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恋愛ゲームのシナリオはログアウトしました。  作者: 月嶋のん
恋愛ゲームの主人公と暗殺者の日常。
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イベント後の暗殺者。

ルルクさん視点です〜〜。


ようやく状況が落ち着いて、強請るようにユキにキスをすれば、



ぐ〜〜〜〜〜〜っと、お風呂場にお腹の減った音が響き渡った。



そろっと顔を離せば、キスのせい‥というよりは、お腹の減った音があまりにも大きくて恥ずかしいのであろうユキが目を泳がせつつ、


「‥‥‥すす、すみません。お腹が元気が良過ぎて」


なんて言うから吹き出してしまった。

どうしてこうタイミングが良いんだろう。


「ちょ、もう!それ以上笑うの禁止です!!」

「悪かった。昼も少ししか食べられなかったしな。そろそろ夕飯だ。風呂から上がるか」

「は、はい」


未だ頬が赤いユキを見ると、もう少しキスをしたかったが怖がられるのだけは嫌だ。お風呂から上がってソファーに座ればいつも見慣れた横顔に少しほっとする。あの王子と一緒に子供の姿で外へ出ていったと聞いて追いかけたら、俺を怖がるユキにショックを受けたから‥。



自分だけは特別だ。

そう思っていただけにショックが大き過ぎて、あの王子の前で思い切り動揺してしまった。



すぐに「驚いただけだ」と説明されたが、剣を首元に当てられたようにヒヤリとした。いつも当たり前のように微笑んでくれると錯覚してしまうが、不意にどこか遠くを見つめる先も、急に良いことを思いついて飛び出していく輝くような瞳も、知れば知るほど自分と違う。


まったく違う存在なのにそばにいて欲しいと思うし、離れていくと、どこか遠くへ行ってしまいそうで不安になってしまう。


チラッと横を見れば、アレスから貰ったお菓子をご飯前だというのに一口かじるユキと目が合う。


「ルルクさん、これ美味しいです!」

「‥そりゃ良かった」

「ルルクさんも一枚食べます?お花の絵が描かれているクッキーとかどうですか?」


綺麗な缶の中に並べられているクッキーは、戦場にいた頃には縁のなかった食べ物だ。‥そんなクッキーのようなユキを見ると大事に仕舞っておきたくなるが、そんなことをこいつは望んでない。



ユキのクッキーを持っている細い手首を掴む。



「それが良い」

「え?」



パクリと一口でユキの持っていたクッキーを食べると、ぽかんとした顔で俺を見上げ、やがて頬を赤く染めた。


「な、な、欲しいならこっちを譲ったのに‥」

「お前の食いかけだから欲しいんだ」

「どんだけ食いしん坊さんですか」

「食いしん坊ね。夕飯前にクッキーを食ってるんだからお互い様だろ」

「‥それもそうかも?」


心の中でそんな訳あるかと、一人突っ込みつつ、警戒心のまるでないユキの横に座ってお菓子を食べる時間を嬉しく思う。


こんな時間を自分が持てるなんて、未だにどこか信じられないでいる。

ずっと血塗れで戦っていた時間の方が長くて、剣だこが消えないのが普通だった。時折目覚めた時に、ここはどこだと天井を見て一瞬身構える。最近は「ユキの家だ」と安心するが、ここにいるとよく眠れない‥。



ふっと息を吐くと、ユキが俺を見上げた。



「‥ルルクさん、今晩は魔物出ませんかね?」

「ああ‥。あの王子がタリクと色々やってたし、大丈夫じゃないか?」

「そっか。それなら安心だ」

「なんだ?何か心配な事があったのか?」

「ルルクさんが心配なんですって。魔物が出たって呼ばれる度に大丈夫かなってそわそわするんですよ?しかも今日は一緒にお湯で吹き飛ばされたばっかりだし」



心配‥。

俺がユキを心配するように、ユキも俺を心配するんだと毎回聞く度に驚いてしまう。と、そんな俺を見たユキがじっとこちらを睨んだ。


「ルルクさん、自分は別に〜ってまた思ってるでしょ!いい加減自分を大事にして下さい!」

「は、はぁ?」

「自分が怪我するのはいいや〜って感じだから心配になるんですよ。まったく心臓がいくつあっても足りません!」

「それは俺の台詞だ」

「ええ〜?!」


二人で見つめ合えば、知らず笑いが溢れる。



「‥お前は俺の心臓だから、笑っててくれ」

「ルルクさん、結構重いこと言ってますよ」

「‥悪いか」

「うーん、ルルクさん、食いしん坊に加えて甘えん坊になってる‥。まぁ要求が言える事は大事ですからねぇ。でも毎回は無理ですからね」

「毎回にしてくれ」



俺の言葉にユキは弾けたように笑うから、心臓がきゅうっと痛くなる。

その笑顔をずっと独り占めしたいのに、それをしたらきっと消えてしまう。俺の心臓をどうにかできるのはこいつだけ‥。微笑むユキに小さく笑って、もう一度キスをしようとすると部屋のドアがノックされた。


「ユキさん!!私だ!そろそろ夕食にしよう!」

「ちょ、レオ!それは私が‥」

「レオルドに何を言っても無理だろ」


王子達の声にギョッとしたユキが俺を見てから、ドアを見る。


「まさかの王子自ら夕食のお誘いに?!」

「‥あの王子ならやりかねないだろう」

「そ、そんな不敬の極みになっちゃう!ルルクさん、行きましょう!」

「‥‥ああ」


舌打ちしたい気持ちを抑えつつ柔らかなユキの手を握れば、いつものように微笑んでくれて胸がギュッと痛む。



このとびきりの笑顔は自分にだけ。



そう思って、ドアの向こうで騒いでいる王子達の方へユキと一緒に歩いていった。






はい〜〜。少しでも早く涼しくなって欲しいという祈りも込めての

温泉編でしたが、やはり暑い残暑ですね‥。皆様どうぞお身体を大切にして下さい。

そして今回もお読み頂きありがとうございます!ずーーっと「そろそろ更新したい‥」と、

思っていたので今回ようやく書けて嬉しかったです。

そしてどうぞブクマやいいねを連打して下さいませ〜〜(^^)

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