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恋愛ゲームのシナリオはログアウトしました。  作者: 月嶋のん
恋愛ゲームのシナリオはログアウトしました。
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恋愛ゲームの主人公、表情筋を応援する。


ニコニコ笑う王子様を前に私とルルクさんはどんな顔をしたらいいかわからず、しかし馬車は無情にも走っていく。



「そういえば、ちゃんと名前を名乗っていなかったね。レオルド・ルシェ・ドリミストリだ。この国の王子をやっているが、今回はお忍びで来ているので、気軽にレオと呼んで」

「え???」

「君は紋様師のユキさん、でしょ?いやぁ、タリクやアレス、シヴォンやウィリアは学園では友達でね、4人がこっちへ住むというから、どうしてかと尋ねたら、皆君の名前を言うからどんな子かと思ったんだ」



友達ーーーーー!??

そうだったの?ゲームでは確かにタリクさんと王子様は家庭教師と生徒の仲だったし、アレスさんとは宰相を通じて知り合いみたいな描写がゲームではあったけど、友達だったとは初耳だよ!


ああ、でもそうか。

シヴォンさんだって王都の魔術師団に入ろうとしてたくらいだ。

同じ学年だったらきっと知ってるだろうし、ウィリアさんだって王都の騎士団に若くして入団したんだ。そりゃ覚えもあるし、友達になってる可能性もあったか。



っていうか、皆さん私をきっかけに移住って‥、それも初耳なんですが?



私は貼り付けた笑顔で、「そ、そうだったんですね」と口元を必死に上げたけれど、誰かよく頑張っているで賞をくれ。しかしそんな私の必死な笑顔を面白そうに見てから、レオルド王子はチラッと横に座っているルルクさんに視線を移す。



「‥まさか、君がこの国にいるとはね」

「‥なんの事か」

「ふふ、まぁ問題を起こさない分にはいいよ」



ん??何??

どことなく不穏な空気を感じて、私はルルクさんと王子様を交互にチラチラと見るけれど、早く!早くギルドに着いてくれ!!そう祈るように願っていると、


「まもなく街のギルドに着きます」


という救いの声に私は顔を上げた。

神はいた。


「わかった。ではユキさん後でギルドで紋様を頼む」

「っへ!??」

「いやぁ、紋様を描いてもらうといいと皆に言われてね!それを楽しみにしていたんだ」


おおぉおいいい!!

皆って誰?っていうか、なんで描いてもらえって王族に勧めたんだよう!!そんな恐ろしい事できないよぉおおお!!必死に口角を応援して、頑張って上げた私の表情筋よお前は偉い。



「ご期待に添えると良いのですが‥」

「ふふ、きっと大丈夫ですよ」



私の情緒が大丈夫じゃないです〜〜〜。

けれど、無情にも馬車が止まって、扉が開くとそこはギルドの目の前であった。

お、おお、まさかの目の前。でも、そこにタリクさんとか、アレスさんとか、シヴォンさんが待ち構えているのが見えたのは何故でしょうかね。


と、レオルド王子は私に手を差し出す。


「よろしければ、エスコートさせて頂いても?」

「‥では、お言葉に甘えて」


絶対にお言葉に甘えたくない。

けれど王子に結構ですって言えない一般人。

そっと手をレオルド王子の上に置くと、ふわりと微笑み私の手を引いて、一緒に馬車を降りていくと、タリクさんがジトッと王子様を睨む。



「‥レオ様?それはどうかと思いますけど?」

「何がだ?偶々歩いている所に出会って、一緒にどうかと誘っただけだぞ?」

「‥まったく、いつか怒られますからね?」

「なんのことやら」



王子はタリクさんの言葉をさらっと躱して、さっさと騎士さんが開けてくれたギルドの中へ一緒に入っていくと、レトさんが見たこともない緊張した顔で礼をする。


「ああ、今日は気にせず楽にしてくれ。いつもの調子でいい」

「は?い、い、いや、そのような訳には‥」

「‥レオ様、それは無理ってものですよ?」


唯一、この中で発言できるタリクさんが後ろから言うと、王子は「そうなのか?」と不思議そうな顔をしているけれど‥、なんていうか王子は3年ぶり‥いや、初めて会うけど結構くだけた感じになってるな。



ゲームでは結構優等生な感じで、時々学園の東屋でこっそり隠れて話をしたり、お茶をして、少しずつ気持ちを通わせてたけど、なんていうか序盤から後半のような気安さがある。



3年の歳月がそうさせたのか。

王子が大人になったのか‥。

そんなことを考えていると、レオルド王子が私を見て、



「さ!では紋様をお願いしてもいいかな?」

「は、はい!」

「あと後ろの男もどうにかしてもらえるかな?」

「っへ?」



パッと後ろを振り返ると、ルルクさんが私と王子をじっと見ているけれど、なにもしてない、よね?私は王子を見ると、王子はニコッと笑って、


「もう大丈夫らしい」

「そ、そうですか?」


私はもう一度ルルクさんを見上げると、ジトッと見つめられ、


「仕事の準備を手伝う」


と言うので一緒に紋様液を緊張感に包まれた静かなギルドの中でテーブルに置くと、王子がいるのも気にせずどかっといつものように私の後ろの椅子に座った。


「えっと、じゃあ何がいいでしょうか?」


そう尋ねると、王子はにっこり笑ってルルクさんを指差し、



「いきなり殺されないような紋様はあるか?」



と、聞くので私はひゅっと息を飲んだ‥。





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