表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
恋愛ゲームのシナリオはログアウトしました。  作者: 月嶋のん
恋愛ゲームのシナリオはログアウトしました。
181/249

恋愛ゲームの主人公、攻略対象退散!


王子様に手を握られて、悪役令嬢のリリベル様に睨まれるかと思ったら、まさかのセリアさんにめっちゃ睨まれるて、怒られた。私のせいじゃないのに〜〜〜!!!


ちらりと王子に視線だけ向けると、にっこり笑って、


「これはリリベル嬢に、皆さん。お元気そうですね」

「で、殿下‥」


セリアさんが嬉しそうに微笑むけれど、華麗にスルーされたの気が付いてないのかい?いくら貴族をやめて3年経ったとはいえ、私でもわかる‥ちょっと嫌味の入った空気。貴族としてその辺の空気を読むのは苦手なのかな。どこかピリッとした空気に私の胃が痛くなる。



リリベル様は王子にふんわりと微笑んで、


「レオルド様もお久しぶりでございます。お元気そうで何よりです」

「ああ、まさか君がこちらにいるとはね‥。嵐が思ったよりも大きくて大変だったらしいな。橋も直ったことだし、もう王都へは戻る予定で?」

「‥いいえ、私はここに残ります」

「ほう?何かあったのかい?」


レオルド様が意外そうな顔でリリベル様に尋ねると、リリベル様はルルクさんを見上げ、にっこり微笑む。



「‥ルルク様とお付き合いする事になったんです」



一瞬の間の後、それまで静かだったギルドがザワッとする。

え、そんなに?周囲を見回すと、セリアさん達は顎が外れちゃうんじゃないかってくらい口を開けているそ、タリクさんやアレスさん、シヴォンさんまで目を丸くして、ルルクさんを見たかと思うと、私を見た。え、なんで?



王子はそんな周囲を物ともせず、にっこり笑い、


「なるほど!好きな相手を見つけたのか。いいではないか、なかなかロマンチックだな!」

「恐悦至極に存じます」


リリベル様が照れ臭そうに話すと、後ろにいたセリアさん達が悲鳴を上げ、まだ王子と話している最中だというのに、「正気ですか?!」「どこの馬の骨とも知れぬ人間ですよ?!」と口々に言うので、私は思わずムッとしてしまう。十分素敵な人なんですけど?とはいえ、そんな顔を見せたらリリベル様とルルクさんが付き合ってないのではと疑われしまう。


努めて平静を保つようにと顔をなんとか動かそうとすると、リリベル様がセリアさん達を見咎め、



「私の大事な方を悪く仰らないで下さい。‥あと、私はルルク様と離れることは嫌なので、皆さん先にお帰りください。その際、両親へ手紙を渡して頂けると助かります」



この為に準備をしていたんだろう。

持っていたポーチから、一通の手紙を取り出すとセリアさんに手渡した。

セリアさんは、それはもう目を見開いて「え、でも‥」と完全に混乱した顔だ。それを王子は面白そうに笑い、



「確かに、留守をしていてはご家族も心配するだろうしな。それでは皆はいつ帰るのかな?見送らせてもらうよ」



王子の言葉にセリアさん達が、きゃあ!と嬉しそうに声を上げた。

お、おい。今さっきまでリリベル様に「やめておけよ!」なんて言ってたのに、見送るって言われた途端それかい!?



‥やっぱり王子様ってのは別格らしい。セリアさんってば、ウィリアさんにあんなに目がハートだったのに、全然態度が違う。でも、帰るという情報に気をつけろと言われていただけに、ホッとしてしまう。



すると王子はこちらを振り向いて、私の手を取ると、



「それでは、私はこれで。また是非紋様をお願いしますね」



そう言って、私の手の甲にそっとキスした。



「え」



目を丸くして、固まってしまった私の向かいでお誘いを受けた女子たちの悲鳴が聞こえるし、タリクさんは「おやおや」と言いながら笑顔で引きつっているし、アレスさんとシヴォンさんは目を見開いて固まっている。



王子は視線だけ上げて私を見ると、それはもう面白そうに微笑んで、


「それでは、また」


って言って、すぐに他の騎士さん達を連れて颯爽とギルドから出ていったけれど‥、ちょっと!??なにしてくれてるの??!タリクさんとアレスさんとシヴォンさんは、出ていった扉を睨んでいるし、女の子達はこっちを睨んでいるし‥。あ、そうだ、ルルクさんは?



そっと顔を上げて、後ろのルルクさんを見ると、多分、史上最高に怖い顔をして私を睨んでいて‥。



ものすごい眼光で私を見たかと思うと、私の手首を掴んで、ズンズンとギルドにある洗面所に連れてき、蛇口を捻って勢いよく出る水で私の手の甲を無言で洗い出した。


いや、王子のキスをバイ菌扱いしてない???


ちょっとポカーンとしてルルクさんを見上げると、本人は至って真面目な顔をして私の手の甲にしっかり泡だてた石鹸を塗りつけ、わっしわっし洗っている‥。



だめだ、これ。

ちょっと限界だ。私はぶっと吹き出して、クスクスと笑い出してしまうと、ルルクさんが私をジロッと睨む。



「‥何が可笑しい」

「いや、だって、ふふ、王子のキスをバイ菌扱いしてるって思って‥」



自分は私の手の甲に二度もキスしたのに。

そう言おうとして、その時の記憶を思い出したら急に照れ臭くなってしまって‥、私の手を念入りに洗うルルクさんの大きな手をジッと見つめるだけしかできなくなってしまった。





手洗いが必須な季節になってきましたね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ