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恋愛ゲームのシナリオはログアウトしました。  作者: 月嶋のん
恋愛ゲームのシナリオはログアウトしました。
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恋愛ゲームの主人公なのに恋愛が怖い。


その晩は初めて飲むワインと、高いだけあって美味しいチーズと、パンとサラマンダーのお肉と‥、とにかくここへ来てから初めての豪華な食事に、私は心もお腹もはち切れそうだった。



「いっぱい食べたぁ‥。幸せ」

「食べただけで幸せなんてお手軽だな」

「‥全くどうしてそう言うかなぁ」



お皿を洗おうとしたらフラフラして危ないとルルクさんに言われて、結局ルルクさんが洗い物を、私が食器を拭く事になったけど‥、いいのかなぁ。そう思いつつも、ワインが結構効いてるのか私はふわふわした気分でお皿を拭いて食器棚に片付けると、ルルクさんの寝ているソファーにコテッと横になった。



「‥そこで寝るなら、ベッドに行け」

「そうなんですけど、そうなんですけど〜〜‥ふわふわする」

「‥思い切り酔っ払ってるな」

「あ、やっぱりこれが酔ってるんですね」

「念の為、水を飲んでおけ。二日酔いになるぞ」

「ふぁい」



ルルクさんは呆れた顔をして、グラスに水を入れて渡してくれて‥。お礼を言って受け取って、水をゴクゴク飲むと体が幾分楽になった気がする。


「‥大人になるって大変ですね」

「そうだな」


ルルクさんが小さく笑って、飲み干したグラスを受け取るとテーブルに置いてくれた。


「仕事も頑張らないといけないし、生活できるようにお金も稼がないとだし‥」

「今までもしてきたんだろ?」

「そうですけど‥、」


そう言いつつ、体を起こしてソファーに背を預けると、静かに横にルルクさんが座る。そうして、私を見て「それで?」と言うので、私は普段ぼんやり思っていることを言葉にする。



「‥以前は、もうちょっと不安定な中で生きてきたんです。それは今も同じですけど、その頃よりは今の方が落ち着いていますけど、私、これからもできるかなって‥」

「なぜ?」



恋のフラグが立つと、命を狙われる可能性があるから。

‥っては言えないよね。私はちょっと顔を上げ、



「なにせ私はこの通り抜けてますしね。でもまぁ、十分幸せなんでこれ以上は何も望みませんけど」

「‥何も?」



ルルクさんが不思議そうに私を見つめる顔が、なんだか幼く感じて小さく笑う。


「生きているだけで十分かなって」

「‥そうか」


横に座ったルルクさんの体温が腕に伝わってきて、なんだかポカポカと暖かい。筋肉って暖かいんだなぁと初めて知って、くすくすと笑ってしまう。あ、やっぱり酔っ払ってる。そんな事実を知っただけで笑えるんだもん。


と、ルルクさんが私をチラッと見て、



「‥一人で生きていこうと思っていたのか?」



低い声が、私の頭の中に響く。

なんだかそれが心地よくて、目を瞑る。


「‥ん、そうですね」

「‥今でも?」


そうですね。

だって誰かと恋愛したら殺されるかもしれないし。

というか、絶賛その殺す代表格のルルクさんが私の真横にいるし?



「‥今でも、です」

「なぜ?」



なぜ?

ふわふわした頭に、ルルクさんの声が心地良すぎて、思わず肩に頭をのせてしまう。ごめんなさい、体がふにゃふにゃするんです。



「‥だって、一人でいいから」



私が殺される危険もあるけど、もしかしたら、誰かを危険に晒してしまうかもしれないから‥。


ああ、そうだ。それをずっと怖がっていたんだ。

私を助けてくれた王子様も、騎士も、魔術師も、文官も学校の先生も暗殺者から私を庇って満身創痍。ものすごい傷を負って私を助けてくれた。そんなの怖い。殺されるのも怖いけど、誰かが傷つくのも怖い。


恋って、ふわふわしてて楽しいもののはずなのに、そんな怖い展開は嫌だ。


できればどちらも幸せっていう展開が一番じゃない?

そう思うけれど、それ以上はワインのアルコールのせいで何も考えられない。

それとルルクさんの体温が心地いいのもダメだ。



「‥‥ユキ?」



遠くでルルクさんが私を呼ぶ声が聞こえた。

ごめんね、ルルクさん。大人の味はやはり私には早かったらしい。

低い声が心地よくて、私はルルクさんの肩に頭をのせて熟睡してしまったらしい‥。



なにせ目をさましたら、自分のベッドで寝ていたから‥。

あれ?私、ソファーでルルクさんに寄りかかってたよね?



慌てて身支度して、リビングへ行くとキッチンでお湯を沸かしていたルルクさんが私を見るなり、


「よう、酔っ払い」


と、澄ました顔で言うので思わず目を見開く。

そ、そんなに!?酔ってたの??と、驚いていると、ルルクさんが私の顔を見てぶっと吹き出した。絶対嘘!!嘘だな!?


「絶対嘘でしょう!??」

「人の肩に頭をのせてぐーぐー寝てたな。ヨダレ垂らして」

「絶対それも嘘!!!」

「じゃあ、また飲むか?」


ニヤリと挑むようなルルクさんの視線に、私は言葉が詰まった。


「‥も、もうちょっと大人になってから‥?」


思わず目を泳がせてそう答えると、ルルクさんが面白そうに笑って、



「‥俺といる時だけにしておけ」



というので、そこは素直に頷いておいた。

だってヨダレ垂らして寝てたのを知ってるんなら、まぁいっかな?って‥。





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