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恋愛ゲームのシナリオはログアウトしました。  作者: 月嶋のん
恋愛ゲームのシナリオはログアウトしました。
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恋愛ゲームの主人公、絶体絶命?!


ルルクさんを助けに別荘へ来たのに、会った瞬間に「帰れ」と言われてしまって、私は思わず立ち尽くしてしまった。


「な、なんで‥」


どうして帰れなんて言ったの?

ルルクさんを見つめて、そう聞くとルルクさんが私をちらっと見たかと思うと、自分の足元に視線を移した。



「‥体が思うように、動かない。危険だから、帰れ」



こんな時まで私の心配をするルルクさんに目を見開く。

なんでこんな時まで優しいの‥。ルルクさんがまた足元を見つめ、小さく呟いた。



「‥‥俺みたいな汚い人間のそばに、いるな」



どこか寂しそうな声に私の胸がぎゅうっと痛くなる。

そりゃ確かに最初は怖かったよ?でも、何度も助けてくれて、軽口を叩きあって、一緒にご飯を食べて、いつの間にか私はルルクさんを‥。そんな風に思っていた相手に拒否されて、私は体から力が抜けそうになる。



「そんなこと、ないです!だって私はルルクさんが‥」



好きだって。

ずっと側にいたいって。

そう言いたいのに、今まさにフラグの回収真っ只中で言ってしまっていいんだろうか。もし、私の言葉がきっかけでルルクさんに何かあったら?



言葉が、口から出てこない。



どうしたら、いいの?

ぼろっと涙が溢れて、首を横に振った。



「嫌です。ルルクさん、一緒に帰りましょうよ‥」



お願いだから、一緒に帰るって言って。

私はルルクさんが暗殺者だろうが、なんだろうが、大事なんだ。

大好きで大切で、ずっと側にいたいんだ。私の涙声にルルクさんが顔を上げると、辛そうに顔を歪めた。


「ダメだ。俺は、もう‥」

「なんで、そんな事を言うんですか?!リリベル様が本当にルルクさんを‥」


そうだ。


リリベル様も探さないと‥。

ゴシゴシと服の袖で涙を拭いて、ルルクさんをまずは助けようと一歩足を進めたその時、カサカサと何か音がして足元を見ると、真っ黒い蜘蛛がルルクさんを取り囲むように床にびっしりと蠢いている。


「え」


この蜘蛛って‥、以前うちでルルクさんを噛んだ蜘蛛に似てない?

じゃあ、この蜘蛛を操っていたのって‥。

ドクドクと心臓が嫌な音を立てると、コツッと靴音が後ろからした。



「だあれ?私のルルクを奪い返しに来たのは‥?」



凛とした声が聞こえて、そちらを向くと薄紫の髪を下ろし、にこりと微笑むリリベル様が立っている。


「ルルクさんになんでこんな事を‥?!」

「‥だって、本当のことデショ?」


ふと窓から月の明かりが射し込んできて、リリベル様の赤い瞳を照らした。



赤い、瞳‥?



「え、リリベル様、もしかして操られて‥」



私がそう呟いた瞬間、足元に蠢いていた蜘蛛たちが私の方へ飛び掛る。


『ユキさん!』

「ユキ!!!」


ルルクさんが私を庇うようにギュッと抱きしめると、蜘蛛達がルルクさんの肩や足に噛み付く。


「ルルクさん!!!」


またルルクさんが操られてしまう!!

ルルクさんを見上げると、苦痛に顔を歪めて倒れてしまった。


「ルルクさん!ルルクさん!!」


ルルクさんの体を揺すぶるけれど、痛みに耐えるように歯を食いしばっている。どうしよう!!どうすればいい?!と、バッグの中からレオさんが私を見上げる。


『ユキさん、ひとまず逃げた方が‥』

「それは‥。でも、その前にリリベル様を気絶させないと!」



「それは困るわ」

「え?」



冷たい声がして、後ろを振り返るとそこにはセリアさんが立っていた。

え、なんでここに?驚いていると、私の側まで来ると腕を組んで、ジロリと私を睨んだ。



「操られている者の解除の方法を知ってると思わなかったわ」

「ど、どういう‥」

「これだけの騒ぎを起こせば、リリベル様は王子の婚約候補者から脱落させられると思ったのに、王子はこっちに来る気配はないし、それなら何か事件でも起こしておけばいいかなって思ったの」



婚約者候補?リリベル様が?

事件を起こせばいいって‥、じゃあこれはリリベル様が起こした訳じゃなくて、セリアさんが起こしたってことなの?混乱している私に、セリアさんはいいことを思いついたとばかりに笑うと、パチンと指を鳴らす。



「リリベル、あんたの暗殺者を使ってそこの娘を殺して」



ものすごい言葉を言うと、リリベル様がピクリと顔を上げ、

倒れているルルクさんを見つめた。


「‥私の、暗殺者。そこの女を殺しなさい」

「‥う」


ゆっくりと倒れていたルルクさんが体を起こす。


「る、ルルクさん‥」

「ユキ‥!逃げろ‥!!」


唇を噛み締めて、息を吸うのも苦しそうなルルクさんに目を見開く。

すると、セリアさんが私の横を通り過ぎ、ルルクさんの手を取る。



「あーあ、やっぱりリリベルの蜘蛛は、一回しか効かないなぁ。じゃあ、私が命令してあげるわ」

「ちょ!?セリアさん!!」



慌ててセリアさんを止めようとすると、セリアさんの指が黒く染まり、

ルルクさんの手の甲に、



『奴隷』



と、日本語で書いた。




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