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恋愛ゲームのシナリオはログアウトしました。  作者: 月嶋のん
恋愛ゲームのシナリオはログアウトしました。
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恋愛ゲームの主人公驚愕する。


ツンデレ魔術師のシヴォンさんは別人のようにしおらしくなっていた。

それどころか自暴自棄になっていて‥、あまりの変わりようにそれは驚いた。‥っていうか、静養に来るならここじゃなくても良くない?って思うのは勝手でしょうか?


初老の男性は急いでシヴォンさんを持ってきた毛布で包もうとするけれど、シヴォンさんがそれを拒否する。


「やめろ‥。もういい‥」

「しかし!お風邪を召されたら‥」

「‥もういいから」


困り果てた顔の初老の男性に、騎士さんが「執事長、ひとまず屋敷に」と話すと、執事長と呼ばれた男性は私達を見て、


「お二人も、どうか屋敷にいらして下さい。その姿では風邪を引いてしまいます」

「え、だ、大丈‥はくしゅっ!!」


大丈夫って言いたかったのに、思い切りくしゃみをしてしまって、まったくもって説得力のない私‥。ルルクさんが小さくため息を吐いて、


「‥服だけ借りられるか?」

「もちろんです!さあさあ、案内しますのでどうぞこちらに‥」


執事長さんはパッと顔を明るくさせると、早速私達を屋敷に案内してくれた。

シヴォンさんを乗せた馬車の後ろを付いていったけど、ものすごい門構えに、豪華なお庭、奥には邸宅‥と、ルルクさんとそれはもう目を丸くした。



「‥ここって、すごい別荘地だったんだ‥」

「レトが言ってたが気候が安定していて、その上王都からほどほどの距離だから別荘地に最適らしいな」

「‥‥3年も住んでたのに、知らなかった。そういえば気候は安定してた」



私の言葉にルルクさんが小さく笑った瞬間、またくしゃみが出た。

うう、やっぱり冷えるかも?と、ルルクさんが突然私のお腹に手を回し、自分の方へぐっと引き寄せる。


「ちょ、ルルクさん?!」

「‥体が冷えてんだろ。もう少しくっ付いておけ」

「お、お構いな‥クシュン!!」

「‥ったく、言ったそばから水に突っ込む奴がいるか‥」

「す、すみません‥」


危険なことなんてしない!

なんて言ってたのに、速攻でやらかしてしまった‥。

でも飛び込もうとする人を見たら、止めようとするのが人ってもんじゃないの?私だけ??



と、大きな邸宅の門の前には先に戻ったのか執事長と呼ばれた男性が立っていた。



「ようこそおいで下さいました。さ、すぐに係の者が案内しますので」

「あ、ありがとうございます」



大きな扉を門番の人が開けてくれると、中にはクラシックな黒いメイド服に身を包んだ女性達がすでに6人並んでいて、目を丸くする。わ、わ〜〜〜!!!懐かしいけど、全然家よりレベルが上のお宅だ‥。


チラッとルルクさんを見上げると、ルルクさんもちょっと驚いた顔をしていた。だよね、驚いちゃうよね。私は思わずルルクさんのシャツの裾を握ると、すぐに気付いたルルクさんが眉を下げて笑う。


「‥お前でも緊張するんだな」

「そりゃしますよ‥」


豪華過ぎて‥ってのもあるけど、なにせ相手は攻略対象なのだ。

今回だって恋愛フラグはノーセンキューなのだ。

と、私の後ろから入ってきたシヴォンさんは両脇に騎士さん達が守るように立っている。お、おお、厳戒態勢だな。



一体なんでそんな風になってしまったのかと思っていると、シヴォンさんが突然倒れた。



「わ、わーーー!???」

「シヴォン様!!」

「い、いかん!!すぐに医者を!!」

「しばらく食事もろくに摂っておられないから‥」



食事も食べてないの??

私は執事長さんを見て、


「あの、私は紋様師なんですが、せめて体力の回復の紋様を描きましょうか?」

「え?!あ、で、でも魔術を使えますか?」

「いえ?魔術は使えなくて‥」


なんで魔術を使えるか聞いたんだろ。

だけど私は生憎魔力はあっても、魔術は使えないへっぽこ紋様師です。

執事長さんは私の言葉にホッと胸を撫で下ろした。


「では是非お願いします。もうとにかく何にでも縋りたい状況なので‥」

「ルルクさん、私のカバンに‥」

「はいはい、紋様の道具が入ってるんだろ」


騎士さんがすぐそばの部屋に、まだびしょびしょのままのシヴォンさんをものすごく高そうなソファーに横たわらせる。未だ真っ青な顔のシヴォンさんを見ると流石に攻略対象だけど心配になる。



急いで手首に紋様を描こうと、手首の袖をまくった瞬間、目を見開いた。

黒い文字がまるで書き殴られたようにシヴォンさんの手首にあって‥、私はそれをもう一度まじまじと見た。執事長さんは申し訳なそうに眉を下げ、



「その「呪い」は、魔術を使う者にとっては恐ろしい言葉のようで‥それを刻まれてからシヴォン様は魔術が使えなくなってしまったのです」

「そんなことが‥」

「王都の魔術師団で華々しく活躍するはずだったのですが‥」



私は口をポカンと開け、それからまた手首の文字を見た。



それは確かに日本語で、



『魔術禁止』



と、書かれていたからだ。





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