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恋愛ゲームのシナリオはログアウトしました。  作者: 月嶋のん
恋愛ゲームのシナリオはログアウトしました。
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恋愛ゲームの暗殺者は蝶を見送る。

ルルクさん視点で完結です!


ユキがようやく目を覚ました。

もちろんすぐに自分のことを好きかどうかを確認した。

なにせあの事件の後、ようやく気持ちを告げてキスをしたのに、すぐに意識を失ってしまったんだ。しかも3日も。


その心配を掛けた当のユキは、外で洗濯物を干しているが…。

もう3週間経ったし大丈夫!というが、まだ3週間という感覚の俺はキッチンから窓の外を眺めつつ、寝ていたユキを思い出す。


すぐに目を覚ますかと思ったが、懇々と眠るユキに見舞いに来たタリクが、


「腕の良いユキさんが自分に「呪い」を掛けたせいもあるでしょう。体の状態は問題ないですから、あとはひたすら回復を待つしかありませんね‥」


とは言ったが、ずっと心配だった。


早く目を覚まして欲しい。

できれば、ユキの口から気持ちを聞きたかった。そうでなければ、こんな自分を本当に好きなのか確信が持てなかった。キスをしてくれたのに‥、自分のような人間に?と疑ってしまうから。


まぁ目が覚めたらすぐに気持ちを確認して、真っ赤になユキにキスしたが。


‥今思い出しても、あの時のユキの顔が可愛くて胸の奥がそわそわする。

戦いに出れば負け知らずだった自分が、こんなに胸がかき乱されるとは思わなかった‥。ユキの存在が大きすぎて自分でも時々戸惑ってしまう。ユキは自分だけがドキドキしていると思っているらしいが、とんでもない。素直に話してみたら驚いた顔をしていたユキを思い浮かべて、ふっと笑みが溢れる。



と、洗濯物を干して外から戻ってきたユキがキッチンへ顔を出す。



「ルルクさん、今日は天気もいいですしお弁当を持って湖に行きましょうよ!」

「‥体調は大丈夫なのか?」

「あれからもう3週間経ったんですよ?そりゃもうバッチリ元気ですよ!」



ニコッと笑って俺の隣へやってくるユキ。

ふわっと肩まで伸びた蜂蜜色の髪を揺らして、照れ臭そうに微笑む姿に胸がまた痛くなる。‥くそ、隣にいるだけなのに、こんなにドキドキしてどうするんだ‥。思わずジッとユキを見ると、「本当に元気ですよ?」と念を押された。違う、そうじゃない‥。



あの王子みたいに口がクルクル回るのなら、もっとうまく自分の気持ちを伝えられただろうか。‥いや、無理だな。



「‥じゃあ、一緒に何か作るか」

「やった!じゃあ私、茹で卵作りますよ!あれなら焦がす心配ないですし」

「‥確かにな。卵のサンドイッチとハムのサンドイッチにするか」

「そうしましょう!それとシヴォンさんとアレスさんがクッキーを送ってくれたので、それも持っていきますか」

「‥‥そうだな」



あいつら‥、ユキをまだ諦めてないな‥。

さっさと諦めてくれればいいものを、未だに時々家にやってきてはお土産を持ってきたり、紋様を描いて欲しいと言ってきたり‥。つい、心の中でドロリと暗いものが胸の中に流れる。


「ルルクさん、」


くいっと俺の腕を引っ張ったユキに目を向けると、ニコッと笑ったかと思うと、背伸びをしたユキに頬にキスをされた。思わず目を丸くした俺に、ユキが俯いて赤い顔でモソモソと呟いた。



「‥たまには、いいかなぁって‥」



心臓が潰れたかもしれない。

鍋に水を入れようとした手は、そのままユキを抱き寄せる。

可愛いとか、大事にしたいとか、愛しいとか、そんな自分の中にはなかった言葉が胸の奥からどんどん湧き上がるんだが、一体どうしたらいいんだろう。


ギュッと抱き寄せた柔らかい小さな体は、未だ俺との接触に慣れないのかちょっと緊張したように固まる。


「‥好きだ」


もっと色々言いたいのに、それしか言えなくて、

けれど、それさえも言えなかった頃を思い出すと、ようやく言えることに嬉しくなる。ゆるっとユキが俺の背中に手を伸ばし、そっとシャツを掴む。



「‥私も好きです」



スリッとシャツに顔を寄せるユキの耳が赤い。

その可愛らしい耳にそっとキスをすると、腕の中で「ひゃあ!??」って聞こえて、ふっと笑ってしまう。この先を進むには、きっと二人ともまだ時間が必要なんだろうな。そんなことを思いつつ、腕の中の大事な存在をもっと感じたくて、更に抱き寄せると、ふと頭の奥で声が聞こえた。



『幸せになってね』



誰だ?

ふと顔を上げて外を見た時、裏庭の畑から黄色い蝶がふわりと飛び出した。

なんだか、ここへ来る前に見た蝶の気配を感じて、ジッとそちらを見ているとユキも顔を上げて、俺の視線の先の蝶に目を向けた。


「‥いま、何か聞こえました?」

「ユキも何か聞こえたのか?」

「はい。以前にも聞こえたんです。あの声‥。もしかして、あれって黄色の蝶だったのかな‥」


ユキの言葉に黄色の蝶をまたもジッと見つめると、黄色の蝶は金色に光り出す。



「「え」」



二人で驚いて金色の蝶を凝視すると、クスクスと頭の奥で笑う声がすると、気が付くと部屋の中なのに花びらがどこからか降ってきた。薄いピンクに、白、黄色と、花びらが落ちてきてはふんわりと消えて、目を丸くしたユキがポツリと呟く。



「‥花に舞うを、もしかしてここで回収した?」

「回収?」

「あ、いや、なんでも‥、って、あ!レオさんが描いてくれた花の紋様がない!」

「は?」



そういえばリリベルが来る前に王子と描いたのを思い出し、その手首を見ると何もない。けれど、俺の描いた蝶だけはそこでキラリと光っている。その事実に嬉しくなってしまう。‥我ながら単純だな。



「花も今度は俺が描く」

「ルルクさんが?あ、でもそれなら私も描きたいです!でもその前に料理を‥」



ユキがハッとして、俺から離れようとする。

…なんでここで離れるんだ。こんな花が舞っているんなら、する事は一つだろうに。



ユキの顎を指で上げてキスを落としてから、遠く飛び去っていく金色の蝶を目の端で見送った。





当初は100話くらいで‥と思っていたのに、全然でしたね。

無茶苦茶長くなってしまいましたね。それなのにここまで読んで頂いて、本当に!!本当に!!!ありがとうございます!新生活の忙しさに書く意欲が湧かなくて、どうすべ‥と思っていた所に殴り込みにきたルルクさんとユキ。


いいねやブクマで励まされて、なんとか完結致しました!

久々に疾走するように書けて、本当に楽しかったです。もちろん私の定番、完結してもすぐ続きを書いちゃうはずですが、今はまず完結と致します。ここまで本当に読んで頂き感謝です!!一生幸せになる呪いかけておきます。

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