃあそっちに席を作っておいたから、すぐ書いてくれ!」


指差した方を見ると、ギルドの角の方に椅子とテーブルが用意されている。あれがいわゆる私の職場である。私は頷いて、すぐにテーブルに仕事道具である植物を液体にした物を、筆、小皿を置く。これで準備完了だ!



「紋様師です!今回、紋様が必要な方は並んで下さい。すぐに描きます!」



私がそういうと、まだギルドで働き始めて間もない剣士さんや魔術師さんが用意した椅子に順番に座ってくれる。私は正面に座った人にどんな紋様を書いて欲しいか聞いてから、筆に絵の具を付けるように液体に浸す。



よし、集中だ!

今日はザッと20人調査に行く。今座っているのは大体10人。

時間も早いに越した事はない。



どんどん紋様の注文を聞いては、魔力を込めて、この国の言葉や模様を描いていく。時にはクエストに不安だという人に、こっそり『落ち着いて』と模様のように描いておく。お守り大事だもんね。


あと少しで終了‥、というところで、


「あ、ユキちゃんだ!今日もよろしくね」

「へ?」


茶色の髪をわざと逆立てた若いお兄さんがニコニコ笑って、私の前に座る。

うわ、こいつか。思わず心の中で毒づいたけれど、致し方なし。

だって以前何度か紋様を描く度に、「可愛い子に描いてもらうとやる気が出る〜」とか「良かったら、今日どっかでお茶しない」とか言うんだもん。いや、こっちは仕事に来てるんだわ。そんな暇はない。あと、私は色恋絶対禁止なんでそんなラブを始めようとしてくれないでくれ。ただでさえ、今は暗殺者が私の家にいるんだ。


思わず首がひやりとするけれど、落ち着いて私。

まだ首は繋がっている。


「えーと、今日は何の紋様を描きましょう?」

「そうだなぁ、恋が成就する奴かな!」


そんなもんはない。帰れ。

‥そう言えたらどんなにいいか‥。

私はどこか遠い目をして、チラッとレトさんへ視線を送ると、レトさんがすぐに状況を察してくれたらしい。


「おーい!トニー!お前は今日後方支援だから紋様いらねーだろ」

「ええ〜〜??でも描いて欲しいんすけど〜〜」


駄々こねてないで帰れ!!

心の中でもう一度帰れ宣言をしたけれど、トニーさんは私を見て甘ったるい視線を投げかける。お願いだから、仕事をさせてくれ、仕事を‥。結局レトさんにもう一度呼ばれて、トニーさんはブツブツ文句を言いながらレトさんの方へ行ったけど‥、た、助かった。


暗殺者のルルクさんがいる今、一番気をつけなければ!!

そう思って、ホッと息を吐いて、次のお客さんに紋様を描いていく。



なんとか調査へ行く人達の紋様を描き終えると、今度は体が痛いとか、怪我した人に紋様を描いて‥あっという間にお昼だ。ギルドの隣の料理屋さんで簡単に昼食を食べる。本当はお昼を自分で作ればもっと安上がりなんだけど、料理が下手くそ過ぎて‥、お昼だけでもと、外食しちゃうんだよね。


地味に痛い食費。

しかも今日の夕飯はまた自炊。

その辺のハム買って終わりにしたい。そんなことを考えつつ、午後も仕事に取り掛かるが、今日はそこまでお客さんもいなかったので店仕舞いだ。


「結構早く終わったなぁ〜〜」


ルルクさんを家に一人にしているのも不安なので、丁度良かったかもしれない。急いでお肉とか野菜を片っ端から買って家に戻ろうとすると、ギルドの方へぞろぞろと調査へ行った人達が戻ってくるのが見えた。



まずい‥。

戻って来たって事はさっきのチャラ男のトニーさんがまた来るかもしれない。私は急いで荷物を担ぎ直して、家に戻る道を急いで歩いた。遠くに家が見えて、ホッとした瞬間、



「ユーキちゃん!」



語尾にハートマークが付いているような呼び声に、思わず背筋が寒くなる。

恐る恐る後ろを振り返ると、ニッコニコなトニーさんが立っていて、思わず今度こそ叫びそうになった。なんでいるんだ!!!‥と。




本人うっかり忘れてるけど、主人公なんで可愛いです。

可愛いってつい書き忘れちゃうけど、可愛いです(おい

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