表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
恋愛ゲームのシナリオはログアウトしました。  作者: 月嶋のん
恋愛ゲームの主人公と暗殺者の日常。
244/249

恋愛ゲームの主人公、新イベント。29


どうも大人に戻ったらしい私。

ルルクさんのシャツと肌着を上下に巻かれ、ミイラのようになっている。


「‥‥動きづらいです」

「頼むから動くな」


耳まで赤いルルクさんに睨まれるけど、私そんなにまずい格好してる?むしろ上半身裸になったルルクさんへの目のやり場に困る‥。


と、地面の下の方から、声が聞こえた。



「おーーい!その辺にルルク殿とユキさんはいるかーー!?」

「レオさんの声だ!」

「ああ、ちょっとそこで待ってろ」

「え?」

「動くなよ」



ルルクさんはそういうなり、パッと魔物の巣から滑り落ちていく。


「る、ルルクさん!??」


ポンポンと木の枝を蹴りながら下へあっという間に降りていく姿に驚いてしまう。お、降りていけちゃうんかい!びっくりしたけど、さっき私を持ちながらここまで降りてきたルルクさんなら造作もない事‥なのかもしれない。


それにしたってすごいけど。


と、ふと空が暗くなった気配がして、上を見上げれば暗雲がこちらへやって来る。



「も、もしかして、また雨‥?」



こんな時にやめてくれ‥と、思った直後、ドザァーーーーーー!!と、無情な雨が思い切り降ってきた。


「わあぁああ!ちょ、勢いがすごい!」


ばしゃばしゃと雨水が魔物の巣の中に溜まっていき、隙間から雨水が流れていくけれど、雨の勢いがすごくてみるみる溜まっていく。すると、ふわりと光りが動く気配してそちらに目をやれば、さっき魔物虫が入っていた穴にまで水が流れ込み、魔物虫が慌てて逃げ出している。


「虫も逃げ出す雨の量だ‥」


穴から甘い香りと一緒に少し白く濁った水が魔物の巣にも流れ込む。

ですよね、溢れてきますよね‥。できるだけルルクさんの服を濡らさないように枝の下に移動したけれど、もうすでにビショビショだけど、これでは更に濡れてしまいそうだ‥。



すると、みしっという音と共に振動がした。



「え?」



ミシミシと音と共に、魔物の巣の一部から流れていた水がバシャーーーーーッと勢いよく流れ出し、枝がバラバラと下へ落ち出す。


「え、ちょ、待って!?」


バラバラと枝と雨水が一緒に落ちながら、地面が見えていく。


「わーーーーーー!!!る、ルルクさん!!ルルクさん!!!」


叫んだその時、枝があっという間に崩れ落ち、雨水が重力に従って勢いよく落ちるのと同時に私の足元が下へと引っ張られる。


落ちる!!!


急いで大きな木に腕を巻きつこうとすると、魔物虫が私の鼻の頭にくっ付いた。


「ふぎゃ!??」


叫んで鼻の頭から虫を取り除こうと手を動かした瞬間、ツルッと滑り、一直線に地面に落ちていく。



「〜〜〜〜〜〜あっ!??」



落ちる!!

そう思った瞬間、


『風よ受け止めよ!!!』


下からものすごい風圧が私の体を浮かせたかと思うと、ルルクさんが私の体をキャッチした。



「る、ルルクさん?!」

「怪我はないか?」

「け、怪我は、ない、ですが‥、な、何が何やら?」



鼻の頭にくっ付いていた魔物虫をルルクさんがぺっと摘まみ取ってくれると、その横からずぶ濡れのレオさんが顔を出した。


「やあやあ、間欠泉に押し上げられるなんてなかなか面白い二人だな!」

「間欠泉‥?」


何それ?と、ルルクさんの腕の中で目を丸くすると、ルルクさんの隣からやはりずぶ濡れのタリクさんが顔を出した。


「温泉のお湯が突然吹き出す現象です。ここの所、急激に雨が降ったのでそのせいでしょうね」

「そ、そんなことあるんですね」


温泉の国に住んでたのに知らなかった‥。

タリクさんは優しく私に微笑み、



「‥先ほどギルドの者と魔物退治をしていた際に、ごく稀にそういった事があると教えて頂いたんです。ここいらではよくある事だと。それで魔物が出る事に合点がいったんです。白の魔石のせいでお湯が白く発光していた時期がありましよね。そのお湯が飛び出し、木々の穴に溜まり少しずつ濃度が濃くなっていたのでは‥と」



あ、じゃあ魔物が出ていたのって‥。


「間欠泉のせいで、魔物が?」

「先ほど穴の中に魔物虫がいたと聞きましたし、その線が濃厚ですね。これからよく魔物が出る地域の木を伐採です!」


かなり骨が折れそうな事なのに、タリクさんはワクワクした顔で「楽しみです!」と、ウキウキである。そんなタリクさんを見たレオさんは眉を下げて笑い、



「その前に風呂だ、風呂!我々貴族が率先して温泉を楽しまないと、民も楽しめないだろう!皆で行くぞ!なにせユキさんもその格好だ!」

「っへ?」



すっかり酔いが覚めた私は自分の格好をもう一度良くみれば、ルルクさんの服でグルグル巻きにされているけれど、びしょびしょでスッケスケなのだ。何がとは言わない。察して欲しい。


一瞬にして顔が赤くなると、上半身裸のルルクさんが私を更にしっかり抱き寄せ、ジロッとレオさんを睨み、



「見たら殺す」

「ちょーーー!!!殺しちゃダメです!!殺しちゃ!!」

「目を潰す」

「目もダメーーー!!!!」



思わず叫んだけど、これはルルクさん真っ赤になるわ。

ようやく自分の現状を把握して体を小さく縮こませ「子供に戻りたい‥‥」と、これほどまでに願ったことはない。





一応ルルクさんの服で守られているので、安心して下さい!ちゃんと見えません!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ