表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
恋愛ゲームのシナリオはログアウトしました。  作者: 月嶋のん
恋愛ゲームのシナリオはログアウトしました。
68/249

恋愛ゲームの主人公はフラグを知らない。


アレスさんには、白い鳥を。

タリクさんには、魔石を。

それぞれ描くと、二人は嬉しそうに手の甲と腕を見て、嬉しそうにしてくれて‥、私はそれを見るだけでまた嬉しくなる。



「ユキさん、ありがとうございます。僕はこれで今日もまた調査に楽しんで行けます!」

「え、今日も調査なんですか?」



毎日すごいなって思って驚くと、アレスさんがじとっとタリクさんを睨む。


「‥タリクだって働き過ぎだ」

「僕はちゃんと寝ているし、食べているし、休んでいるよ?アレスは?」

「‥‥ここ2日はちゃんと休んでいる」

「それでも隙あらばお菓子を作ろうとしているだろう?言っておくけど、僕のいる間は仕事はダメだからね!!」


ほんわかしているタリクさんが珍しくビシりとアレスさんに言い放つ姿は、なかなか面白い。私が思わず吹き出すと、アレスさんが「‥笑わないように」と照れ臭そうに言ったけど、今は無理だと思います。



「さて、じゃあアレス一旦家に戻ろうか」

「‥ああ」

「それじゃあ、ユキさん、ルルクさんまた!今度はお祭りで」

「あ、はい!ありがとうございました!」



二人がギルドの扉まで歩いていくのを見送っていると、ふとアレスさんが足を止めて私達の方を振り返る。



「‥‥今日もお願いします」



ちょっと赤い顔でそういうと、プイッと前を向き直してタリクさんを押しのけて外へ出ていった‥。私とルルクさんはそんなアレスさんを見て、ちょっとぽかんとした。


「‥随分と変わりましたね」


思わず私が呟くと、ルルクさんが小さく吹き出した。



「誰かさんのお陰だろ」

「‥もしかして私のこと言ってます?」

「俺じゃないことは確かだな」

「でも私、クッキーは作ってませんよ?ほぼルルクさんじゃないですか」



どう考えたって、ルルクさんの方が功績は大きいと思うんだけど?

しかしルルクさんは私の言葉にはぁっとため息を吐いて、


「‥‥奴が段々と哀れになってきた」

「え?哀れ??なんで!何かしちゃいました??私」

「‥いや、お前はそのままでいい」

「ええ、そんな消化不良な‥」


じとっとルルクさんを見上げると、ルルクさんは指の腹で私のおでこをコツンと突くと、


「まずは弁当だ。腹が減ってはなんとやら‥だろ」


可笑しそうに私を見て、目を細めるルルクさんを見ると、もうちょっと言いたい言葉が喉の奥へ戻っていってしまう。ぐうっと唸ると、吹き出したルルクさんが頭にポンと手を置いた。



「今日の弁当は卵とハムのサンドイッチだ」

「え、美味しそう」

「しかも高いチーズが入ってる」

「さ、片付けてお弁当にしましょう!」



テキパキと片付けをする私をルルクさんも手伝ってくれたけど、まぁ、アレスさんが良い方向に変わってくれたなら、それはそれでいいか‥と思い直して、お昼ご飯のことを考えるべく頭の中を切り替えた。‥ちなみにお弁当は今日も美味しかった。暗殺者の腕がどんどんレベルアップしている気がする。



お弁当を食べ終えて、私とルルクさんはいそいそとタリクさんの別荘へ急ぐ。

あんな風に待ってるなって言われたら、ちょっと足も早くなっちゃうな‥なんて思っていると、不意にルルクさんが足を止める。



「ルルクさん?」

「‥‥なんでもない」

「本当ですか?またサラマンダーとかじゃないですよね?」

「そんな何度も出ないだろう」

「そうだといいんですけど‥」



なんて話してたら、私達の後ろからギルドの剣士さんが馬に乗って大慌てでこちらへ駆けてくるのが目に入った。



「何かあったんです?」

「良かった!!ユキちゃん、ルルク!!そこの街道で狼の魔物の群れが出たんだ!すぐに町へ一旦戻ったほうがいい!」

「「え」」



狼の魔物の群れ?

サラマンダーじゃないけど、ここへ魔物の群れって珍しいな。

驚いていると、ルルクさんは私を見て、


「町へ戻るより、タリクの別荘の方が近い。そこで待ってろ」

「え、ルルクさんは?!」

「手伝いに行ってくる。群れは危険だ」

「それはルルクさんも同じですけど?!」

「‥祭りが近いだろ」


なんてことないようにサラッとルルクさんが言ったけれど、確かに‥。

貴族様が来るお祭りの会場近くで魔物が出たらアレスさんが作ったお菓子だって売れなくなってしまうかもしれない。でもルルクさんだって危険なのに‥。



そろっと手を伸ばして、ルルクさんのシャツの裾を少し引っ張る。



「‥蝶を描いたんだから、ちゃんと帰ってきて下さいね」



私の言葉にルルクさんは目を丸くしたかと思うと、ふっと眉を下げて笑った。

たったそれだけなのに、その笑顔にぎゅっと胸が苦しくなって、私はシャツの裾を握りしめてしまった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ