恋愛ゲームの主人公、恋と花とイベントと。15
ウィリアさん、シヴォンさん、ルルクさんが、明日着る衣装を詰めるその横で、ギルマスのバールさんとアロンさんで打ち合わせすることになった。
ギルドで紋様を描くけれど、金額設定やこっちの町でのルールを教えてもらわないと、「あの時はこうだったのに!」なんてあるからね。それにしたって、横を見れば綺麗なノイエさんとルルクさん達。絵面があそこだけ全然違う。恋愛ゲームの主人公、完全に蚊帳の外である。
どこかやるせない気持ちでいると、バールさんが持っていた書類を見て、
「明日仕事をする場所をとりあえず紹介しておくんで、一緒に行くか」
「は、はい!」
いかん、いかん、仕事中だぞ私。
気持ちを切り替えて頷くと、バールさんはノイエさん達を見て、
「と、いう訳でそろそろチェックは終わりそうか?」
「そうねぇ、もう少しやりたかったけど、これ以上いじっても仕方ないから。今日はもう終わりにするわ。明日の祭りは9時からだけど、ギルドで化粧と髪もやりたいから6時にここへ集合してね」
6時?!目を丸くする私とシヴォンさんに、遠くを見つめるウィリアさんとルルクさん。お気持ち、大変よくわかります‥。隣でアロンさんが「えらい気合いだなぁ〜」と笑い、
「じゃあ、俺達は明日は7時に集合にしておくか。嬢ちゃんも気負い過ぎず、肩の力を抜いて描こうぜ」
「は、はい!よろしくお願いします!」
知り合いのアロンさんがいてくれて本当に心強い。
バールさんも安心したように微笑み、
「今日はギルドの横に宿が取ってあるから、ウィリア達はそっちに泊まってくれ。回る道順は明日また再確認しておこう。じゃ、ユキとアロンはこっちへ‥」
「あ、はい」
早速ギルドの方へ行こうとすると、ルルクさんが衣装をガバッと脱ぎ、半裸のままその衣装をポイッと女の人達に投げると、横にいた衣装合わせの女性陣の黄色い叫び声が上がった。
「る、ルルクさん?!なんでいきなり脱いで‥」
「俺も行く」
「い、いや、ルルクさんはゆっくり着替えて頂ければ?」
「お前は何かとトラブルを起こす天才だろう」
「そんな天才になった覚えはないんですが!?」
そう言い合いしつつもテキパキと着ていたシャツを着たルルクさん。
人の視線とか気にならないのか???女性陣が「やばい!」「格好いい!!」って、最早声量大きめで言ってますけど?
と、アロンさんが可笑しそうに笑って、
「兄ちゃん相変わらずだなぁ!まぁ、どんな現場か知っておいたもらった方がいいだろ。一緒に行こうぜ」
「は、はぁ」
頷く私に、満足そうな表情を浮かべるルルクさん。
‥‥私どんだけ子供扱いなんだ?とは、思うものの初めての現場は緊張するから一緒でいっか。
「じゃあ、あの、ウィリアさん、シヴォンさん、ギルドの方へ行ってますね」
「はーい。行ってらっしゃい。俺達も衣装を片付けたらすぐ行くね」
「はい」
どこか唖然とした顔のノイエさんと二人に見送られ、私達はギルドのカウンターの方へ案内されると、そこはホールのように天井が高く、あちこちの壁に仕事募集の紙が貼られ、それをチェックする人や話し合う人でごった返していた。
「す、すごい‥」
「普段はもう少し落ち着いているんだが、海外から輸入船も来た上に、祭りとかち合っちまったんで、ちとごちゃごちゃしてるんだ」
「そうなんですね‥」
それにしたって結構屈強そうな人がかなり多いな。
うちの町だと別荘を管理しているお爺ちゃんやお婆ちゃんが多いから‥、これはちょっと緊張してしまう。と、すぐそばで紋様を描いている人が目に入った。
「う、うむっ、これでどうだ!!」
「どうだって‥、おい?なんか腕が痒いんだが?!」
「あ!そうだった、この紋様の時は模様をこれにするんだった!」
おいおい、大丈夫か?
紋様士の会話にギョッとしていると、ツカツカとアロンさんがそちらへ歩いていくと、その紋様士にゲンコツを落とし、
「馬鹿たれ!!お前にはまだその紋様は早い!!」
「ちょ、こら!!何も殴らなくても良いだろう!」
「反論する前に紋様を消してもう一回描け!」
「あ、アロンさん、落ち着いて‥」
思わず割って入って、ゲンコツを落とされた人を見ればなんと同じく温泉で会った貴族のミッツさんではないか!
「え、ミッツさん?!なんでここに‥」
「俺んとこに弟子入りさせて欲しいって頼み込んできたんで、弟子入りさせたんだ」
「え!?弟子入り!?」
「ふふっ、素晴らしい紋様士の師匠から学ぶことが一番の近道だからな!」
「その前にミスばっかしてたら意味がねぇだろ!」
紋様を描かれた人を他所にギャアギャアと喧嘩をする二人をまじまじと見て、
「‥‥私も弟子入りしたい」
と、呟けば、ルルクさんに「お前はもうすでに一人前だろ」と、呆れたように言われてしまった。
一体いつになったら一人前になれるのか‥。
大人になってもわかりませーん。




