恋愛ゲームの主人公、後先考えず。
ルルクさんにハンモックを買えて、私は大変大満足である。
だってルルクさんにいつもしてもらっている事のが、絶対的に多いし‥主に料理面。毎回美味しい上に、ちょこちょこと私では買えないちょっとお高い食材なんかも食べられて、幸せしかない。すみません‥お財布事情によりそこは甘えまくってます。
タリクさんからメモ帳をもらって、それなら私もルルクさんに何かプレゼントをしようって思ったけれど、なかなか良い選択だったと思う。
作業部屋をササっと片付けて、自分の部屋にある程度道具を運んだら、ルルクさんが部屋の柱に金具を打ち付けてハンモック設置完了である!落ち着いた黄色のハンモックが部屋に浮かんでいるのを見て、ちょっとワクワクしてしまうのは私だけではない‥よね?
チラッとルルクさんを見上げると、ルルクさんはハンモックをちょっと広げて、
「乗ってみるか?」
「え、そ、そんな一番はルルクさんで‥」
「買ってくれたんだから、寝心地確かめてみろよ」
「そ、そうですか?」
ええ〜〜??そう言われたら乗っちゃうよね?
実は興味はあったけど、前世では乗ったことがない私は早速ハンモックに座ってみる。体をハンモックに預けるとふんわりと足が浮いて、ユラッと揺れる乗り心地に私は知らず笑顔になる。
「ルルクさん!これ、いいですね〜〜!」
「そうか」
「うわ〜〜、これはちょっとクセになりそう‥。すぐ寝られますよ」
「お前が寝てどうする‥」
呆れたようにルルクさんに言われて、確かに‥と、体を起こそうとすると、後ろに手をついたせいで引っくり返りそうになる。
「わわ!!」
「っユキ!」
ルルクさんが私の腕を引っ張ってくれたけど、私とルルクさんはハンモックの中で折り重なるようになってしまって、目の前にルルクさんの顔があって、私は目を丸くした。
顔が赤くなるのがわかって、どうにか動きたいのにルルクさんの重みで全く動けない!助けて!!死んじゃう!!!主に私の心臓が!!!
「悪い、大丈夫か?」
ルルクさんは顔色一つ変えず、体を起こすと私をハンモックから起こしてくれた。‥大人だ。顔色一つ変わってない。私なんて多分真っ赤だろうに‥。
「大丈夫、です‥。すみません、はしゃぎ過ぎて」
「‥別に。いつでも乗って遊んでくれて構わない」
「完全にお子様扱いしてますよね??!ルルクさんの為に買ったハンモックなんだから、ルルクさんが使って下さい!」
こっちは心臓が大変なことになってるのに!!
対象外で全然構わないはずなのに、そんな風に言われるとそれはそれで複雑なんて‥我ながら自分勝手だ。口を尖らせると、ルルクさんが小さくふっと笑う。
「髪、ぐしゃぐしゃだぞ」
「え、わわ‥」
「これ、ついでにやるよ」
「へ」
ルルクさんがズボンの後ろポケットから、小さな茶色の紙袋を取り出すと私に手渡してくれた。
「え、これって‥」
茶色の小さな紙袋には、さっき寄った雑貨屋のスタンプが押してある。
さっき買ってくれたの?そっと開けると、蝶の飾りがついた髪留めが入っていた。
思わず目を見開いて、そっと紙袋から取り出すと、
黄色の蝶が付いていて‥、それを見た瞬間、胸がぎゅうっと痛くなる。
あ、ダメ。
絶対ダメ。
蓋をしておかないと。
泣きたくなるくらい嬉しいのに、私は自分の気持ちを必死で抑え付けて、蝶の髪留めをそっと撫でた。
「‥お礼をしたいのに、」
「‥俺は負けず嫌いだからな」
「知ってます。くそ、またやられた‥」
ちょっとからかうように言うと、ルルクさんのコバルトブルーの瞳は柔らかく細められた。ああもう!ずるくない?暗殺者!!人の心にどんだけダメージを食らわせてるかなんて知らないんだろうなぁ。
後ろの髪を半分持ち上げて、ササッと髪を結ってみた。
「どうですか?蝶々、ちゃんと前に出てます?」
体の向きを変えて、ルルクさんに髪留めを指差すと、ルルクさんが私の髪に触れた。
「‥もう少し、こっちだな」
ルルクさんの声がやけに頭の中に響いて、髪留めを動かす気配に胸がギュウギュウに痛くなる。あ、アホか私は!!自分からダメージ受けに行ってどうするんだ!!自分に呆れつつ、なんとか頭の中で違うことを考えようとしていると、ポンと頭に手を置かれた。
「出来たぞ」
「あ、ありがとうございます‥」
きっと顔が赤いであろう私。
どうやって前を向こう‥、ちょっと悩んだけど、そっと後ろを振り向くとルルクさんはハンモックの方へ歩いて、おもむろに寝転んだ。
「‥寝心地、確かにいいな」
「そ、そ、そうでしょう!?」
良かった〜〜!!!
顔見られなかった!!ホッと息を吐いて、すかさず同意したけれど‥、ハンモックの中でルルクさんがどんな顔をしていたのかは結局見られなかった‥。




