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恋愛ゲームのシナリオはログアウトしました。  作者: 月嶋のん
恋愛ゲームのシナリオはログアウトしました。
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恋愛ゲームの主人公、追い返される?


リリベル様の別荘は、照明が全部落とされていて、真っ暗だ。

けれど、甘い香りが奥から匂うのでそちらにいるのは間違いないだろう。そっと大きな扉を開け、足を一歩踏み入れる。



薄暗い部屋に入ると、甘い香りがより一層濃くなる。

思わず口に手を当て壁に手をついた時、パチッと手が何かのスイッチを入れてしまったらしい。部屋の中がパッと明るくなり、部屋中が見渡せた。


「まずっ‥!!」


明るいシャンデリアの下、広い大広間だろうか。

重厚な赤い絨毯の上には、大きなソファーがあって、そこにはタリクさん、アレスさん、シヴォンさん、ウィリアさんが座っている。



「な、なんで皆が?!」



生気のない顔で、どこかダランと手足を投げ出すように座っている皆に目を丸くした。これって、もしかして「魅了」に掛かっているの?!


急いでタリクさんの体を揺すって、小声で声を掛ける。


「タリクさん?しっかりして、タリクさん!」


するとタリクさんは赤い瞳を瞬きすると、

ゆっくり顔を上げ、



「‥取り戻しに来たら、殺す」

「っへ?」



なんか物騒なことを言った?

そう思った瞬間、ボディーバッグに入っていたレオさんが『逃げろ!』と叫び、その声で私は後ろへ飛び退くと、タリクさんがローブのポケットからナイフを取り出した。



「え?え??」

『操られているのかもしれん!他の奴らは‥』



レオさんの言葉にハッとして、周囲を見回すとアレスさんとシヴォンさんは手を光らせたかと思うと、手の平から炎の塊を、ウィリアさんに至っては剣を構えた。



「わ、わ、わぁあああああ!!!!」



大急ぎで右に見えた大きな扉を開いて、真っ暗な室内を駆けていくと階段が見えたので駆け上がろうとすると、目の前に炎が広がって足を止めた。


「炎が!!」


後ろを振り返ると、シヴォンさんが手から炎をゴウゴウと音を立てて燃え上がらせ、その横でウィリアさんが剣を構えてこちらを睨んだ。だーーーーー!!!!主人公が攻略対象に殺されるとかあり得る!??絶体絶命のピンチにどうしようかと思っていると、レオさんがバッグから顔を出し、



『水よ!!落ちろ!!!』



そう叫ぶと、部屋の中なのにシヴォンさんとウィリアさんの前に大きな水の塊ができたかと思ったら、一気に二人を階段の下へと押し流した。


「え、す、すごい!」

『シヴォンの魔術授業、本当にきつくてサボっていたが役立ったな!』

「授業はちゃんと出て下さいよ〜〜!!」


私は階段の下でむくりと起き上がったシヴォンさんとウィリアさんを見て、また階段を駆け上がる。どこに、どこに逃げればいい!??階段を上がりきった先には長い廊下の両側に無数の扉がある。


貴族〜〜!部屋数多過ぎない?!ともかく部屋に飛び込み、後ろから私を追う足音に耳を澄ませると、足音が段々と遠ざかっていって‥ホッと息を吐く。



「うう、もう無理‥。シヴォンさんとウィリアさんなんてめちゃくちゃ強いのに‥」

『タリクとアレスなら大丈夫なんだがな』

「それ、正気に戻った時に言っちゃダメですからね?‥でも、レオさんが魔術を使えて本当に助かりました。助けて頂いて、本当にありがとうございます」



じとっとバッグから顔だけ出したレオさんにそう言うと、レオさんはちょっと固まったように私を見上げた。



「レオさん?」

『‥こんな時でも、ユキさんはちゃんと礼を言えるのだな』

「え?そりゃ言いますよ。だって助けてもらったんだし‥」

『‥あの男も、そんなところがきっと嬉しかったんだろうな』



あの男って、ルルクさんのことかな?

って、そうだ!ルルクさんを探さないと!私は立ち上がって、バッグのレオさんを見つめる。


「とにかく、まずはルルクさんとリリベル様を探しに行きましょう」

『‥そうだな。魔術もそろそろ限界だから慎重にな』

「わかりました」


扉に耳をくっ付けて、外の気配に耳を澄ます。

‥うん、人の気配はしないし、今なら大丈夫かな?そっとドアノブを回して、薄暗い廊下から顔を出す。



「部屋を見て回りますか‥」

『地図によると、そこの右奥の部屋にリリベルがいるようだぞ』

「そういうの早く言ってくれません???!」



小声で思わずバッグの中で地図を広げて指‥ならぬ手を指したレオさんに言われて、私は右奥の部屋に足音を立てないように歩き、そっとドアを開ける。



薄暗い部屋には、窓際で誰かが座っていて‥

目を凝らして、座っている人物を見るとそこにはルルクさんが座っていた。



「ルルクさん!?」



小声でルルクさんを呼んで、すぐ側へ走って行こうとすると、ルルクさんが私を見てハッとした顔をする。



「こっちへ来るな!帰れ!」

「え?」



か、帰れ??

まさか帰れって言われるなんて思わなかった私は、思わず口をポカンと開けて椅子に座っているルルクさんをまじまじと見つめてしまった。





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