恋愛ゲームの主人公、感情も意思も弱々。
ウィリアさんと高いお肉を食べて、お腹一杯になるとちょっと気持ちが落ち着く。
私の気持ちってやつはなんて取り扱いやすいんだ‥。いや、それでもルルクさんの事になるとすぐにかき乱されてしまうから、ある意味難しいのかな?
そんなことを考えている私を、食後のお茶を飲んでいるウィリアさんが面白そうに笑って、
「なんか考えてること、全部わかるな」
「え?そんなに??」
「大体ね。でも、いつも二人でいるし、たまには良い機会になったんじゃない?」
「‥そうですね。ちょっと切り替えはできたかも?」
「それなら良かった。さ、じゃあ家まで送るよ。早く返さないとあいつに今度こそ殺されそうだし」
「いや〜、流石にそれはないですよ‥多分」
私の言葉にウィリアさんがぶっと吹き出した。
確信を持って言ってよ〜なんて言われたけれど、そこはちょっとルルクさんの行動全てを把握できないからなんとも言えないというか?
「‥うん、でもウィリアさんのお陰で私はスッキリしました。ありがとうございます」
「そう?なら良かった」
色々詮索しないところがウィリアさんだな。
二人で腹ごなしも兼ねてのんびり歩いて帰るけれど、家に帰ったらなんて言おうかなぁって思っていると、林を抜けたところで我が家が見えた。そして、その玄関先で座っているルルクさんも。
「え、ルルクさん?鍵を持ってなかったのかな‥」
「いや〜、それはないでしょ」
とはいえ、待たせてしまったのもあって駆け出そうとして、慌ててウィリアさんを振り返る。
「今日はありがとうございました!今度は私が何かあれば高いお肉を奢りますよ」
「そりゃ楽しみだ。でもなんでもない時にお茶でもしよう」
「それも良いですね。じゃあ、また!」
笑って手を振ると、眉を下げて笑うウィリアさんが手を振ると、踵を返して街まで戻っていった。‥流石攻略対象、去り際もサマになってるわ。感心してから、ルルクさんがいる玄関へ足を向ける。
卵サンドイッチを作ってくれてたのに、結局ウィリアさんとお昼を食べて、ルルクさん怒っているかな‥。なんて声をかければいいかなって思っていると、ルルクさんが私の方へ歩いてきて、思わずドキドキしてしまう。
そっと視線を上げると、どこかホッとしたような、
でも寂しそうなコバルトブルーの瞳と目が合う。
「えっと、ただいま戻りまし‥」
言葉を言い切る前に、グラッと地面が揺れた。
あれ?立ちくらみ?違う、これ、地震だ!
結構大きな揺れに、驚いて目を丸くすると、ルルクさんが駆け寄ると私の手をギュッと握った。
たったそれだけなのに、さっきまでずっと胸の中が苦しかったのに、すっと嘘のように苦しさが無くなる。そんな自分に驚いていると、いつの間にか揺れが収まっていて‥、私はそっと顔を上げようとすると、ルルクさんが握っていた私の手を自分の方へ引き寄せた。
「わ‥」
突然引っ張られて、ルルクさんの胸の中に飛び込んでしまった私。
あわわ、ちょっと??何をするんだ?
慌てて離れようとすると、頭上から小さく「おかえり」と聞こえて‥、胸がぎゅうっとそれだけでまた痛くなる。もう!気持ちを切り替えようと思った矢先にこれだよ!私の意思、弱すぎないか?
と、ルルクさんは私の手を握ったまま、家の方へ歩き出すので私も釣られて足を進める。
「‥えっと、お昼用意してくれたのにすみません」
「夕飯にでも食べるか」
「そうですね。あと私、料理修行します」
「は?」
私の料理修行という言葉に、ルルクさんが足を止めてまじまじと私を見下ろす。
あ、やっと私の顔をちゃんと見たな。
なんだかさっきまで微妙な空気が和らいだ感じがして、ホッと息を吐く。
「‥少しは料理できないと、まずいですし」
「別に俺が作れば良いだろ」
「美味しい物を作れたら、ルルクさんだって嬉しくないですか?」
「‥そりゃ、まぁ」
「じゃあ、やっぱり頑張ります!!目指せ、普通のご飯です!」
握りこぶしを作って宣言すると、ルルクさんが目を丸くしたかと思うと、ふっと小さく笑う。
「普通ね‥」
「あ、なんでそんな笑うんですか。大事なことですよ?」
「そうだな。焦がさないご飯は大事だな」
「き〜〜!自分は上手だからって!いいですよ、私が全部作って食べますし」
「それじゃ意味ないだろ」
「え、食べたいですか?」
いつも焦げてしまう私の料理を知っているルルクさん。
思わずまじまじと見上げて聞くと、ルルクさんが私のおでこを長い指でぐっと押して、
「‥お前のならな」
笑ってそういうので、感情の蓋がピョンと飛び上がってしまった。
‥嗚呼〜〜!!感情も意思も本当に私は弱々だよ!!!!




