恋愛ゲームの主人公、新イベント。13
ルルクさん達と別々に入った足湯は大変最高だった。
足湯の周囲には綺麗に手入れされた花達もあって、目にも体にも心地が良い。
「あ〜〜〜、こりゃ最高だ〜〜〜」
これでも恋愛ゲームの主人公なのに、完全に仕事に疲れたサラリーマンのような声が出たけれど、何せ私以外お客さんがいないから大丈夫‥な、はず。
はーっと息を吐いて、お花の方を見れば蝶がヒラヒラと飛んでいて、それを目で追っていくと花の上にちょこんと止まった。と、その花の下の方で何かがチカチカと光って見えた。
「ん?」
何か光った?
お湯から足を出して、お花の方に近寄れば花と花の間で小さな虫のお尻が光っている。
「え!?こっちの世界って蛍がいたんだ!?」
花と花が重なり合って暗くなっているから光っているのがよく見える。
以前、湖で光る蝶を見たけれど蛍もいたとは驚きだ。前世ではテレビでしたか見た事がない蛍をまさか転生先で見られるなんて感激してしまうわ〜。
まじまじと見つめてから、これは夜に来たらもっと綺麗なのでは?と、ワクワクしてしまうけれど、夜は別荘に行くから無理かな‥。
夕方にもう一度見に行けたら良いけど、そもそも何時までここってやってるのかな。ちらっと壁の時計を見れば、そろそろ集合時間だ。こんなに素敵な場所ならもうちょっと延長すれば良かったかな?
ともあれしっかりとブーツを履いて玄関へ戻れば、ルルクさんがもう入り口で腕を組んで立っていた。
「あれ?ルルクさん、もう出てたんですね」
「そりゃ、男どもと喋っても仕方ないだろ」
「そんなモンなんですかねぇ?」
お店の入り口にいた男の子と、ルルクさんはさっきまで話していたらしいけど、家に先に帰ってしまったそうだ。もう少し話ができたら良かったのに残念だ。
「また会えるかな‥」
「会えるだろ。約束したしな」
ルルクさんが優しく目を細めてそう言ってくれてだけで、どこか本当に来てくれるかなぁという不安が軽くなる。そうだよね、もしもばかりを考えても仕方ない。できる事を一つずつやっていけばいいのだ。
「そうですよね‥。ともかく、誤解を解くには時間が掛かりそうだけど頑張ります!」
ガッツポーズをすると、ルルクさんが可笑しそうに笑って流れるように私の額にキスをするので目を見開いた。ちょ、ちょっと!なんで人前で突然キスなんてするかね?思わず周囲を見回すと、ルルクさんはそれは楽しそうに笑って、
「誰も見てない」
「だから良いとは限りません!びっくりするじゃないですか!!」
「‥‥小出しにしておかないと慣れないだろ」
「な、慣れ?!!」
こういうやり取りって慣れる日が来るの?
顔が赤くなる私に対して平然としているルルクさん‥。くそ、その強い心臓が羨ましい!と、男性側の足湯からタリクさんとアレスさんが戻ってきた。
「お待たせしてしまってすみません」
「いえ、私も今出てきたところだったんです。足湯すごく良いですね!お花も綺麗で見ていてとても癒されました!」
「そうですか。別荘の温泉も素敵なのでぜひ楽しんで下さいね」
「別荘‥」
あのでっかいサンルームのような温泉を思い出し、楽しみ半分、若干こんな大変な時に楽しんじゃって良いのかな?という気持ちにもなる。いや、思ったより深刻な問題に取り掛かるのだ。ここは全力で楽しむことにしよう。‥ちょっと緊張するけど。
と、アレスさんがニコニコ微笑み、
「では、もし良ければ私が借りて運営する店舗も見に行きませんか?」
「あ、限定のお菓子ですね!」
「はい。できたらお菓子も見て頂きたくて‥」
「もちろん見たいです!」
限定のお菓子なんて絶対美味しいだろうし、可愛いんだろうなぁ。
ワクワクしながら頷くと、ルルクさんが私の手をさっと握り、
「じゃあ、紋様師様行くぞ」
「ちょ!!緊張感が増すような呼び方やめて下さいよ」
「大丈夫だろ。どうあってもそこにお客がいるんだから」
けろっとした顔でタリクさんとアレクさんを指差すと、二人はニコッと笑って、
「そうですね。ユキさんの紋様の効果を実感できるように宣伝しないとですね」
「ええ!?」
「私はやはり白い鳥ですね。今回の限定のお菓子にも取り入れたので‥そちらも宣伝して頂きたくて」
「ひ、ひぃいい‥、が、頑張ります」
タリクさんやアレスさんまでプレッシャーかけてこないで〜〜!
そう叫びたいけれど、不安そうにしていたらそれこそ皆警戒して描かせてもらえなくなる‥かも?ひとまず背筋を正してアレスさんの店まで一緒に歩いたけど、本当にどうなってしまうんだろう〜〜。
蛍、もうずっと見てない‥。
今回もお読み頂きありがとうございます〜〜。




