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恋愛ゲームのシナリオはログアウトしました。  作者: 月嶋のん
恋愛ゲームのシナリオはログアウトしました。
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恋愛ゲームの主人公、舌だけは確か。


まさかの契約書をレトさんに作られてしまって、断る退路を断たれてしまった。

だけどいつもレトさんに散々お世話になっている身。困り果てたレトさんのお願いをどうして断れよう‥。打ち合わせを終え、高台のいつものベンチにルルクさんと座ってサンドイッチを食べるけれど‥、



「気が重い‥」

「もう?早いな」

「だって料理も得意じゃないのに、お菓子なんて絶対失敗しますよ?」

「‥そうだろうな。パンケーキに挑戦していたと思ったら、焦げた平べったいのが出来たもんな」

「うううう‥!!」



ルルクさんのサンドイッチを食べつつ、私は涙目になる。

なんでこんな不器用なんだ‥。泣きたい。でもサンドイッチも美味しいから食べたい。


「‥泣くか食べるかどっちかにしろよ」

「うう〜‥、失敗しちゃったらどうしよう」

「食べちまえばいいだろ」

「そ、そんな事‥‥、いいかもですね」


ルルクさんの提案に思わず涙が引っ込むと、ぶっとルルクさんが吹き出した。



「‥お前は退屈しないな」

「失礼ですねぇ、これでも私は繊細なんですよ?」

「繊細ねぇ‥」

「あ、なんですか、その疑いの目は‥」

「まぁ、ともかくタリクの別荘に顔合わせに行くんだろ?しっかり食べておけ」

「はーい‥」



嗚呼!!なんでよりにもよって攻略対象に自ら会いに行ってお菓子を作りにいかないといけないんだ!フラグなんていらないってのに!!恋愛ゲームの主人公なのに、本当に矛盾してると思うけれど、私は死にたくないんだ。なにせ横には暗殺者のルルクさんもいるし‥。



と、ルルクさんが私を見て、ふっと笑う。



「まぁ、焦げないように手伝うから安心しろ」

「‥喜んでいいのか、落ち込むべきなのかわからないけど、今はとにかくお願いします」



恋愛ゲームの主人公、ここは怒るところかもしれないけれど、現在の私は料理が下手なのだ。焦がすし、塩っぱくなるし、食材をダメにしてしまうのだ。そこはもう諦めるしかない‥。くっくと静かに笑うルルクさんを睨んでから、私は残りのサンドイッチを口に放り投げる。



そうだ!

ひとまず恋愛回避!

そしてお菓子作りを手伝って金貨ゲットだ!グッと拳を握って私は気合を入れた。



‥んだけど、でっかいタリクさんの買ったという別荘に行くと、仏頂面のアレスさんがでっかいキッチンで眉間にシワを寄せてタリクさんと睨み合ってる。


‥えーと、帰ってもいい?

そう思っていると、アレスさんが私達をジロッと睨み、



「‥私は手伝いなど要らないと言ったのだが?」

「そうは言っても、あの注文数じゃアレス一人では無理だろう?メイド達にも手伝わせないというし‥」

「だからといって他の奴を頼んでも変わらないだろうが!」

「でも注文に間に合わなかったら?それこそアレスが困るだろ」



いつになく真剣な顔で言い聞かせるようにタリクさんがアレスさんを説得してる。

お、おお‥、なんか先生が先生してる。

でもこのまま私は帰ってもいいけど‥なんて思っていると、タリクさんが私の方を振り返る。


「ユキさん、先日お渡ししたクッキーの味はどうでしたか?」

「え、とっても美味しかったです!見た目も素敵で‥」

「そうですよね?ほら、アレス。君の実力は確かだよ」


にっこりとタリクさんがアレスさんに言ったけど‥、もしかしてあのクッキーはアレスさんが作ったの??!てっきり文官をしていると思ったのに、まさかのパティシエに転身??目を丸くしてアレスさんを見ると、アレスさんがジロッと私を睨む。



「‥嘘なんてつかなくていい」

「いえ、美味しい物は素直に美味しいと言います」

「は、はぁ!?」

「私は料理は大変不得意ですけど、美味しい物だけはちゃんとわかります。クッキー美味しかったです!」



はっきりと言うとアレスさんは目を丸くしているし、タリクさんは可笑しそうに笑い出す。


「ふふ、やっぱりユキさんに頼んで正解でした!ね、アレス。意地を張ってないで手伝って貰いなよ。僕も君のクッキーの大ファンなんだから」

「‥‥だが、もしレシピを盗まれたら」

「こいつは料理は下手だ。盗んでも作れない」

「ちょ!!ルルクさん、大概失礼ですよ!!」


本当のことだけどさぁ!言い方ってものがない??

しれっとした顔で失礼なことを言ったルルクさんを睨み上げるけれど、ルルクさんは可笑しそうに私を見下ろすだけだ。タリクさんがそんな私達を見てクスクスと笑い、



「この二人はそんな事をしないと僕が誓うよ。アレス、今回のクッキーが評判になればお菓子職人としても胸を張れるんだろう?頑張ろうよ」

「‥‥わかった」



タリクさんの言葉にようやくアレスさんが頷いたけど‥。

ちょっと待て!!結構重要な機会なんじゃないの??そこに料理が超絶苦手な私がお手伝い?!私はルルクさんをそろっと見上げると、静かに頷き、



「失敗したら食え」

「いやいや絶対それダメなやつ〜〜!!」



小声で叫ぶとルルクさんがぶっと吹き出した。

笑ってる場合じゃないってば〜〜〜!!




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