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恋愛ゲームのシナリオはログアウトしました。  作者: 月嶋のん
恋愛ゲームのシナリオはログアウトしました。
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恋愛ゲーム、目指せフラグを回避!


30分ほどの距離をルルクさんと馬に乗って行ったけれど‥、私の心臓はどうやったら落ち着くのかわからなかった。


うう、なんで攻略対象が現れたこのタイミングで色々気付いちゃったんだろう。

泣きたくなるようなタイミングの悪さに、思わず天を仰ぎ、ゲームの製作者絶対許さない‥と呪った。



と、林の中を抜けた先に小高い丘があって、その麓に白いタープが目に入った。


「あそこか」

「大丈夫、ですかね‥」

「ギルドまで運び込まれてないし、そこまでじゃないだろ」

「そっか‥、まずは怪我を見ないとですね」


ルルクさんの言葉のお陰で心臓がちょっと落ち着いた。

よし!!切り替えて仕事を頑張らないと!

馬で近付いていくと、大きなタープの下に何人かが行ったり来たりしている様子が目に入る。と、いつもギルドで紋様を描いている剣士さんが私とルルクさんを見て、ちょっと驚いた顔をした。



「お疲れ!早速来てくれたのか」

「あ、はい。レトさんに言われて‥、あの怪我人は?」

「そこのタープの下で休んでる。怪我は左腕と左足。打撲と切り傷だな。ただ、傷口に魔石が入り込んでかなり痛そうだ」

「え‥」

「あんまり見たことのない白い魔石だったんだよなぁ」



白い魔石‥。

瞬間、ゲームでタリクさんのストーリーを思い出す。



白い魔石はそれまでどんな効能があるか知らなくて、それを先生と私で研究しながらルートを進めていくと、「光」を発する力がある物だってわかったんだっけ。今はこの世界の光‥ならぬ照明は特殊な魔道具でしか補えなくて、独占状態の販売先から結構な値段をする照明道具を買っていたけれど、魔石の発見をきっかけに大きく変わっていく‥っていう流れだった。



まぁ、それで先生が「貴方という光が私をこれからも照らしてくれませんか?」って、卒業後プロポーズするんだっけ‥。光だけになーー!って、ツッコミつつ照れまくった記憶まで思い起こされて、ちょっと恥ずかしい‥。


って、待って!!!

恋愛ゲーム、もしかしてシナリオ回収に来たのか??


だってトニーさんからは火の魔石を渡されたのに、ここへきて白の魔石?洞窟から、そんな違う魔石って出てくることあるの??だとしたら、どうやってフラグを回避すればいい‥?グルグルと頭の中で考えていると、



「おい、降りるぞ」

「あ、はい!!」



ルルクさんがヒラッと馬から下りて、また私の体をヒョイッと持つと、そっと地面に下ろしてくれた。


「‥ありがとうございます」

「どういたしまして」


しれっとした顔のルルクさんにお礼を言ったけど、くそ‥格好いいなって思っちゃったじゃん。‥しっかりしなきゃいけないのに!気をしっかりもてい私!!顔を上げて、タープの下へ急いで仕事道具を持っていくと、タリクさんがちょっと驚いたような顔で私を見上げる。



「君は、昨日の‥。紋様師だったんですね」

「はい。よろしくお願いします!怪我は‥」

「先ほどギルドの人達に応急処置をして頂きました。‥いやお恥ずかしい。少しでも早く行きたくて張り切ったら、このザマで‥」



照れ臭そうに話しているけれど、腕と足の包帯が痛々しそうだ。

先生は結構自分の感情を外に出さず、自分の中にひっそり仕舞って笑う人だったけどやっぱり変わってないなぁ。痛そうにすればいいのに‥って思っちゃうけれど、それは先生なりのポリシーなんだろう。


私は手早く先生の前に膝をついて、仕事道具を並べる。


「魔石がお好きなんですね」

「え、ああ、そうですね。僕にはこれくらいしかなくて‥」


珍しく沈んだ声のトーンに、私は顔を上げる。



「これくらいって‥、好きなものがあるって素敵ですよ?」

「え」

「早く見たくて、調査したくて、ここへ朝早く向かうくらい夢中で打ち込めるものなんでしょう?これくらいしかないじゃなくて、これが好き!って言えるって格好いいなぁって思いますよ」



かくいう私も紋様を描くのは好きだ。

そして、デザインを気に入ってくれたり、助かったよって言われるのは嬉しい。だから夢中になって家事や料理がおろそかになってしまいがちなのは反省すべき点ではあるけど‥。


ちょっと驚いた顔をしたタリク先生‥、いや今はタリクさんに笑いかけると、タリクさんは慌てて俯いて、



「そう言って頂けると‥」

「まぁ、まずは怪我が回復する紋様を描いておきましょうね。何か描いて欲しい物とか、ありますか?」

「え、魔石の模様とかあるんですか?」



パッとタリクさんが顔を上げて、目をキラキラとさせている‥。

魔石好きは3年経っても変わらないなあ〜〜と思ったら、私は小さく吹き出してしまった。



「上手く描けるかはわかりませんけど‥、紋様と一緒に描きますよ」

「じゃあ、ぜひそれで‥って、すみません‥、つい」



顔をパッと赤くして、タリクさんは恥ずかしそうにしていたけれど‥、なんていうかゲーム越しとはいえ一度はプロポーズしてくれた相手が楽しそうにしているのはちょっと嬉しい。恋愛フラグさえなければ。




お婆ちゃんが「ガチのプロポーズは人生に一度か二度としかない。嫌いでもなければ一回結婚しとけ!」って。ごめーん、婆ちゃんちびっこにプロポーズされたんだけど、どうすればいい?

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