表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
恋愛ゲームのシナリオはログアウトしました。  作者: 月嶋のん
恋愛ゲームのシナリオはログアウトしました。
210/249

恋愛ゲームの主人公、蝶になる。


真犯人がセリアさんだとわかったのに、ルルクさんにゲームのように剣を構えられ、私の体は固まってしまった。



薄暗い中庭に、私とルルクさんが対峙する形になって、ゲームの中と同じような構図に、私はやっぱり殺されてしまうのか‥なんてどこか諦めにも似た気持ちでルルクさんを見つめると、赤い瞳がユラユラと揺れている。



「る、ルルクさん‥?」



思わず声を掛けると、ルルクさんの大きな体がビクッと震えたかと思うと、

剣を持つ自分の手首を押さえて、歯を食いしばっている。


「‥逃げ、ろ」

「ルルクさん!?操られてるんじゃ‥」

「抑えて、る、」


苦しそうに顔を歪めるルルクさん。

何か、何か自分にできないか?ボディーバッグに手を入れて、何かを探そうとしてハッとする。まずい!レオさんを逃がさないと!急いでバッグのベルトを外すと、レオさんが慌てて『何をする?!』と叫んだのが聞こえたけれど、それを勢いよく植え込みに投げつけた。


よし!

レオさんはこれで大丈夫!!

私はひとまずまた逃げよう。そう思って、足を一歩後ろに下げたその時、ルルクさんが唸ったかと思うと、私に飛びかかり、そのまま石畳みに二人で倒れた。



ガツン!と、音がして、星が目の前にチカチカと散った。


「い、痛〜〜〜!!!」

「ユキ、」


苦しそうなルルクさんの声に、顔を上げると薄暗い中なのに、赤い瞳のせいなのかルルクさんの表情がはっきり見えた。今にも泣き出しそうな顔をして、剣を持つ手がカタカタと震え、必死に抑えているルルクさんに目を見開く。



「ルルク、さん‥」

「くそっ!!嫌だ、こんな、」



苦しそうに顔を歪めるルルクさんの瞳から、涙が溢れて私の頬を濡らした。



「嫌だ、こんなの、早く、逃げ‥」



ぼろぼろとルルクさんの涙が私に落ちてきて、私は胸がぎゅっと痛む。

ゲームの中では、ルルクさんは私を躊躇うことなく切ってたのに、今はこんなに苦しんでいる。‥そうだ、この世界はゲームのキャラクターはいるけれど、皆人格をそれぞれ持っている。



優しくて、傷付いていて、それでも笑顔でいようとする人達だ。



こんなことをさせるなんて‥私だって嫌だ。

もしルルクさんの手で私が死んだら、優しいルルクさんはきっと傷付いてしまう。そんなの嫌だ。セリアさんの思うようになんてなりたくない。



体をよじって、ルルクさんから逃げようとするけれど、操られているルルクさんの腕が私の体を押さえつけ、ブルブルと小刻みに震える剣が私の首に触れた。



チクリと痛みが走り、そっと空いた手で首に触れると、手の平にべったりと血がついている。ルルクさんが私の手を見て、ヒュッと息を飲み込み、真っ青になる。



「ユキ‥、嫌だ、ユキ」



ルルクさんが眉を寄せ、苦しそうに呻く。

剣がじりじりと私の首に寄せられ、なんとか首を動かそうとする。

斬られたらルルクさんが悲しむ!それだけは絶対嫌だ!!と、目の端っこがほんのりと明るくなる。よく見ると、剣を必死に押さえつけているルルクさんの手の甲の蝶が光っている。



蝶‥。



私は咄嗟に血のついた指で、押さえつけられた手に『蝶』と書いた。



その途端、体がぎゅっとあちこちから押さえつけられた感覚がして、思わず目を瞑る。体全部を押さえつけられ、もう無理!!そう思った途端、一気に体が軽くなった。



パッと自分の体を見ると、黄色の蝶に自分が変化している!



蝶に、なってる!

咄嗟に目に入ったものを自分に書いたけれど‥、これって「変貌」?自分に呪いをかけた感じ?驚きつつも、黄色の蝶になった私はルルクさんの周りをふわりと飛ぶと、ルルクさんが目を見開いた。



「ユキ!!!!」



ルルクさんが蝶になった私に手を伸ばすけれど、私の体が言うことを聞かない。羽が上へ上へと空へ上がるように勝手に羽ばたいてしまう。そうして、どこから現れたのか以前湖で見たであろう蝶達が私を取り囲む。


ちょ、ちょっと?

私はルルクさんの方へ行きたいんだけど?


ルルクさんって呼びたいのに、声も出ず、ルルクさんの方へ下りていきたいのに体が思うようにいかず、バタバタともがいていると、ルルクさんの瞳が赤い色からコバルトブルーへと変化していく。



目の色が戻った!

操られている状態が戻ったのか?そう思っていると、建物からセリアさんがリリベル様やタリクさん達を引き連れて中庭へやってきた。石畳みが敷かれた中庭まで散歩するように歩いてくると、ルルクさんを一瞥してから周囲を見回した。



「あの子はどこ?まさか殺してないの?」



ルルクさんがセリアさんの言葉にギロッと睨む。



「貴様‥!!!!」

「何?あんたは私の「奴隷」でしょ?早くあの子を殺して‥」



そう言いかけた時、ズズン!!と大きな地響きがしたかと思うと、セリアさんやタリクさん達の側の地面が、ぱっくりと裂けたかと思うと、ものすごい勢いで白く光る水が空高く吹き上がった!!





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ