表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
恋愛ゲームのシナリオはログアウトしました。  作者: 月嶋のん
恋愛ゲームの主人公と暗殺者の日常。
223/249

恋愛ゲームの主人公、新イベント。8


ルルクさんとタリクさんで魔物を倒しに行った一方で、私はアレスさんとお茶をしながらお菓子のアイデアを出し合った。


なにせ私は料理を焦がしてしまうが、前世の知識は多少あるのでアイデアだけならあるからね‥。アレスさんは私の話を嬉々として聞いてくれて、いくつもメモをしてくれた。


「ユキさんとこうやって色々考えられて良かったです!私一人ですと考えが広がりませんし、タリクやシヴォンでは「美味い」だけで終わってしまいますから‥」


タリクさんとシヴォンさんの顔を思い浮かべて、つい吹き出してしまう。

でも「美味しい」って言葉は大事だと思うよ?



「アレスさんは温泉街のどこでお菓子を売るんですか?」

「ああ、お店を一角貸して頂いて、そこに一週間限定のお菓子を売り出す予定なんです」

「ええ!すごいですね!私はギルドで紋様を描けばいいのかな‥?ちょっと緊張しますね」



私の言葉にアレスさんが少し考え込み、それから顔を上げた。


「あの、レオルドから紋様の噂については聞いていますか?」

「噂?」


何かあったの?目を丸くすると、アレスさんは眉を寄せ、「今度レオルドによく言って聞かせますね」と、前置きをしてから、


「実はレオルドが、紋様で呪われた‥という噂が出回っているんです」

「え?」


紋様で呪われた‥?でも、あれはセリアさんの「呪い」の力であって紋様ではない‥。けど、そんな話がどこから出たの?アレスさんを見ると、



「‥レオルドは人形になっていた事はもちろん伏せた上でセリア嬢の話をし、ハイデン伯爵を捕らえたのですが、彼女が使った「呪い」が紋様と酷似していた事が噂になって広まってしまったんです。そのせいで紋様師が人を呪うなどと言われて‥、」

「それって風評被害じゃないですか!」



ちょ、ちょっと?!とんでもない事になってるじゃないか!

それだと腕に覚えありの紋様師さん達がこっちへ来ても、かえって大変な事になってるのでは?アレスさんは肩を落とし、カップに入っているお茶を見つめた。


「はい‥。紋様師がそんなことをしないとレオルドも周囲に知らせたのですが、噂が収まらなくて‥」


そっか。だから王族ご推薦の紋様師‥として私をここへ送ったのか。

って、責任重大ではないか!!恋愛ゲームの主人公なのに何故こんなハードな問題が舞い込んでくるのだ!


青褪める私に、アレスさんが優しく微笑んでくれた。


「大丈夫です。私もタリクもおります」

「アレスさん‥」


や、優しいなぁ〜〜〜!

お菓子を売る方だって大変だろうに‥と、感動していると、



「戻ったぞ」

「え」



後ろを振り返ればルルクさんが立っている!

あれ!?いつの間に戻ってきたの?驚いた顔でルルクさんを見上げれば、眉を寄せていて、なんというか機嫌が悪そう?何かあったのかな‥。


「ルルクさん、足音を消していきなり現れないで下さいよ!!」

「‥悪いか」

「悪くはないけど驚きます‥。魔物は大丈夫だったんですか?」

「すぐ倒したからな」

「そうですか‥、良かった」


ルルクさんをザッと見れば怪我をしている様子もなく、ホッとして息を吐いた。


「無事で良かったです。えっと、お茶でも飲みますか?」

「ああ‥」


メイドさんがすぐに椅子を持ってきてくれて、私の隣にルルクさんが座るとアレスさんをちらりと見て、



「タリクはもう少しでこっちへ戻ってくる」

「ああ、ありがとう。魔物はやはり多かったのか?」

「数は結構いたな‥。早いとこ手を打たないと温泉街の住民も安心できないだろう」

「そうか‥」



アレスさんが考え込むように腕を組むその横で、ルルクさんがテーブルの下で私の手をそっと握った。


ん?何かあった?

ルルクさんの方を見れば、肘をつきながらただ前を見ている。

もしかしてこれはただ握っていたいだけ、なのか?


ついまじまじとルルクさんを見ると、私の視線に気が付いたルルクさんがこちらを見ると、


「‥お前はどこにいても危なっかしいな」

「え?私何もしてませんよ?」

「‥どうだか」


な、なんだよー!何もしてないよ?

不思議に思いつつ、危なっかしいなどというルルクさんの手を大丈夫ですけど?と、ばかりにギュッと握ると、ルルクさんが一瞬目を丸くすると、私の手を同じようにギュッと握り返した。‥力は全然優しいけどね。


温かい手の感覚に、ちょっとしか離れてなかったのに手を握られるとなんだか安心してしまうんだから不思議だな。


チラッとまたルルクさんを見れば、お菓子を摘んで食べようとしていて‥、



「なんだ、食べたいのか?」



と、言いつつ私の口元へ運ぶけど、それは無理です!!!

赤い顔で「大丈夫です!!お腹いっぱいなので!!」と、訴えると、それは楽しそうにルルクさんがニヤッと笑った。本当に暗殺者ってやつは良い性格をしてるよ‥。




私はお菓子を作れない女なので、アレスさんを本気で尊敬してます。

(バターとか砂糖の量を知ると、怖くて入れられない‥)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ