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恋愛ゲームのシナリオはログアウトしました。  作者: 月嶋のん
恋愛ゲームのシナリオはログアウトしました。
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恋愛ゲームの主人公、踏ん張りどき。


朝、目を覚ますと私はいつの間にか自分のベッドで寝ていて‥、

目の前には王子の人形、レオさんが私を覗き込んでいた。



ん?



「わぁああああ??!!」

『ああ、おはよう。いつもより大分寝ていたらしいな。あの男が朝食を作りつつ心配して‥』


レオさんがそう言ってる途中で、ダダダ‥と駆け足が聞こえたと思ったら、私の部屋のドアが勢いよく開かれ、目を釣り上げたルルクさんが王子人形を睨む。


「おい!なんでそっちに行ってる?!」

『お前が私を背負いつつ、大丈夫かと呟いていたから彼女の様子を見に行ったんだ』

「お前が行く必要はない!」

『はっはっは。そんな遠慮をするな。この体だが確認はできる』


多分、違うそうじゃない感がすごい。

私は急いで髪を整えて、ルルクさんを見上げ、


「だ、大丈夫ですよ?ちょっと驚いただけで‥」


そう言いかけると、ルルクさんがズカズカとレオさんの頭をむんずと掴むと、ジロッと私を睨む。



「‥人形が部屋に不法侵入しないように部屋中に紋様を描いておけ」

「え、ええ〜〜‥っと、はい?」

『はっはっは、なかなか良いアイデアだな!』

「お前が言うな!」



うん、ルルクさんが王子に翻弄されている。

ちょっと面白い光景だけど、面白がっている場合じゃないな。

私はひとまず頷くと、ルルクさんはレオさんを掴んだまま部屋を出ていった。‥暗殺者、朝からなんていうか殺意が高いな。私は急いで身支度してキッチンへ顔を出すと、いい香りのするスープとパンを用意しているルルクさんが目に入る。


「すみません、寝過ごしちゃったみたいで。手伝います」

「‥昨日の今日だからな。体は大丈夫か?」

「あ、はい。しっかり休んだので大丈夫です!黒の魔石が届いたら、すぐにでも書きますよ!」


ニコッと笑うと、ルルクさんはホッとした顔になる。


「そういえば王子はどこに?」

『ああ、私ならこの男のポケットに詰め込まれている』

「え?」


声のした方を見ると、ルルクさんの腰に黒いウエストバッグが付いていて大きなポケットからレオさんの顔だけそこから出ている。‥大きな男性が人形を腰に。うん、シュールだな。


「ある意味鉄壁の守りですね」

『私としては、女性の方が‥』

「おら、スープだ。持っていけ」


ルルクさんが問答無用でレオさんの言葉を断ち切って、私にほかほかのスープを手渡してくれた。うん、王子との接触を許さない感じなんだね。私はどこか遠くを見つめつつスープを受け取ってテーブルに置くと、ルルクさんがパンを持ってきてくれて、二人でテーブルにつくとレオさんがピョンとテーブルに乗っかった。いつの間に‥。



『美味しそうだな。料理まで出来るとはすごいな』

「お褒めに預かりどーも」

『ああ、そうだ。ユキさん昨日は紋様をありがとう。久々にゆっくり眠れたよ』

「そうですか?それは良かったです」

『ユキさんは、優秀な紋様師なんだな。いっそ私の専門の紋様師になってくれないか?』

「っへ?」



専門の紋様師??

目を丸くした途端、ルルクさんがレオさんの頭をわしっと掴む。


「お前は!!」

『なんだ?お前はリリベルと付き合っているのだから関係ないだろ?』


スバッと切り込んだセリフに、ルルクさんが思わず言葉に詰まる。

そ、そうだった。未だに付き合っている設定でいるのに、それを否定するのもまずいよね‥。チラッとルルクさんを見ると、レオさんを掴んだまま俯いてしまって、表情が見えない。


‥ああ〜〜!!もうリリベル様ごめんなさい!

心の中で謝ってから、レオさん人形を見つめる。



「え、えっと、すみません、レオさん。ルルクさんとちゃんと約束をしてて…」



そう言いかけた時、玄関のドアがドンドンと叩かれて、ルルクさんとはっとして顔を見合わせた。何かあった?!ドアの向こうから、「タリクです!」と言う声が聞こえて、ルルクさんがドアを開けると青い顔のタリクさんが立っていた。



「タリクさん、何かあったんですか?」

「‥昨日まで医者にかかっていたリリベル様達が失踪されました」

「え!?」



失踪?

なんで??

私とルルクさんが目を丸くすると、レオさんがテーブルの上でタリクさんを見上げる。



『状況は?』

「念の為、1日だけ入院していたそうですが、朝起きたらリリベル様といつも一緒にいる子達も忽然と姿を消していたそうです。誰も姿を見ておらず、争った形跡もなかったそうです」



ゾクッと背筋に寒気が走る。

どういう事?悪役令嬢のリリベル様が失踪なんてゲームのストーリーには間違ってもなかったはず。昨日、レオさんが言っていたけれど、本当に鍵が開いて何かが始まったのだろうか。



言い知れない不安にギュッと拳を握った。

‥いや、怖気付いている場合じゃない。いざとなったら私がルルクさんを守るんだ。恋愛ゲームの主人公、ここがきっと踏ん張りどきだ!





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