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恋愛ゲームのシナリオはログアウトしました。  作者: 月嶋のん
恋愛ゲームのシナリオはログアウトしました。
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恋愛ゲームなのに死亡ルート健在?!


まさかの攻略対象の一人、マリーベル学園の先生のタリクさん。


そうだった〜〜〜!!

魔石の研究、調査もしてるって言ったら先生でしたね!!10歳で飛び級して卒業。優秀な教師として学園で講師を務めてる傍ら、同じ年の王子の家庭教師なんかもしてましたね!!


私と恋愛ゲーム中、魔石を通して仲良くなった後は、普段はふわふわしているのに王子と仲良く話している私にヤキモチ妬いちゃうとか‥、スチルで萌え死んだのを思い出しましたわ!!!



「‥おい、大丈夫か?」



ベンチに座ったまま、完全に恋愛ゲームの世界を思い出して心ここに在らずの私に、暗殺者‥もといルルクさんが声を掛けられて、はっとする。


‥そうだった。

悪役令嬢がそんな私と先生を気に入らなくて、ルルクさんを速攻で派遣。首を切られそうになるんだけど、先生が必死に戦って庇ってくれたんだった。ルート次第では私の首が容赦無くぶっ飛んだけど。そんなことまで思い出しながら、私はどこか死んだ目で、


「大丈夫です」


って言ったけど、メンタルが主にやベー‥。

私、今日がもしかして命日なの??本格的にルルクさんが私の首を切りに来る日がカウントダウン始まっちゃった?って思ったら、もう胃がキリキリする‥。



そんな私をルルクさんはまじまじと見て、



「どう見ても大丈夫じゃないだろ」

「え、そんなに?」

「‥自覚ないのか」

「いや、もう、大丈夫です!‥多分」

「‥少し早いけど、飯、食うか?」



そう言いつつ、ルルクさんが今朝作ってくれたサンドイッチを袋から取り出した。‥まさかの100人勝負だったのにお弁当まで作ってくれた暗殺者。申し訳ない‥でも美味しそう。


タリクさんとは、どうせ出会っただけで今後は関わることがないからきっと大丈夫!そう無理やり思い直して、私はルルクさんが差し出してくれたサンドイッチを受け取る。断面が綺麗に切られていて、何と無く首がヒヤリとしたけれど、そこは深く追求しない事にした。



いただきます!と挨拶してから、パクッと噛むと、ハムとかチーズとか野菜の味がいっぺんにする!



「美味しい〜〜〜〜〜!あ、卵!卵も入ってる!」

「焦げてないやつな」

「もう!今度はちゃんと火加減を見て作りますよ」



と、言いつつ止まらない。美味しい!

もぐもぐ食べていると、ルルクさんが私の横顔をチラッと見て、


「まだあるぞ」


と、袋から出してくれた。

‥暗殺者、用意がいいなぁ。クスクスと笑いつつ、


「まだ食べてるから大丈夫ですよ。ルルクさんも食べてます?」

「‥食べてる」


大きな口でガブッとかぶり付き、ムシャムシャ食べ始めたけど、私より全然早く食べ切ってしまいそうだ。



美味しいサンドイッチを食べながら、さっき話したタリクさんを思い出す。

物語から3年経ってたから、当初よりもずっと大人びた顔をしていたからすぐに気付かなかったけど、なんでこの広い世界でまた出会ってしまったんだろう‥。恋愛ゲームのシナリオはすでに破綻したものだと思ってたのに、まさかの続行だったのだろうか。



ということは、まさかこれから王子と魔術師、文官、騎士と出会うことになるのか?死亡フラグを回避していかないと危険なのは変わりないってことだよね。だってなにせ暗殺者のルルクさんが私の真横にいるし‥、嗚呼!!!まだ死亡ルート健在って神も仏もこの世に本当にいるのか?!!



「‥おい」

「あ、はい!!」



ちょっと不機嫌そうにルルクさんに呼ばれて、慌てて返事をする。


「ど、どうしました?」

「口の端、付いてるぞ」

「へ?」


口の端?

何か付いてた?

口元を触って、確認しようとすると、ルルクさんが長い指で私の口の端についてたパンくずをヒョイッと取って、ルルクさんはあろうことかそれを自分でパクッと食べた。



「わ、わーーーーーーーーー!!!!!」

「声がデケェ」

「だ、だって、なんで食べ‥ちょ、ええ!??」

「‥ただ食っただけでなんだその反応は」



いや、恥ずかしいからだよ!!!

なに恋愛ゲームの定番みたいなことをしてるの???!

赤い顔でルルクさんを見上げて、口をパクパクさせていると、ルルクさんがぶっと吹き出した。


「‥間抜けヅラ」

「‥出るとこ出ます?」


この男は!!

私はジロッと睨むと、ルルクさんが私の顔を覗き込むように見つめ、


「まぁ、そんだけ元気なら大丈夫だな」


と、言うと大きな口で残りのサンドイッチを口に放り込んだ。

‥ええっと?


「‥もしかして元気付けようとしてくれました?」

「半分くらいな」

「なんですか半分って、あと半分はなんですか…」


私が横目でルルクさんを見ると、ルルクさんは不意に目を逸らして、



「さぁな」



と、言うとそのまま瞳を閉じてしまった。

なんだそれ‥、そう言いたいのに、半分は元気付けようとしてくれた気持ちがあったと聞いて、ちょっと胸の奥がソワソワとしてしまうのを誤魔化すように私は残りのサンドイッチを無言で食べた。




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