恋愛ゲームの主人公、嬉しいけれど倒れる。
ルルクさんに返事をするようにキスをした。
しかし、ちょっと待ってくれ私。
ここには王子を始め、タリクさんたちがいたな?
ハッとしてルルクさんから離れようとすると、ルルクさんに反対に抱き寄せられ、そのままギュウッと強く抱きしめられた。
「ちょ、る、ルルクさん!??」
「‥なんだ」
「あの、今王子がそばにおりまして‥?!」
「それがどうした」
「どうしたって、は、恥ずかしくてですね??!」
自分からキスしたけどね?
しちゃったけどね??赤い顔でルルクさんを睨むけれど、ルルクさんはさっきの顔から一転嬉しそうに私を見つめている。
う、うわあぁああ!!!
なんだその蕩けそうな瞳は!!!
そんな顔を見ただけで赤面しちゃうんですけど??
恋愛ゲームの主人公なのに、恋愛したことないからどうしていいかわからないんだけど?!!顔が真っ赤であろう私がルルクさんをジロッと睨むと、ルルクさんがボソッと「それ、逆効果だぞ」と言ったけれど、な、何が??混乱していると、ルルクさんの後ろから咳払いが聞こえる。
と、ルルクさんが舌打ちして後ろを見ると、びしょ濡れになったレオさんがニコニコ笑って、
「とりあえず、話は纏まったかな?」
「王子ってのは無粋な生き物なのか?」
「ルルクさぁああああん???!!!」
「はっはっは。これでもちゃんと空気を読んでみたぞ?」
楽しそうにレオさんは笑うと、セリアさんの服を持ち上げた。
「犯人は溶けてしまったが、これで私もようやく一歩を踏み出せる」
「え?」
レオさんは後ろを振り返ると、今にも泣き出しそうなリリベル様がレオさんを見つめている。と、レオさんはリリベル様に手を差し伸べた。
「やっと紹介できるな。ユキさん、リリベルは私の婚約者だ」
「「え!???」」
婚約者?!私とルルクさんは思わず目を丸くした。
だ、だって婚約してないから、ルルクさんが付き合っているふりをしていたんだけど?驚いていると、レオさんがリリベル様の背中をそっと撫でる。
「学園で意気投合して、すぐに婚約をしたんだ。だが、あの女がリリベルを害する危険性があって、ずっと公表しなかった」
驚きの事実に私とルルクさんは目を丸くする。
そ、そんな素振り全然なかったけど??!っていうか、恋愛ゲームの主人公の立ち位置は??って思ったけれど、今更である。私はルルクさんが好きだし、何も問題はない。
とはいえ、驚いているとタリクさんがレオさんを見て、
「セリア嬢を必要以上に焚き付けて行動に移させようとしていて、ヒヤヒヤしていましたが…、効果はかなり大きかったですね」
「うむ!終わりよければ全て良し!!」
「お、終わり良かった‥?」
「証拠はしっかり私が記録した」
そういうと、レオさんは自分の胸についているブローチを指差した。
キラッと赤い宝石が光る。そんなの持ってたの??驚いていると、レオさんはしみじみとブローチを撫で、
「‥これで、ハイデン伯爵を潰せる」
「ハイデン‥?!」
それって、私を後妻にしようとした人のこと??!
目を丸くすると、レオさんがニヤリと笑う。
「ああ。お前もよく知っているハイデン伯爵だ。セリア嬢はそいつの娘でな。親子で王族反対派を丸め込み、城だけでなく、あらゆるところに魔の手を広げていたんだ‥。タリクは貴重な魔石の情報をセリア嬢に壊され、アレスは情報を調べに行ったが、それを妨害された上に命を狙われ、シヴォンはセリア嬢に呪われ、ウィリアは妹を操られたんだ。そして、リリベルには私の婚約者だと気付いたハイデン伯爵が裏から手を回して、強引に結婚話しを進めようとした‥」
それって‥、全部セリアさんとハイデン伯爵の仕業だったの?!
セリアさんは好感度を上げていたって話していたけれど‥悪いことしかしてないじゃないか??ぽかんと口を開けていると、別荘の入り口の方からワァワァと声が聞こえる。
「誰か来た‥?」
「ああ、救援だろう。うむ、いいタイミングだ!なにせこの白く光る水‥。暖かいとはいえ、夜はちと冷えるしな!」
楽しそうに笑うレオさんに、リリベル様が横で小さく微笑む。
そんな二人を見ると、ああ確かに婚約者って言われるととっても納得してしまう光景だった。そっか‥、レオさんはレオさんでちゃんと幸せになったんだ。なら「幸福」の紋様なんて必要なかったな‥。
嬉しくて、心底安心した私は、ルルクさんに抱かれたまま‥
気絶した。
いや、だってもう無理!!!
恋愛ゲームの主人公だって、こんなハードなストーリー無理である!!!
明日2話更新です〜〜。




