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恋愛ゲームのシナリオはログアウトしました。  作者: 月嶋のん
恋愛ゲームのシナリオはログアウトしました。
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恋愛ゲームなのに魔物を再び!


ゴツゴツした魔石を紋様にするのは流石に難しいので、宝石の絵を描いて、その周りに回復を促進する紋様を包むように描いた。


タリクさんはそれを感心したように見つめ、


「素晴らしいですね‥」


と、しみじみと言うと、私に柔らかく微笑みかける。

魔石好きな先生には堪らないデザインでしょ?私も釣られて笑う。



「傷が治るまで、紋様は消えないのでお楽しみ下さい。あ、怪我はあくまでも回復を手助けする為のものですから、無茶はしちゃダメですよ。傷の炎症、化膿もしないように描いておいたんですけど‥」

「そんなことまで出来るんですか?すごいですね‥」

「勉強しましたからね。それこそ私も紋様を描くのが好きなので」



私の言葉に先生は目を丸くすると、静かに頷いた。


「‥そうですね、好きな物を好きだという気持ちは大事にしないとですね」

「そうですよ。大事にしましょう」


さっきはなんとなく頑張って笑っていた様子だったけど、今はゲームの中で見ていた何時もの微笑みに私もホッとする。


「ああ、そうだ。白い魔石を見つけていくつか持ってきたんですが、ユキさんは見たことはありますか?」


タリクさんがすぐそばにあった布の袋から白い魔石を取り出し、私はギクリと思わず体が強張る。わ、わああ!!恋愛フラグの元凶〜〜〜〜!!回避!回避!!



「い、いえ‥、私も初めてで」

「‥そうですか」

「すみません、お役に立てなくて」

「いえ、紋様師といえば色々魔石を使って紋様液を作ると聞いたことがあったので‥、とりあえず聞いてみたんです。気になさらないで下さい。あ、そうだ良ければ少しお持ち下さい」

「え、いやいや、そんな貴重な物を‥」

「今日の素敵な紋様代です」



う、そう言われると断れない‥。


「じゃ、じゃあ、少しだけ?」

「良かった。ではこれを、」


結構な大きさの魔石を私の手の上に乗せてくれたけど、本当にいいのだろうか‥。



と、ズシン!!と、地響きがした。



「‥え?」



なに?

地響きがした方を見ると、洞窟の入り口だ。

瞬間、ルルクさんが舌打ちをして、剣を素早く抜いた。



「‥やっぱり出たか」

「もしかして、またサラマンダーですか!?」

「さあな。だが、大きそうだ‥」



ギルドの剣士さん達も急いで剣を構え、私は慌てて仕事道具と石を籠に放り込む。


「‥おい、そいつと一緒にもう少しここから離れろ」


ルルクさんが洞窟に体を向けつつ、チラッと私とタリクさんに視線を送る。


「わかりました!タリクさん、立てますか?」

「‥ああ、」


ちょっと顔を歪めつつ、一人で立ち上がろうとするタリクさんの腕の下にサッと腕を差し込み、立ち上がれるように手伝うと、タリクさんがちょっと驚いたように私を見つめた。



「‥慣れているんですね」

「いえ、緊張してます!」

「ふふ、そうですか。それなら良かった‥。僕だけ緊張してるのかと思いました」



ほんわかと微笑む先生‥。

そうじゃないって〜〜、今は一刻を争う時だって〜〜。

でも、そのほんわか懐かしい‥。私まで思わず笑ってしまうと、



「‥ユキ」



ルルクさんに名前を呼ばれて、振り返る。

珍しいな、名前を呼ぶなんて。


「はい?」

「‥‥転ぶなよ」

「もう!大丈夫ですってば!」


こんな時までそれかーい!

ちょっと口を尖らせると、ルルクさんが小さく笑った。

まったく、どれだけ私をドジっ子だと思っているんだろう‥。なんとか踏ん張ってタリクさんと一緒に洞窟の入り口から離れた途端、ズシン、ズシンと洞窟の中から地響きがする。



お、おいおい、前回よりなんかやばい感じじゃない??

私とタリクさんは思わず洞窟の入り口をじっと見つめると、暗い中から二つの黄色の大きな瞳がギョロッと光った。



「ひゃあああああ!!??」



思わず声を上げると、洞窟の中からグォオオオオオオ!!と、大きな鳴き声を出しながら、前回見た時よりも大きなサラマンダーが出てきたけれど、これやっぱり竜じゃないの??と目を見開くと、タリクさんがサラマンダーを見て、



「え、竜??!」



と声を上げた。

ですよね!そう思いますよね??

でもあれ、本来はもう少し小さいはずのサラマンダーだそうです!

あと焼いても煮ても美味しいやつです!って、思ったけど今は絶対そうじゃないよね?



そのサラマンダーを見上げて立っているルルクさんの後ろ姿を見て、胸がドクリと鳴った。死亡フラグは回避したいけれど、ルルクさんだって回避して欲しい。


「ルルクさん、気をつけて下さいね!」


そう叫ぶと、ルルクさんはちょっと驚いた顔をしたかと思うと、いつものように、ふっと笑った。





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