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恋愛ゲームのシナリオはログアウトしました。  作者: 月嶋のん
恋愛ゲームのシナリオはログアウトしました。
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恋愛ゲームの主人公の心臓は保たない。


翌朝。

ルルクさんは昨日の話通り、見回りに行ってから帰ってきた。

ちなみに手には朝「ついでに採った」という首のない鳥が二羽。‥なんで、なんで首がないんだ。暗殺者ってのは本当にうっかり人の心臓をひんやりさせるな。


思わず首を摩りつつ、ルルクさんが作ってくれた朝食の準備を手伝う。

本日はフレンチトーストらしい。

制作途中に関わらず、手際の良さに惚れ惚れとしてしまう‥。


「そういえば、魔物はいましたか?」

「いや、白の魔石を発掘して運んでからは減ってはいたが、今はほぼ見ない」

「そっか〜〜、良かった!これで安心して歩けますね」

「‥お前はただでさえ危なっかしいがな」

「失礼な。ちょっとだけですよ」


頬を膨らませて、私は遺憾の意を表明したがルルクさんにとってはただ面白いだけらしい。面白そうに頬を突かれただけであった‥。くそ、何かやり返せたらいいのに。



「‥午後には予定通り大工が来るらしい」

「それは良かったです。今度はどんな橋になるのかなぁ‥」

「かなり大掛かりな工事になると言ってたが‥」

「へ〜〜、見てみたいなぁ」



目をキラキラさせてルルクさんを見つめると、ルルクさんはじろっと睨む。


「怪我をしたのを忘れたか?」

「もうほぼ治っちゃいましたよ。リハビリがてら歩いて見に行くのどうでしょう?」

「‥歩ける距離か。大分離れてるんだぞ」


ビシッと言い放たれて、私は思わず首をすくめると、トントンと玄関のドアを控えめに叩く音がする。



「‥誰だろ?」

「俺が出る」



さっとルルクさんが立ち上がって、ドアを開けると‥、

そこには薄紫色の髪をした悪役令嬢のリリベル様が一人、ポツンと立っていた。



「え?‥リリベル、様?!」

「突然、すみません。ユキさんは事件に巻き込まれたばかりなのに‥」

「と、とりあえず、どうぞ中へ」

「‥はい、お邪魔します」



ちょっと青い顔で部屋へ入ってきたけれど、外を見れば馬とお付きの騎士さんが二人いるだけだ。だ、大丈夫なの、貴族の子女がこんな所に来て‥。そう思いつつ、我が家のテーブルを引いて座ってもらうと、私とルルクさんを交互に見て、小さく頭を下げた。


「こんな急に本当にすみません‥。あの折り入ってお二人にお願いがありまして」

「「お願い?」」


悪役令嬢がこんな申し訳なさそうにお願いって、一体何?

私とルルクさんが顔を見合わせると、リリベル様は俯いて、



「‥ルルク様と、お付き合いさせて頂きたいんです」



え?

あまりに衝撃の発言に、私とルルクさんの顔が固まる。

お、お付き合い???!私が目を丸くすると、リリベル様が勢いよく顔を上げると、



「あの!フリなんです!!お付き合いをしているフリをして欲しいんです!」

「ああ、フリ‥って、なんでですか??!」



驚いてリリベル様を見つめると、しょぼんと眉を下げ、


「‥両親には結婚相手をのんびり決めていいと言われてて、まだ婚約者を決めていなかったんです。けれど今回かなり強引に婚約を迫る方が現れて‥」


悲しそうに俯くリリベル様に、思わず胸がズキリと痛む。

‥それは、3年前の私みたいで‥、私まで眉を下げた。



「きっと、先方も私がルルク様とお付き合いをすれば諦めてくれると思うのですが、ただ、ユキさんにもルルク様にも結果的には申し訳ないことをしてしまうと承知しているのですが‥。でも、3日だけ!3日だけでいいので、お付き合いをしているフリをして欲しいんです!」



ガバッと顔を上げたリリベル様に、ルルクさんがはぁっとため息を吐く。


「なぜ3日なんだ」

「‥セリア達が王都へ間もなく帰ります。きっとあの子達がすぐにでも色々言い回るはずです。そうなれば両親と先方はすぐにでも話し合いをして、私を迎えに来るでしょう‥。それでも結婚をさせられるかもしれない。でも、何もしないよりはいいと思って‥」


涙ぐむリリベル様に、悪役令嬢なのにそこまで思い詰めた顔をするのを見て胸が痛む。チラッと私の横に座るルルクさんを見上げると、私を見てまたはぁっとため息を吐いた。



「3日だ。3日だけフリをする」

「!ありがとうございます!!」

「‥ただ、こいつの仕事中は俺は警護も兼ねているから、フリをするとしても午後からだ」

「それで構いません!」



リリベル様がパッと顔を明るくさせて、ルルクさんに優しく微笑む。

たったそれだけなのに、ズキズキと胸が痛んで、思わず視線を逸らしてしまった‥。リリベル様が困っているというのに、ちょっと嫌だなって思ってしまうなんて!!うう、私こそ嫌な奴だな‥。ちくっと痛む胸を誤魔化すように、そっと窓の外を見つめたのだった。




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