恋愛ゲームのシナリオ分岐がわからない。
お昼のスープを美味しく頂いて、結構たんまり作ったので夜にも食べようと話すと、ルルクさんは最早私の言葉に反応せず小さく頷くだけだった。暗殺者の反応、薄いなぁ。
「さて、私は明日ギルドで仕事なんで、これから薬草を薬に漬け込んできますね。お皿は洗っておくので、ルルクさんはソファーで寝てくださいね」
「‥ああ」
チラリとルルクさんを見上げると、静かに椅子から立ち上がり、ソファーにサッサと寝転んだ。‥暗殺者なのに、信用はしてないけど警戒はしてないのか?まぁ、どっちにしろそれでもいいや。私はあまり音を立てないようにお皿を洗うと、作業場へ行って早速薬草を液体に漬け込んで、魔石なんかを入れて色付けしていく。
明日は近所の魔石を探しにギルドの人達がいくらしいから、やっぱり怪我軽減とか、身体強化的なのがいいかな…なんて思いつつ、男性も多いので紺色や深い緑、黒なんかを多めに作る。できれば可愛いのを描きたいけど、それはいやらがられるし、腰痛とかリウマチの酷いお婆ちゃん達にとびきり可愛く描く事でこの気持ちは収めよう。
なんだかんだと、準備を終えてふと外を見ると‥真っ暗だ!!
「え!??夕方通り越してる??!」
急いで時計を見ると、7時!!
ぎゃあ、夕飯の時間過ぎてる!!
慌てて作業場から飛び出して、ルルクさんのいるリビングのソファーを見ると、ルルクさんが目をギュッと瞑って体を縮こめている。
「え?ど、どうして‥」
お昼まで元気そうだったのに!
慌てて駆け寄って、そっと額に触れるとものすごく熱い!
もしかして回復するようにって書いたから、体が頑張っちゃってる??それとも細菌が悪さしてる?どっちにしろ紋様をまた描いた方が良さそうだけど‥。
「ま、まずは解熱!!えーと、タ、タオル!!」
桶に冷たい水を入れて、タオルを浸して汗を拭くと、少しだけ息が落ち着いたけれど、両手をギュッと握って苦しそうにしているのは変わらない。急いで、作業部屋から筆と作りたての液体を持ってきて、ルルクさんのまだ何も描いていない手の甲に触れた。
「ルルクさん?熱が酷いから、紋様を描きますね。ちょっとだけ動かないで下さいね」
私がそう言うと、ギュッと瞑られていた瞳が少しだけ開く。
コバルトブルーと、緑の瞳が私をじっと見つめたかと思うと、小さく頷いて、またすぐ瞳を瞑った。
大丈夫‥かな?
私は咄嗟に持ってきた液体の色を見て、ちょっと後悔した。
よ、よりにもよってお婆ちゃんように作った可愛い黄色だ〜〜〜!!でも、今はすぐにでも描いた方がいいだろう。
ちょっと迷って、
『解熱』
『痛み軽減』
と、小さく日本語で書いた。
そうしてそれがあたかも模様ですよ〜〜とばかりに蝶の模様のようにした。
「‥お花に蝶々って、可愛い過ぎたかな‥」
でも、ほら痛いの痛いの飛んでいけ〜〜的で、いい‥よね?
155の私からしたら、かなり大柄の筋肉のしっかり付いた屈強そうな男性にかなりファンシーだったかもしれない‥。そう思いつつも、花も書き足してしまう私。だって、蝶々って花の側で飛ぶし。
描き終えると、ふわりと金色に文字が光り、すぐ消えた。
よし!完成!そして看病だ!!
筆と液体を片付けて、また汗をタオルで拭う。
というか、暗殺者のルルクさんはどこから来たんだろう。
それでもって、なんでこんな傷ついてたんだろう。
ゲームの中では怪我とは無縁!屈強!強い!って感じだったのに‥。
今更ながらにそんな事を考えつつ、少しずつ息が落ち着いてくる寝顔にホッとする。だって、やっぱり苦しそうな顔は見ているのは辛いし。‥例え、ゲームの中では豪快に私の首を切っていた相手でも、多少!多少はね?
「‥一体、どこのルートに行けば私は生き残れるんだろ」
天国のお父様、お母様、ユキは本当に皆目検討がつきません。
いつの間にか静かに寝ていた暗殺者のルルクさんを見ていた私は眠くなって、思わず床に横になると、元貴族だったにも関わらず情報量の多さに疲れたのか、そのまま気持ちよーーく眠ってしまった。
…まぁ、前世は一般人だったし。
そういうこともあるよね。
分岐ルート、いつも迷う‥。