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恋愛ゲームのシナリオはログアウトしました。  作者: 月嶋のん
恋愛ゲームのシナリオはログアウトしました。
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恋愛ゲームだから何でもできるわけじゃない。


パン粥を作って、ルルクさんに手渡すと静かに口に運んで食べていた。

そりゃね、ずっと見てたし。毒の混入もないし、安心して食べるでしょうよ。ちっとも信用されていない事実に心がささくれつつ、まぁ殺し、殺される仲だし‥と思い直す事にした。


あと普通にパン粥久々に作ったけど、美味しくできたし。

普段の私は料理が大変下手なんで、大体まずい。誰だ?恋愛ゲームの主人公が皆、お料理が上手だなんて思ってはいけない。私は下手だぞ。


今日は渾身の作だ!もぐもぐと向かい合って食べていると、ルルクさんが私をじっと見つめる。


「‥お前、警戒心はないのか?」

「一応ありますよ」

「その辺に捨てただろ」


おじ様なら捨てましたけどね。

美味しくできたパン粥を味わいつつ、


「まぁ、ルルクさんは大丈夫でしょ」


なにせ紋様もきっちり働いてるし。

今のところ出会っただけで、何も問題ない…と思いたい!!

ルルクさんは私をまじまじと見つめ、「やっぱり変わってる」ってボソッと呟いたけど、それ結構聞こえてますからね???


結構大量に作ったパン粥はあっという間に無くなった。

こりゃ、今日は食料も買ってこないとだなぁ‥。こんなデカイ体を維持するにはタンパク質大事だろうし。あ、いや、できるだけ早く家を出て貰うんだけども!



「じゃ、私は一旦買い物に行ってきますから、大人しく寝てて下さい。紋様を描いてはあるけど、ルルクさんの傷は結構凄かったんですからね?」

「‥別に、すぐ治る」

「そんな唾つけときゃすぐ治るレベルじゃないでしょ?はい、寝て寝て!鍵は閉めておくんで、お客が来ても居留守使って下さいよ?」



ソファーを指さすとルルクさんは渋々といった様子で座る。

よ、よし、言うこと聞いてくれて良かったー!買い物籠とお財布を手に取ると、私は玄関のドアノブに手を掛けてから、もう一度振り返って、



「絶対体を休めて下さいね!」



と、念を押すように言い含めてから鍵を閉めてダッシュで買い物へ向かった。

だって服も食料も何もないし!

お金は今私が持っているのが全財産だし、万が一持ち逃げされても困る物といえば、紋様に使う筆かな?でもあれ散々使ってるからなぁ…どうせ売れないだろうと思いつつ買い物をしていく。


家に戻ったらもしかして出て行ってしまった後だった‥という可能性もあるけど、まぁ下着はともかくシャツはウエスにでもすればいいやと、安めのシャツをいくつか買って、ドキドキしながら家に戻った。



できれば殺されたくないので、どっかへ行っててくれますように!

そう願っていたのに、そっと扉を開けると我が家の古びたソファーに長い手足が収まり切らず飛び出したまま、静かにルルクさんが寝息を立てていた。


寝てるのかーーい!!!


いや、いいんですけど?シャツとか下着とか無駄にならなかったし?

そう思いつつ、足音を立てないように静かにルルクさんの側まで歩いていき、その寝顔を見つめた。


うん、見れば見るほどイケメンである。

このイケメンに私は首を気前よく切られていたのかーと不思議な気分である。でも恐らくゲームをしていなければきっと出会わなかったと思うと、複雑だ。良い子の皆は不穏なゲームはくれぐれもプレイしない方がいいぞ!と叫びたい。



「ひとまず薬草集めておくか」



明日はギルドへ紋様入れるから、薬草を多めに用意しておかないとだし。立ち上がって庭へ行こうとすると、ルルクさんが動いて、シーツがズレて肩が見えた。ケガしてるし、寒くて風邪まで引いたら困るしなぁ。自分の部屋の棚から少し厚めの毛布を持ってきて、そっと肩に掛ける。よし、これで大丈夫だろう。



外へ出てあれこれと薬草を摘んでいると、ふと先日ギルドに来た剣士さんに赤い染料で「力」ってこっちの国の言葉で書いたら「可愛すぎる」って言われたのを思い出した。そういえばルルクさんはあの花だらけの紋様に「可愛いすぎる」とは言わなかったな。「変わった奴」とは言ってたけど。あれ?やっぱり気に入らなかったのか??


どっちにしろ私の首をポンポンはねていた暗殺者にどう思われてもいっか。


薬草を摘み終えたらそっと扉を開けて、静かに寝ているルルクさんを見てホッと息を吐く。よかった・・そのまま寝ててくれ。そろそろと足音を立てないように歩き、薬草をキッチンでよく洗い、平たい籠に並べて天日干ししてお昼ご飯の準備だ!



ちょっと大きなお肉の塊を買っておいたので、これで‥何作ろう。

レシピもないのに料理下手、詰んでいるな。スープとかにすれば、なんとかいけるかも?



ドスドスと、とても料理を作っているとは思えない音が出てるが、まぁ作れれば問題ないでしょう。そう思っていたらいつの間にかルルクさんが怪訝な目つきで私の後ろに立っていた。

音もなく背後に立つな!ビビるんですけど!?



「何をしてるんだ?」

「料理ですけど」



そういうと、ルルクさんは疑いの目で私をじとっと見た。本当なのに。






今回、お料理できない女子です。

そして私は一人ならできる限り作りたくない女‥。

今日の夕飯はプロテインです。

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