恋愛ゲームの主人公、恋と花とイベント。14
私とアロンさん、そしてどう考えても関係者のバールさんまで部屋から追い出された。恋愛ゲームの主人公なのに!!
‥もうこのゲームはねきっと機能してないんだな。
だって主人公がこんな扱いって何!?例え「恋の進展編」だのなんだの言ったとしてもだよ?普通、追い出されたりしないよね?
と、隣にいたアロンさんが、
「しかし話には聞いてたが、本当にえらい別嬪さんだなぁ」
しみじみとそう呟くと、バールさんが頷いた。
「美人ではあるんだが、自由奔放でねぇ。領主は可愛い半分、落ち着いて欲しい半分ってとこかな。まぁ、それでも可愛い我が子だから今回は警備を十分にして欲しいって話なんだが‥」
「あれだけの美人さんですから心配になりますよね」
しみじみと私が言うと、アロンさんが「お前さん十分可愛いぞ!」とすかさずフォローしてくれた。うう、気遣い感謝です。そこではたっと気が付いた。
「あ、そうだ!アロンさん、先日あんまり見ない紋様を見たんですけど」
「見ない紋様?」
「はい。先日うちの町のお婆ちゃんの手に、痛みを軽減する紋様が描かれていたんですけど、線が独特で‥、こう波打ってる感じで」
「そりゃ、隣の国‥べラードの紋様だな」
「え?!隣?」
「おう。うちの国とはまあなんとか仲良くやってるが、何かと内戦が多くてなあ。そのせいなのか紋様も独特のタッチに変化していった経緯があるんだ。威力が強いが、ものによっては反動がキツいそうだ」
「あ‥!そういえば、そんなこと言ってました!」
って、ことはお婆ちゃんの手に紋様を描いた人は、隣のべラードの国の人なのかな。すると、私達の話を聞いていたバールさんが少し考え込むように顔をしかめた。
「こっちで紋様を描くには許可が必要なんだが、ちゃんと許可された奴か疑わしいな‥」
「もしかしたら違法な紋様士かもなぁ。婆さん相手に反動がキツイのを描くなんて、普通じゃありえないからなぁ」
「そう、ですよね‥」
そういえば私もちゃんと紋様士として登録してから仕事の許可証をもらったっけ。そっか‥、違法紋様士もいる可能性あるのか。前世でもいたけど、今世でもやっぱりそういうのはいるもんだなぁ。
「この祭りが終わったらそのお婆さんによく話を聞いておきます」
「おう、頼むな。それでレトか俺に教えてくれ。違法業者摘発も大事な仕事だからな」
「はいっ!」
元気よく返事をすると、追い出された部屋のドアがガチャッと開き、金髪のゴージャス美人なノイエさんが満面な笑みで私達に微笑んだ。
「さあ、皆さんどうぞご覧になって頂戴!」
「「「へ?」」」
奥の方を見れば、三人がに白い布地に金の刺繍が施されたそれぞれデザインが違う衣装を身に纏い、キラキラと輝いていて‥、まさに恋愛ゲームのスチル!か、格好いいが過ぎる‥!
衣装合わせを手伝った女性達なんて、もうメロメロな顔をしていて‥、
「すっごくお似合いです〜〜!」
「衣装を作っておいて良かったぁ〜〜!」
「あのっ、ぜひご連絡先も教えて頂けませんか?」
と、惜しみないラブコールを送っている。
わかる!確かに格好いい!本当に素晴らしい格好良さだ。
‥‥‥だが、本来は恋愛ゲームの主人公が普通は可愛い衣装を着て、周囲の男性にちやほやされるはずなのに何故に私はここでおじ様達と、ポカーンとした顔で立っているのであろう。完全に違くないか???
何かやり切れない感情を抱えていると、ノイエさんが私の方へずずいと顔を向け、
「で、どうです?!衣装もそれぞれ工夫しておいたんですけど、素晴らしいでしょう?」
「は、はい。すごく素敵です!皆さん格好良くて驚きました」
「そうでしょう?この男性達と一緒に花馬車に乗ったら、さぞかし大注目を浴びること間違いなしだわ」
「でしょう、ねぇ‥」
なにせ恋愛ゲームの主人公とめくるめく恋に落ちる三人‥じゃなかった二人と暗殺者だし?とはいえ、女性達に囲まれて、シヴォンさんもウィリアさんもなんならルルクさんも、どこか照れ臭そうだ。そりゃまぁあんなにきゃあきゃあ言われればそうか。
ちょっとだけ胸の奥がもやっとしたけど、ノイエさんに認められないと仕事にならないしね‥。
と、ルルクさんが私の方へツカツカと歩いてやってきた。
おおお、近くに来ると余計に煌びやかな後光を感じる!眩しい!くそっ、暗殺者格好いい!!真っ白だから全然忍べてないけど!
「‥‥どうだ?」
「さっきも言いましたけど、すごく素敵です。ルルクさん、褐色の肌だから白が余計に映えますね。今度服を買う時、白いシャツ多めに買いません?」
「‥‥血が目立つからな」
「‥‥血が」
私達は一体どんな会話をしているんだ?
恋愛ゲームの話なのに、どこか首がヒヤッとした私は思わずそっと自分の首を撫でた。
私はよく食べ物をこぼすので黒い服が多いですね‥。
いい加減大人になりたいです。




