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恋愛ゲームのシナリオはログアウトしました。  作者: 月嶋のん
恋愛ゲームのシナリオはログアウトしました。
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恋愛ゲームの主人公の心臓の危機。


「おはようございます!!」


気合たっぷり、私はギルドの扉を開けると集まっていた洞窟調査の人達に挨拶をする。よしよし、最初の出だしは完璧だ!でもって、さり気なく調査隊の人達の中にタリクさんがいないかチェックする。



だって命大事だし!!

辺りを見回して、姿が見えないことにホッとした瞬間、カウンターの奥からレトさんがひょっこり出てきて、



「おう、ユキ!悪いんだけどな、今日調査に来た先生がもう洞窟に行ったんだけど、怪我したそうなんだ。悪いけどユキ、洞窟の方まで行ってくれないか?」


「いや、なんで!???」



思わず叫んだ。

だっていやなんで???

先に行ってたのに、怪我とか!まさかの洞窟まで出張とか!!恋愛ゲームの強制力かなんかなの??!


私の様子にレトさんが逆に「え、なんで???」って聞いて、ハッとした。いけない、仕事。今は仕事って思えばいいだけだ。恋愛フラグさえ立てなければいいんだ。しっかりしろ私。


小さく咳払いして、


「すみません、ちょっと驚いて‥。大丈夫です!行きます」

「お、そうか?まぁ無理すんなよ。えーと、じゃあ馬を用意するから誰かに乗っけていってもらって‥」


レトさんが周囲を見回すと、それまで話していた人達が突然手を上げて「俺、馬に乗れます!」「俺も得意です!!」と言い出して、思わず目を丸くする。そんなに皆乗馬が好きなのかな?



すると、ルルクさんの大きな手が私の頭の上にどさっと置かれた。



「‥俺が連れていく」

「ルルクさん、馬に乗れたんですか?」

「そりゃ仕事でやむなくな」

「そうなんですか!ええ、すごいですね〜」



まさかの乗馬ができるとは!

戦士って言ってたし、馬に乗って戦うなんてこともあったのかもな。

私が感心している横で、馬に乗れる!と挙手していた人達がそっと手を下ろし「チートすぎん?」「ズルすぎん?」って言ってたけど、え、そうなの?戦士ってやっぱり乗れないものなの?


ルルクさんをまじまじと見上げると、


「‥目玉焼きよりは簡単だぞ」

「いちいち!揚げ足を!取らない!!」

「ふ、」


可笑しそうに笑って、馬の用意をしてくれるレトさんに私とルルクさんはちょっと言い合いしながらついていく。ギルドの裏側の馬房には、昨日ぶりの可愛らしい馬達が餌を食べていて、私達がくると顔を上げて見つめてくる。可愛いなぁ。



「この馬なら大抵言うことを聞くから大丈夫だ。鞍はこっち。地図はこれなんだが、わかるか?」

「大丈夫だ」

「まさか馬にも乗れるなんて‥、ルルクお前本当ギルドで働かないか?」

「いや、これが落ち着いたらな」



ルルクさんが、これと、私を指差して言うので思わず睨んだ。


「私は落ち着いた大人ですけど?」

「‥花びらを頭にくっつけて、転びそうになる奴がねぇ」

「き〜〜!!もう、ああ言えばこう言う〜〜!」

「はいはい、先に乗ってろ」


言い合いをしつつ馬にテキパキと鞍を乗せたルルクさんに、ヒョイっと腰を掴まれて馬に乗せられて…、私は一連の流れに驚いて目を丸くする。手際良すぎない??驚いている私の後ろにルルクさんがことも無げに乗るので、私はもう目を見開くしかできない。



「なんだその顔は」

「いや、本当にこれって目玉焼きを焼くより簡単なことなのかな?って」

「‥お前には難しいだろうな」

「やっぱり難しいんじゃないですか!」

「お〜い、じゃあ二人とも頼んだぜ〜」



レトさんが呆れたように私達に声を掛け、私は慌てて返事をした。

そうでした、仕事でした!気を引き締めて前を向くと、ルルクさんが「行くぞ」と言うなり馬が歩き出す。前世なんて乗馬もしたこともない私にとっては、馬に乗ってどこかへ行くなんて初めてで‥、それだけでドキドキしてしまうのに‥、後ろにピッタリと密着しているルルクさんがいるんだよな〜〜〜!!



ドキドキしちゃうのは、もうしょうがないよね??

少しでも気が逸れるようにと、周囲の景色を見て自分の心臓を押さえつけようとすると、ルルクさんが私を支えるべく腰に回していた手が前にスルッと動いて、「もうちょっと後ろに体を倒せ」と言って自分の方へ引き寄せるので、心臓が弾け飛びそうになる。


うわぁああああああ!!助けてくれ!!

暗殺者に殺される!!主に心臓が!!!

ドクドクと胸の音が忙しなく動いて、どうしようと思っていると、


「おい」

「は、はい!!!!!」

「‥叫ぶな。ほら、右の方を見てみろ」

「え?」


ルルクさんの言う通り、右の林の方を見てみるとさっき見た白い花びらのついた木が風に揺れて、花びらが雪のように落ちている風景が目に入った。



「あれ、好きなんだろ」



恥ずかしくて後ろを振り返られない私だけど、低いルルクさんの声が優しく響いて‥。心臓が洞窟まで持ち堪えられるのか最早私にはわからなかった。




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